菅田将暉「初めて見た芸能人」神木隆之介とデビュー前に遭遇していた 痛感した“差”「みんなが知っているヒーローに会って」
2025.09.24 07:00
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フジテレビ系ドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」にて、主演を務める俳優の菅田将暉(すだ・まさき/32)にインタビュー。第3回では、菅田が人生で初めて見たという芸能人とのエピソードをはじめ、豪華なドラマセットや小道具の裏話をたっぷり語ってもらった。【インタビュー全3回の第3回】
菅田将暉主演「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」
本作は、1984年の渋谷を舞台にした青春群像劇。経済の安定成長期からバブル経済期への移行期にあたる希望に満ちた時代の中、まだ何者でもない若者たちの苦悩や挫折を描く。三谷氏の半自伝的要素を含んだ完全オリジナルストーリーであり、菅田は、演出家としての成功を夢見る熱い青年・久部三成を演じる。菅田が連続ドラマの主演を務めるのは3年半前に放送されていた「ミステリと言う勿れ」(同局系/2022年)以来となる。三谷氏が民放ゴールデン・プライム帯の連続ドラマ脚本を手がけるのは25年ぶりであり、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(2022年)以降、2度目となる菅田とのタッグに注目が集まる。なお、共演者には俳優の神木隆之介や女優の浜辺美波など錚々たる顔ぶれが登場予定だ。
菅田将暉「フジテレビ、本気です」
― 今作品のために巨大なオープンセットが建設されたそうですが、実際に見られていかがでしたか?菅田:すごいセットでした。フジテレビ、本気です(笑)。「いいもの作るぞ」という気持ちで爆発力のあるセットが出来上がっています。もちろん、現場の人間もそういう気持ちなんですが、どうやら今作のロケセットを建てるために、美術部や大道具さんがいっぱい招集されたことで、ほかのドラマのインが遅れているみたいで…(笑)。それくらいの規模と力のかけようでこのドラマを作らせていただいています。
本当に贅沢なオープンセットで、今まで出演したドラマの中で遥かに1番豪華ですし、楽しみにしてもらいたいです。未来があるなと思いました。舞台が昭和なので、現代の渋谷とは景色も変わっているし、人を止めて撮影するのも大変なので今の渋谷では撮ることができないので本当にありがたかったです。テンションが上がりました。
― どういった部分に感動しましたか?
菅田:まず、ネオンが多くて明るくて、夜になるとすごく綺麗でした。坂になっているところにネオンがバーってついていて路面を濡らすと、すごく光が回ってカラフルで綺麗なんです。艶やかだし、一目で不純な匂いがするというか。ストリップ劇場があったり、坂の奥の方にラブホテルが2軒並んでいたり「夜の街」という感じなのでそういう香りがする中だとお芝居も変わってきます。
― そういったセットに助けられてお芝居される部分も?
菅田:あります。なので、そのセットの中で大見得切って、大きめのお芝居をした後が神社のシーンだったりすると「うるさいかな」と心配になるくらい(笑)。監督に「ちょっとうるさいですかね?」と確認して、「いやいや、いつもこれくらいだから大丈夫」と言ってもらったり(笑)。そのくらい、セットの中だとちょっと大柄な気持ちになります。
菅田将暉「記事に書いておいてください(笑)」
― もうセットは壊されたんですよね。菅田:そうですね、看板のセットは少し残るみたいですが、ほかはもうほとんど跡形もないらしいです。20軒くらい並んでいる坂を作っていただいて。60mくらいあって、一連でこの坂を使えるので、これは大きいですよね。プラスでCGも使うのでだいぶお金はかかっていると思います。「お金がかかっている」と記事に書いておいてください(笑)。
― セットの中で、菅田さんが特に注目しているものはありますか?
菅田:三谷さんが、当時あったものを細かく指定されているシーンが結構あるんですよ。お菓子もなるべく当時のパッケージで用意したり「カラムーチョこの時代からあったんだ」という発見もありながら(笑)。あと、1話で芸人さんが出てくるんですが、そこで洗顔する機械のようなものが出てくるんです。「当時の最先端なんだな、これが」と思ったり。そういうのは、当時のことをちゃんと知っている人からすれば、「こういうのあった!」と思うのではないかなと思います。
― そういう小道具が見どころにもなってきそうですね。
菅田:そうですね、今作はファンタジーでもあるので。実体験も含め描かれているけど、架空の渋谷だし、ドラマとしてのファンタジーを作っていく中で、そういうディテールのリアルさってすごく大事なんです。でないと、おとぎ話になっていっちゃうというか。なので、そういった小道具の細かさが効いていると思います。
菅田将暉が思う80年代のファッション
― 菅田さんは「1984年の渋谷」に対してどんなイメージをお持ちでしたか?菅田:80年代って、ほかの年代と比べて象徴的なものが抜けているというか。90年代は、ストリートやスポーツの文化があったりとわかりやすいんです。60年代はビートルズ、70年代はヒッピーなファッション、と音楽やファッションにおいて特徴がある。でも、80年代はあまりわかっていなくて。いろいろ調べてみて、歴史で「たけのこ族」が出てくると「そうか、これが80年代か」と思うんですが…男性の髪型も結構謎なんです。
「◯年代 髪型」で検索してみても、80年代だけファジーなんです。女性だとカチューシャをしていたり、聖子ちゃん(松田聖子)カットだったり、キョンキョン(小泉今日子)がいたり、その時代のアイコンがいくつかあるんです。でも、男性の場合は、吉川晃司さんやチェッカーズさんのように前髪がちょっと前髪がななめだったり、刈り上げだったり。ケヴィン・ベーコンも横や後ろの髪の毛はスパッとしているけど、前髪の方は洗いざらしで、タワシみたいになっていたり。「これ正解なんだ」と驚く髪型が多かったです。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマイケル・J・フォックスも、セットはあまりしていないふうというか、ちょっと乱れている感じ。その辺が面白いなと思いました。
― それを真似してみようとはならなかったですか?
菅田:毛質的に日本人はあまり真似できないんじゃないかな。ある程度固めで、猫っ毛でウェーブがついている海外の方だと成立するけど、日本人だとペタッとして終わると思います。
現場に当時の雑誌をいっぱい置いてくださっているんですが「anan」(マガジンハウス)を読むと小林薫さんの当時の写真が載っていたりしてめちゃくちゃかっこいいんです。あと、真っ白なスーツを着た若いときの麻生太郎さんが載っていたり。やっぱりみんなとっぽい(生意気であったり、不良じみているという意味)んですよね。
おすぎとピーコさんの連載のページもあったんですが、めちゃくちゃ悪口言いまくっていて。だから「これが許される時代」というか、劇評においても「悪口言ってなんぼだろう」「そういう仕事なんだから」という感じなんです。批評に愛やエネルギーがあって、言い合いの感じが大事だなと思いました。みんな口が悪くて、怖い顔していて。雑誌の特集でも「悪い男に惚れる」ような感じで。今はなかなか見ないですよね。
菅田将暉「久部のスタイリング」に注目
― 衣装についても詳しく教えてください。菅田:衣装はスタイリストさんにお願いしているんですが、作りとしては、当時のものを再現するわけではなく、今のものも混ぜて、このドラマの中でのスタイリングというか「久部のスタイリング」にしています。でも、当時の年代に近いもので結構いいものも身につけさせてもらっているんです。エルメスやカルティエ、サンローラン、ラルフローレンの大きいコートを着ることもあるんですが、久部が着ると全然高そうに見えない(笑)。
ただ、当時のものって丈夫なんですよね。作りも丁寧だし、その感じは、すごく気に入っています。コートを衣装合わせで着たときも、丈はすごく長いんですがバサバサって動かしている感じは、シェイクスピアのマントさばきにも似ているし、あまり他の役ではできない動きができるなと思いました。
― 久部はおしゃれな人物なんですか?
菅田:おしゃれな人物ではないと思います。家もないし(笑)。着ているものもほとんど変わらないですし。でも、ジャケットにタートルを入れている感じは、ちょっと古い演出家というか、当時の感じが出ていていいムードですよね。しかも怪我しているので、顔に絆創膏がいっぱい付いていて鼻血も出ている感じがなんだかいいなと思います。
菅田将暉、初めて見た芸能人明かす「そこで痛感」
― この作品では「何かになりたいけど何者にもなれない」という、もがいている若者像が沢山描かれますが、菅田さん自身も周りと比較したり、誰かに憧れたり、そういう時期はありましたか?菅田:あります。この世界に入って、同世代や小さい頃から続けている人を見てもそうですし…それこそ神木隆之介って、僕が初めて見た芸能人なんです。僕が中学2年生のときに「アミューズ」のオーディションを受けることになって、東京国際フォーラムに行って。それで、僕ら30人が壇上に座っていたんです。
そのとき、オーディション本番中にトイレ行きたくなって。そしたらトイレで神木隆之介とすれ違って「神木隆之介だ」って。そこで痛感しました。その頃は、まだ本当に俳優になることも芸能の世界に入ることも全然想像もできていない普通の中学生ですけど、もう第一線でやっていて、みんなが知っているヒーローに会って。実力もあって、華もあってという同世代を初めて見たときは、「うわー」「無理だ」と思いました。
― どこで「無理だ」と打ちのめされた気持ちは変わったんですか?
菅田:何かがあったわけではないです。そのときはまだ何もやっていなかったので。自分はまだ経験がなくて、向こうは経験がある。その差だったので「とりあえずやってみるか」という感じでした。あと、幸いにも「仮面ライダー」に出演したり、恵まれた環境に入れたことによって、一生懸命できたのがよかったんだと思います。振り返る間もなく、人と比べる余裕もなく活動できたのがよかったんだろうなとは今は思います。
その頃はそんなにSNSが発展していなかったし、目の前で会う以外にその人の情報がなかったわけです。「次会うときまでに」という気持ちでいられるからメラメラできますよね。今は「今日こんなことしているんだ」とたくさん情報が入ってくるから、比べちゃうし大変だろうなと思います。
菅田将暉「壁にもぶつかれない」現代の危うさ
― 現代は、SNSで匿名で書き込む時代に変わっていますが、今作の舞台のように実名でちゃんと批評できるというのはすごく素敵なことだと思います。そういった点において、どんなメッセージ性を感じましたか?菅田:三谷さんも最初におっしゃっていました。本読みのときに「なんでこれを今やるべきか」というところで、みんなエネルギーがあって生き様が気持ちいいというか。久部は嫌われていく役ですが、今ってそもそも嫌われることや失敗もできなかったりするので。壁にぶち当たる前に「あと3歩、歩いたらここに壁があるよ」と教えられる時代だから、壁にもぶつかれない。だから、ある程度自分で盲目的に進んでいく彼らの「生きる力」はすごく大事なことじゃないかなと思います。
― これだけ夢に向かって正直に突っ走れるのは素敵ですよね。
菅田:そうですね。久部がSNSをしていたら大変ですよ。本当に叩かれまくって炎上しまくって何にもせず終わると思います。「こいつキモ」って言われて(笑)。なので、久部みたいなやつはたしかに成功はしないかもしれないけど、そういういろいろなエネルギーのある人がいることによって表現って生まれるし、生活も豊かになるんだな、とすごく感じます。
菅田将暉「当たり前の幸せの2個3個先を見てしまっていた」
― この作品を通して若者にメッセージを送るとしたら、どんなことを伝えたいですか?菅田:久部には、演劇という好きなものがあって「演劇で名を馳せていきたい」「蜷川幸雄先生に認められたい」「あいつよりももっといいものを作りたい」ともがいていく話ですが、最終的にどこにたどり着くのか。いろいろな人生があって、それぞれの理想やしたいことはあるだろうけど、それがあるってとても贅沢なことなんです。
実は僕たちは、当たり前の幸せの2個3個先を見てしまっていたなというところに今回気づくことができました。その気づきがすごく大事だなと思って演じています。久部は家もないので(笑)、「こうしているだけで幸せだな」と思えたり。コロナ禍明けのときも「人と会えて喋ることができるだけで幸せ」とみんな思ったと思います。そういう1つのことですごく幸せになったり、悲しかったり、いろいろな感情になれて、いろいろな経験をできることがすごくいいなと思います。
― 貴重なお話をありがとうございました!
(modelpress編集部)
菅田将暉(すだ・まさき)プロフィール
1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年に俳優デビュー。2013年に映画「共喰い」で第37回日本アカデミー賞・新人俳優賞、2018年には映画「あゝ、荒野 前篇」で第41回日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞を受賞した。2017年、ソロ歌手としてデビューするなど多方面で目覚ましい活躍を見せている。2025年12月、NHK放送100年特集ドラマ「火星の女王」への出演が控えている。
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