彼女から印の意味を尋ねられた僕は、運営の説明文に何も言い返せなかった
暇つぶしのつもりで入れた、あのアプリ
半年前、深夜の会社の休憩室で、同僚が「こういうアプリってこんな世界なんだぜ」と画面を見せてきたのが始まりでした。冗談半分でアプリを入れて、適当にプロフィールを作って、出てくる女性の写真をスワイプする。それだけのつもりでした。
最初の頃は罪悪感がありました。彼女の顔を思い出して、何度かアンインストールしようとした記憶もあります。でも、いいね通知が画面に光るたびに、誰かに必要とされている感覚があって、結局アプリは消せませんでした。
実際に会ったことは一度もありません。だから「これは浮気じゃない」と、自分に言い聞かせていました。それは僕にとって、最後の防波堤のような言葉でした。
彼女に呼ばれた、ある夜のリビング
ある木曜の夜、仕事から帰ると彼女がリビングのソファに座っていました。テレビは消えていて、彼女は手にスマホを持ったまま、まっすぐ僕の顔を見ています。「これ、今あなたのアプリ画面と同じやつ」。彼女がスマホをこちらに向けてきたのです。
そこには僕の写真と、僕が書いたプロフィール文がありました。「お互いに価値観を共有できる人と出会えたら」。2年前に彼女と行った旅行先のホテルで撮った写真。
「どういうこと?」と聞かれたら、用意していた言い訳がいくつもありました。「会ってないから」「ただ眺めていただけ」「もう消すつもりだった」。けれど彼女は責めもせず、画面を僕に向けて、こう言いました。「この印って何の印?」。
僕も知らなかった、青い印の意味
プロフィールの名前の横にある、小さな青い印。僕も付いているのは知っていましたが、本人確認のマークか何かだと思っていました。だから「本人確認のマークだったと思う」と答えました。彼女は黙って、アプリの説明ページを開いて見せてくれました。
「アクティブかつ円滑に利用しているとサービスが認定したユーザーに付与される印」。文字を読んだ瞬間、僕の中で組み立てていた言い訳が、ひとつずつ意味を失っていきました。
「会ってないから大丈夫」と思っていたのは、自分だけでした。半年間、僕はメッセージを送り、写真を眺め、いいねをつけ、誰ともトラブルなく日常的に使い続けてきた。運営に評価されるほどに。「会っていない」のレベルの話では、もうなかったのです。
そして...
彼女は「明日からしばらく、別々に過ごそう」とだけ言いました。何も言い返せませんでした。彼女は寝室の扉をそっと閉めて、それきり戻ってきませんでした。
リビングに残った僕は、ホーム画面のアプリを長押しして、削除ボタンを押すまで、何分かかったか覚えていません。消したところで、半年間のあの印は、運営の記録の中に確かに残っているはずです。
「実際には会っていない」。それは僕の中だけで意味を持つ言い訳でした。彼女にとっても、運営の判定にとっても、それは免罪符にはならなかった。当たり前のことを、僕は半年もかけてようやく理解したのです。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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