彼女の「寂しい」に弱音で答えた俺。「どうした?」に返信できないまま迎えた朝の話
上司に怒鳴られた金曜
あの日は、最悪の一日でした。半年かけて準備したプレゼン資料に大きなミスが見つかり、社内会議で先方への謝罪が必要になりました。会議室に呼び出され、上司にはこれまで聞いたことのない声量で叱責されました。
帰り道、駅のホームのベンチに座り込んだまま、終電近くまで動けませんでした。家に帰り、シャワーも浴びずに部屋でぼんやりしていると、夜11時に彼女から「寂しい」というメッセージが届いたのです。
普段の俺なら「大丈夫?」「来週まで頑張ろうな」と明るく返すところでした。でもその夜は、画面を見たまま、いつもの軽い返信が頭に浮かんできませんでした。
「こっちも」と打ってしまった瞬間
気がつくと、俺は「こっちも」とだけ打って送信していました。送った瞬間、自分でも驚きました。彼女に対して弱音らしい弱音を返したことなんて、これまで一度もありません。いつも俺の方が彼女を支える役で、それが俺の役目だと思ってきたからです。
すぐに彼女から「どうした?」と返信が届きました。当然だと思いました。普段の俺じゃないことに、彼女はすぐ気づいたのだと思います。
返事を打とうとしたところで、急に怖くなりました。仕事の失敗を話したら、彼女に心配をかけてしまう。遠距離で会えない分、いつも明るくいようと決めていたのに、それを破ってしまう。打ちかけた言葉を全部消して、画面を伏せました。
打っては消した一晩
夜中、何度も画面を開きました。文面を打っては消し、打っては消し。「ちょっと疲れただけ」「大したことじゃない」「上司に怒られて」。どれも、しっくりきません。
打っては消した一晩で、俺はだんだん気づき始めていました。問題は仕事の失敗を話せないことじゃない。彼女に「弱い俺」を見せることが怖いんだ、と。
朝7時、結局俺が彼女に送れたのは「ごめん、忘れて」のひとことだけでした。送ってから後悔して、通話画面を開きかけて、また閉じてしまいました。
そして...
昼前、彼女から「大丈夫?電話する?」とメッセージが来ました。あれだけ素っ気ない態度を取った俺に、彼女は変わらず手を差し伸べてくれていました。
「ありがとう、夜にかけていい?」と返信して、夜まで何度も話す内容を整理しました。それでも電話に出た俺は、最初の数十秒、何も話せませんでした。彼女は「ゆっくりでいいよ」と優しく言ってくれました。
仕事の失敗のこと、上司に叱責されたこと、「こっちも」と打った瞬間に自分の弱さが怖くなったこと。話し終える頃には、日付が変わっていました。
「話してくれてありがとう」と彼女は言いました。礼を言うのはこっちのはずなのに、と俺は思いました。「こちらこそ、待っててくれてありがとう」と返すのが精一杯でした。彼女がくれた「どうした?」のひとことは、踏み込みすぎなんかじゃなかった。あの時、俺が踏み出せばよかっただけなんだと、ようやくわかった夜でした。
(20代男性・IT関連)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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