

親の支配を超えて──18歳の女子高生が選んだ“自分の意思”という成人の証【僕達はまだその星の校則を知らない#8】
※本コラムは『僕達はまだその星の校則を知らない』第8話までのネタバレを含みます。
■18歳で“大人”と呼ばれるってどんな気持ち?
「18歳で成人ってどうよ?」
「なんか、損した気分」
2023年に放送されたサントリーの「成人の日CM」で、こんな会話が繰り広げられていたのが、今でも印象に残っています。“成人”といえば、20歳が当たり前だったはずなのに、2022年から成人年齢が18歳に引き下げに。現在の高校3年生は、“大人”と“子ども”が同じ教室にいることになります。
大人になるというのは、自由を得るのと引き換えに、責任を負う立場になること。『僕達はまだその星の校則を知らない』(以下『ぼくほし』)第8話でスポットが当たった北原(中野有紗)も、18歳の誕生日を迎えて突然大人の仲間入りを果たしたことで、さまざまな重圧を感じるようになりました。
そんな第8話のサブタイトルは、「18歳、大人ってなに?」。北原の父親を名乗る人物から「娘に会わせてほしい」と学校に連絡がきたのをきっかけに、健治(磯村勇斗)らは北原が抱える家庭の事情に踏み込んでいくことになりました。
財力がある北原の父は、金銭的には家族に何不自由ない暮らしをさせてきたし、学校にも多額の寄付をしてきました。しかし、その裏では、母親を侮辱するような発言をしたり、キレると物を投げたりする横暴な一面が。両親が争う姿に痺れを切らした北原が、母親を説得。妹を含めた3人で、小さなアパートに暮らすことになりました。
元の生活に戻る気がない北原は、父親に会うことを断固拒否。しかし、在学契約を結んでいるのは父親です。「入学金・授業料・寄付金と、散々金を取っておいて、保護者を軽んじるのか!」と怒鳴られれば、学校は何も言うことができない……はずでしたが、ここは健治のナイスプレー!
北原の父が雇った弁護士に、「親権者である北原さんは、お嬢さんに会う資格がある」「学校に北原を隠してもいい権利はない」と言われても、「権利はあります。学校は生徒が安心・安全に過ごすための場所です。子どもの福祉のため生徒の状況を尊重することが法的に認められています」と返し、北原父を突き返しました(まさに、スカッとジャパン!)。
また、北原父に「学費だって1円も払いませんよ。寄付金も返してもらう。学校だって辞めさせる。契約してるのは僕だからな!」と言われても、ビビることなく「分かりました。では、在学契約を解除してください。本校の学則では、18歳以上の生徒は学校との間の在学契約を自分で直接結ぶことができるんです」と言い放ちました。「これは、北原かえでさん本人の意思です」と。
18歳、成人になったばかりの北原は、まだ大人というものが何なのかよく分かっていません。そりゃそうですよね。わたしだって、高校3年生の時に「はい、今日から成人です」と言われても、「いやいや、まだまだ子どもだよ」と違和感を覚えていたと思います。
でも、わたしたちが乗っている電車は、止まることがありません。前には進むことはあっても、後ろに戻ることはできない。「まだ子どもでいたい」「大人になんかなりたくない」「子どもに戻りたい」と思っても、大人になることを受け入れるしかないんです。18歳の北原が初めて大人としてした選択は、父に支配されることを拒み、自分自身の意思で「ここに居たい」と宣言することでした。その姿は不完全で未熟かもしれないけれど、力強い瞳からは大人としての決意がたしかに感じられました。
健治は、北原と自分はよく似ていると言っていましたが、「たしかに!」と納得した人も多いのではないでしょうか。だって、北原は18歳になった瞬間から、「何も分かってないまま大人の方になっちゃった」「もうすぐ下の世代に、こんな世の中になったのはお前たちのせいだって言われるようになる」と不安を口にしていました。わたしが成人を迎えた時なんて、「お酒が飲めるようになる〜!」とか「振袖着るの楽しみ〜!」とか、そんな単純なことしか考えていなかったような気がします。
まだ18歳なのに、北原はめちゃくちゃシビアに大人になる責任と向き合っている。わたしが軽やかに通り過ぎた年齢で、彼女はもう大人としての重圧を背負っているんですよね。だからこそ、健治のように「大人になるって、悪いことばかりではないかもしれません」と伝えてあげられる大人が、近くにいて本当に良かったと思います。健治もまた北原に出会ったことで、そう思うことができたのでしょう。
■専業主婦は“何にもなれていない”わけじゃない
専業主婦の北原母は、夫から「何にもなれていない」と言われ続けてきたそうです。わたしは、声を大にして言いたい。「専業主婦は“何にもなれていない”わけじゃない〜〜〜〜〜〜!」。現在放送中の朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)でも、家庭に入ったヒロインが「何者にもなれんかった」と涙を流す姿がありました。たしかに、専業主婦は社会から隔離されているような気持ちになることもあると思います。でも、本当は家事や育児という“生活を支える土台”を担っている大切な存在なんですよね。誰かがその役割を果たしているからこそ、社会の歯車は回っているんです。
実際に、北原父だって、妻の存在がなければ、仕事に邁進することだってできなかったはず。にも関わらず、その努力や献身はお金に代えられないからこそ、“ないもの”として扱われてしまうことがある。これは北原家だけの問題ではなく、現代社会が専業主婦をどう捉えているかを映し出しているように感じます。北原父には、ぜひ『逃げ恥』を見て、家事や育児の“見えない労働”に大きな価値がつくことを学んでいただきたい!
(菜本かな)
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