大河ドラマ「べらぼう」より

市原隼人が覚悟を持って演じた鳥山検校「瀬川は一筋の希望の光だったと思います」<べらぼう>

2025.04.06 20:45
大河ドラマ「べらぼう」より

横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”として時代の人気者になった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱と“エンタメ”に満ちた人生を描く“痛快”エンターテインメントドラマ。

「べらぼう」の物語も第14回の放送を終え、蔦重、瀬川、鳥山検校それぞれの思いの行方が描かれた。WEBザテレビジョンでは、瀬川を身請けする“盲目の大富豪”を演じる市原隼人にインタビューを実施。役柄への思い、鳥山検校の瀬川への思いについて語ってもらった。

実在の人物を演じるには敬意と覚悟が必要なんです

――鳥山検校を演じるとなった率直な思いをお聞かせください。

大河ドラマへの出演は3度目となるのですが、これまで、いただいた実在する方を演じさせていただくに当たっては、血のつながっている方にお会いしたり、全ての資料を読ませていただいたり、その方に所縁のある地に足を運んだり、お墓に手を合わせていただいたりしてから演じさせていただいていました。ですが、鳥山検校は謎に包まれた存在でもあり、資料もすごく少なくて。鳥山検校がどのように扱われていたのか、時代背景や当道座について調べ演じる手掛かりとしていきましたが、とても難しかったです。今回私が鳥山検校を演じたことにより、今この時代に大河ドラマを楽しみにしてくださっている方が新たな歴史の人物を知るきっかけになればとてもありがたいという思いでした。

――盲目である検校を演じるに当たり、目の不自由な方に取材をされたと伺いました。

実在した人物を演じることは、やはり敬意と覚悟が必要です。今回も、しっかりと真摯に向き合いたいと、まずは覚悟を決めてから作品に入りました。目が不自由な方の生活を支援する「東京視覚障害者生活支援センター」に伺い、サポートしている方々や、目が不自由な方とお話をさせていただきました。その際、「形あるものはいずれ壊れていくかもしれない。けれど、形ないものはいつまでも自分の中で壊れずに大切にしていける」という、自分の中で新たな希望を見出すことができるお話を伺いました。同時に、鳥山検校も手探りのような人生をずっと続けていかなければならないという孤独と寄り添って生きたところがあるのではないかと。その痛みが分かるからこそ、逆に相手の隙に入ることもでき、悪事にも使うことができてしまったのだと。それが鳥山検校という人だったのではないかと思います。

検校は定められた自分の人生へのもどかしさを感じていたと思います

――そんな孤独と寄り添い生きていた鳥山検校は、吉原で瀬川と出会います。

検校にとって、瀬川は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のように、一筋の希望の光だったのだと思います。初めて吉原で瀬川に会い、初会は話すことも触れることも出来ず、ただ座っているしかできない状況の中、ルールを破って鳥山検校のために本を読んでくれた。きっと彼は、瀬川と共犯者になれたような気持ちだったのではないかと思うんです。常に孤独な人の気持ちを100%理解することはできない。けれども、1%から気持ちを積み上げ、寄り添う覚悟を持ってくれた瀬川に引かれたのではないかなと思いました。

鳥山検校が生まれながらに定められてしまった人生では、どうしても他人と概念がずれてしまう部分があったと思います。常に周りの人とは通じ合えない部分がある中で、瀬川と出会い、そこから計り知れない思いが湧いたのではないかと思っています。

――検校の嫉妬心という視聴者の声もありますが、蔦重に対する気持ちはどのようなものだったと思われますか?

蔦重が現れて感じたことは、嫉妬ではなく、自分の生まれてきた環境や、瀬川を自分の方へ向けられないという自分への悔しさだったと思っています。彼は抗うことができない自分の人生へのもどかしさを常に感じており、自分への憎悪があったと思います。生きれば生きるほど、息をすればするほどに敵が増えるような、そんな人生に感じていたのではないかと。結局、瀬川を自分のものにはできない、その悔しさを他の誰かではなく、自分に向いていたのだと思っています。

――“嫉妬”という言葉では片付けられない思いがあったのですね。

瀬川に対しては、“惚れた腫れた”という話だけではないと思っていて。もちろん女性としてずっと近くで寄り添っていきたい方だという思いはあったと思いますが、それは女性であっても男性であっても、“瀬川”という人に引かれ、人間力と愛を持った瀬川だからこその思いだったと思います。

検校は目が見えない分、ほかの五感がどんどん優れていく。声のトーンなどでその人の感情が読めてしまう検校だからこそ、瀬川の心の内に気付き、逃げ場のないスパイラルにハマっていってしまったのかなと。検校の前ではうそをつくことができないんですよね。検校は全てが見えてしまうからこそ、生きていくことすら苦痛になってしまうような人生だったと思うんです。そしてそこに初めて見えた一筋の光である瀬川が自分の方を向いてくれないことに苦しみを感じてしまう。

それは、相手が蔦重でも、ほかの誰かであっても同じことで、答えが分からない中で生きているような感覚だったのではないかと思い演じていました。

小芝風花さんは常に現場に花を咲かせてくださるような方でした

――瀬川(身請け後は瀬以)演じる小芝風花さんとの共演はいかがでしたか?

すごく尊敬しています。“瀬川”として生きていらっしゃるんだなと。一緒にお芝居をできることがすごく幸せだと感じさせていただける方でした。ちょっとした声や動きでもその現場にいる皆を魅了するような、全ての空気を一気に引き付けるような魅力があり、なかなか出会えないような方で。私も最後に「あなたのお芝居のファンです」とお伝えしました(笑)。

風花ちゃんが演じられたから、瀬川のすごく繊細な蔦重との人間愛の部分が表現されていたと思います。検校とは重いシーンが多かったのですが、常に笑顔で現場に花を咲かせてくれるような方でしたので、私もすごく救われましたね。

――迷い続けることが役作りだと感じていらっしゃったと伺いました。一番迷われたことは何だったのでしょうか。

やはり瀬川との距離ですね。全てを受け入れてしまうのではなく、どこかで鳥山検校は何かを疑いながら、信じられない心を持ちながら、それでも瀬川に寄り添っていきたいという矛盾があったのだと。その殻を壊そうとしながら瀬川に近付いていったのではないかと思うんです。その部分を表現するため、近くなりすぎないよう、ぎこちない距離感が出るようにと心掛けていました。

――その迷いは最後まで続いたのでしょうか。

はい、悩み続けることが一番の答えなのかなと。最後の最後まで悩み続けるさまが、鳥山検校の役と重なり見て下さる方にも感じていただけたらと思いました。

検校は人道までは踏みにじれなかったのだと思います

――瀬以と離縁する道を決めた検校ですが、離縁するに至った心境についてどのようにお考えでしたか?

検校は、自分と向き合う時間の方が長い人物だと思うんです。お瀬以やお瀬以の周りの環境に固執するのではなく、結局のところ自分と向き合った中で人道までは崩せなかったんだと。もちろん、非道なこともたくさんしてきたと思いますが、人の痛みが分かるからこそ、最終的に人道までは踏みにじれなかった。それが本質だったと思います。瀬以との離縁に関しても、自分自身の葛藤の中で出した答えだという部分が大きいのではないかと感じていました。

――検校は、瀬以との離縁をどの段階で思ったのでしょうか。

暗闇の中、手探りで生きてきた検校にとって、瀬以が現れたこと自体が人生の中で予想外のことだったと思います。第13回(3/30放送)で瀬以から本心を吐露されますが、その時点でそう(離縁)するしかないのではないか、と思っていたのではないかと。一番初めは別れる日が来るとは思っていなかったと思いますが、自分といる時とは違う蔦重と話しているありのままの瀬以の姿を見てからは、どこか感じていた部分があった。その逃げ道が三味線であったのだとも思います。

希望の光となるような作品になってほしいと思います

――一番印象に残っているシーンを教えてください。

三味線を弾く場面です。三味線の音を出すのではなく、“空気感を表現したい”と考えていました。そこで、三味線の歴史やどのような方が弾くものでどのような扱いをされていたかと、全ての歴史を先生にご教授いただき、概念が変わりました。一番印象に残っているのが、「鎮魂の精神というものが常に根付いているんです」と。目には見えないものを思い続ける気持ちは普遍の価値なのだと。その思いを表現できるよう、音だけではなくいろんな思いを込めさせていただいたので、とても印象に残る場面になりました。

――鳥山検校役は、ご自身にとってどのような経験になりましたか。

一生忘れられないと思います。どんなに自分が寄り添おうとしても寄り添えない役があるのだと、その一つの答えをいただいた役でもありました。そしてこの「べらぼう」という作品を通して、今を生きる手立てになるのではと希望を見出していただきたいと思いますし、現代を生きる方々の生活が豊かになる後押しとなるような、希望の光となるような作品になればいいなと願っています。

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