SixTONES松村北斗&上白石萌音、再共演で“共鳴”「怖かった」朝ドラ時に感じていた思い・新たな関係性を築くまで<「夜明けのすべて」インタビュー>
2024.02.06 07:00
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2月9日公開の映画『夜明けのすべて』でW主演を務めるSixTONESの松村北斗(まつむら・ほくと/28)と女優の上白石萌音(かみしらいし・もね/26)。2021年後期に放送されたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で夫婦役を演じた2人が、映画初共演となる今回は、同僚役で最高の理解者となる特別な関係性を演じている。モデルプレスらのインタビューに応じ、再共演した感想などについて語った。
松村北斗&上白石萌音W主演「夜明けのすべて」
本作は『そして、バトンは渡された』で2019年本屋大賞を受賞した瀬尾まいこ氏の原作小説を、『ケイコ 目を澄ませて』が第72回ベルリン国際映画祭ほか20以上の映画祭に出品され、第77回毎日映画コンクールで日本映画大賞・監督賞他5部門を受賞するなど国内外で絶賛を浴びた三宅唱監督が映画化。本作も第74回ベルリン国際映画祭【フォーラム部門】に正式出品が決定し、世界から注目を集めている。月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さん(上白石)と、転職してきたばかりにもかかわらず、やる気がなさそうに見えるが実はパニック障害を抱えていた同僚・山添くん(松村)。そんな2人の奮闘を、温かく、リアルに、時にユーモラスに描く。
松村北斗&上白石萌音、再共演で“共鳴” 新たに感じた互いの魅力
― 『カムカムエヴリバディ』以来の再共演となりますが、前回の共演から時間が経って印象が変わったエピソードや、再共演だからこそ波長が合ったというエピソードなどがあればお聞かせください。松村:僕は再共演ということで安心感がありました。僕の勝手なイメージですが、上白石さんは『カムカムエヴリバディ』の時から“いろいろなことを背負って歩いていける人”という印象だったので、すごく頼りになる方だと思っていました。でも『カムカムエヴリバディ』の時はやっぱり“安子ちゃん”だったので…。
上白石:久々にそのイントネーションを聞きました(笑)。
松村:(笑)。僕にとっては“安子ちゃん”だったのですが、そこから今回の撮影まで時間が空いたなかで、原作も読んでいたからか、上白石さんをテレビで偶然見かけるうちにだんだん“藤沢さん”だと思うようになりました。再共演で波長が合ったのはもちろん、そういう意味では前回とは違う役柄だったので、印象も変わりました。
上白石:『カムカムエヴリバディ』で命を懸けた時代を演じたからこそ、遠慮せずにいける感覚があったのですが、『カムカムエヴリバディ』は昭和で、今回は現代ということで、時代背景はもちろん役柄も全く違いますし、年齢も逆転していたので、新たな気持ちで挑めた気がします。“そういえば夫婦役をやっていたな”という前世くらいの感覚で、また全然違った関係性をゼロから違和感なく築くことができました。どちらの役もしっくり来て、どちらの役も心地良かったので、作品の中にしっかりと入れた感じがして嬉しかったです。
― 松村さんと上白石さんがまとう空気感がとても似ている印象を受けたのですが、お2人が実際に撮影をしていてお互い似ていると感じたことや、共感したことなどはありますか?
上白石:山添くんの家で撮影した時に「急に他人に自分のことが知られていくことについてどう思うか」という話をして、共鳴したのを思い出しました。私たちは「わ~い!」というテンションにはなれない2人(笑)。
松村:僕が朝ドラの話をしたのが事の発端なのですが、僕自身は何も変わっていないのに、朝ドラの放送の15分前と15分後で世界は変わって、街中でも「稔さん!」とどんどん広まっていくことに怖さを感じたんです。稔さんという役が魅力的で、ある人からも「彼はすごく良いお芝居をした」と言っていただいたこともあり、世間から「彼はもしかしてすごい俳優さんなんじゃないか」というような目を向けられ始め、周りの人にとっての自分がすごく上に行ってしまって、怖くて仕方ないという話をしました(笑)。
上白石:それに対して怯えているのが私もまったく一緒で、「わかります!」と共鳴しました。私が演じているのは間違いないのですが、「違います。それは私じゃないんです…」と思ってしまうんですよね。
松村:「ついに認められた!来た!」とはならなくて、「違うんだよ。俺は何も変わってないんだよ…」と怖かったです(笑)。
上白石:『カムカムエヴリバディ』の撮影期間中はまだドラマが放送されていなくて、世間の反応がわからないまま撮影をしていたので、今回の共演で松村さんからそのお話を聞いた時に、放送中はきっと同じ思いを抱えながら過ごしていたんだろうなと感じました。深夜みたいな暗さの共鳴でした(笑)。
― (笑)。お互い人見知りなところも共通点かと思うのですが、その辺りはいかがですか?
松村:人見知りは多分いくつかパターンがあって、僕は間が空いた瞬間が怖くてとにかく矢継ぎ早に喋るタイプなのですが、上白石さんも同じタイプの人見知りでした。
上白石:今回の撮影中もそれで会話が続いていたのですが、いつからか山添くんと藤沢さんみたいな関係性に転換されました。
松村:話すだけ話して満足したら黙って、自分の考えたいことを考えて少ししてから「それこそ…」と急にまた話し始めて、何が「それこそ」かわからない(笑)。よくよく聞いていたら、昨日話していた話の続きだったりするんです。
上白石:「でも…」とか、何の「でも」なんだろうという話の始まり方(笑)。そんな感じで、途中から間が怖くなくなりました。山添くんと藤沢さんから影響を受けて、ある意味その時期の私たちも山添くんと藤沢さんのような関係性だったのだと思います。
― 今回の再共演を機に新たに発見した素敵な一面や、お互いの羨ましいと思う部分があれば教えてください。
上白石:現場で皆さんと一緒にお弁当を食べていた時に、松村さんが端っこでお弁当箱に入った野菜をむしゃむしゃ食べていたので、「それ持ってきたんですか?」と聞いたら、「そうです。野菜が足りていないなと思ったので、朝起きて準備して持ってきました」とおっしゃっていて、ビックリしました。あと、いつも水筒を持ち歩かれていて、ちゃんと生活している人だと思って、すごく尊敬しました。
松村:そうですね。丁寧でした。(ドヤ顔)
上白石:松村さんの丁寧な暮らしが垣間見えました。私も水筒を持とうと思って、密かに真似しました(笑)。
松村:(笑)。あの頃は撮影時期が寒かったので、温かいよもぎ茶を入れて持ち歩いていました。
上白石:よもぎ茶だったんですね!レベルが高い(笑)。素晴らしいです。どうしても忙しくなるとまずそこが疎かになりがちなのですが、そこをしっかり守っている人なんだと、より尊敬が増した瞬間でした。
松村:以前血液検査をした時に、鉄分がすごく少なかったので、検査をしてくださった方がビックリしていたんです(笑)。なので、レタス類と、サラダほうれん草という生で食べられるほうれん草を現場に持っていっていました。ほうれん草で鉄分をとって、よもぎ茶は造血作用として。あと山添くんの役作りとして少し体重を落としていたので、それもあって野菜多めの食生活をしていました。現場では美味しいお弁当を用意してくださって、ついいろいろ食べてしまうので、そうならないように意識していました。
上白石:プロです。
松村:僕は『カムカムエヴリバディ』の頃、上白石さんとそこまで長い期間一緒に撮影したわけではなかったので、皆さんも感じているような本当に素晴らしい女優さんという印象だったのですが、今回再共演して感じたことは、結構ジョークがきいた話もする方なんだなということです。
上白石:つまらないやつだと思われてた!?(笑)
松村:ふざけたことを言ったらあしらわれるかなと思ったら、むしろジョークの方が多くて、時にはダークで、ウィットに富んだ会話もする方なので、初めて「人だ…!」と思いました(笑)。大笑いするようなジョークではないのですが、ずっとクスクスしてしまうような、上品でセンスの良い笑いを持っている方だなと印象が変わりました。前回の共演よりも会話が増えた気がします。
上白石:松村さんの話がよく練られているんです。それが面白くて、悔しくて(笑)。
松村:ラジオから降ろした話もありましたね(笑)。
上白石:面白かったです(笑)。面白いお話がいっぱいでした。
松村北斗&上白石萌音、PMS・パニック障害を抱える役「まだまだ誤解がある」
― 日常を描いているシーンと、症状が出たときのメリハリを演じるのが大変だったと思いますが、役を演じるにあたって意識した点をお聞かせください。上白石:私が演じた藤沢さんは、いきなり山添くんの家に行って、山添くんの髪を切ったり、お土産にお守りをいっぱい買ったからどうぞとあげたり、普通の顔をしていながらとんでもないことをする役柄です(笑)。普通でいるけれど心の中では面白いことを考えているんだろうなとか、何も気にせずに話すことができたら本当はとても面白い人なんだろうなとか、そういうふうに想像を膨らませていました。
でもいろいろ考えた結果、現場に行って実際に松村さんとお芝居をしたら、今まで考えたことはなんだったんだろうというくらい自然と演じることができたので、松村さんがお持ちの力と、三宅監督が自由に演じさせてくださったことが大きかったと思います。現場に入る前に自分の中でハラハラしていたものが、スッと溶けていくような撮影でした。
松村:山添くんは、自分のパニック障害と向き合って乗り越えたいという思いがありながら、どこか放り出している部分も少しあって、決して誰かに「助けて」と言うキャラではなく、「俺はもう大丈夫なんだ」と思っているキャラです。作品自体も、PMSやパニック障害という病名があがってくる作品ではありますが、“その病気を知って、こんなに苦しいから一緒に悲しんでほしい”ということを打ち出しているわけではないので、そういった役柄と内容を踏まえると、とにかく自分が演じるうえで、観ている人に何か感情を誘い出そうとするようなあざとさが一瞬でも出たら、すごく気持ち悪くなってしまうだろうし、瀬尾さんが描いた原作とも大きく外れていくと思いました。
あくまで山添くんは自分の人生に必死で、どれだけ同情を誘わずに過ごせるか、どれだけ「とりあえず放って置くか」と思ってもらえるようなキャラにさせられるかが大事かもしれないと感じていました。登場人物にバレないように苦しんで、でも映画を観ている人には気づかれるのが正解なのかもしれないけど、それすらも気づかれないくらいに演じるのが実はバランスが良いのかなとも思いました。僕が演じたなかで三宅監督が良いところを切り取ってくださると信じて、僕はとにかくバレないように苦しむことを心がけました。
― 松村さんは今回の現場で、「ずっと役になりきった状態でいるよりも、演じた後で一旦自分自身に戻って、みんなと一緒に冷静に考える時間があった」とのことですが、そのアプローチによって得られたものや良かった点を教えてください。
松村:山添くんの家に、山添くんと藤沢さんが2人でいる時間が結構長かったのですが、そんなに広い家でもないので、これくらいの年代の男女が2人きりでいるとどうしても距離が近くなると思うんです。本人たちの居心地とは別に、客観視した時にどこかで男女の匂いを感じてしまう気がして、その塩梅を見極めるためには一旦冷静にならないと見えてこないのではないかなと。三宅監督はずっとその視点でいてくださっていて、「山添くんと藤沢さんだったら一緒にいられるけど、傍から見たらさすがにね」と話し合ったシーンも正直たくさんありました。
きっと2人の人生の中にはもっと近い距離感もあったんだろうけど、今回はそうではなく違うところを切り取ろうという結論に至りました。「大丈夫だと思うけどな…」という半端な気持ちで演じるのは良くないので、しっかり話し合って納得して臨めたのが良かったと思います。シーンを撮るうえで、やっぱりそういう様々な視点がないと、決して本人たちにその気がなくても、世間とは融合しないんですよね。なので、ただ演じるだけではなく、冷静になって考える時間が必要でした。
― 上白石さんは、藤沢さんの人生をどのように想像されていましたか?
上白石:藤沢さんは会社の面接を受けたけど落ちてしまい、バイトをして、カフェで飲み物をこぼして…とモンタージュ的に辛い部分ばかりを切り取られているので、そこから想像すると、どん底の数年間みたいなイメージにどうしてもなってしまいがちだと思うのですが、それでも何か楽しいことはあったと思います。それこそ山添くんと出会った後にあるような、穏やかな時間もあったはずです。
PMSは生理前にあらわれるものなので、それ以外はごく普通の生活を送っている藤沢さんがいたと思う一方で、その周期になるとずんと落ちることもあって、それを繰り返していたんだろうなと想像しました。ただ辛いだけの数年間というよりは、いろいろあって、症状とも向き合い続けていたら、偶然栗田科学に出会ったという、それくらいの温度感であの会社にいたいなと思いました。“ここが私の居場所!”というのではなく、自然な流れでその場にいられたらなと。藤沢さんだから飄々とやっていけた部分もあれば、どうにもならなかった部分もあると感じたので、その両側面を意識して演じました。
― PMSやパニック障害について知ってほしいという作品ではないというお話もありましたが、視聴者にとっては知らなかった部分も知ることができるきっかけになるかと思います。お2人が本作を通じて新たに知ったことや感じたことなどがあれば教えてください。
松村:この作品を撮るまで、常識程度には知っていたつもりだったのですが、正直全然知らなかったんだなと実感するほど、感じるものがたくさんありました。症状自体がどんなものかということは情報として伝わっていても、それに苦しんでいる人の思いや生活に関しては、まだまだ誤解があるのではないかなと思います。
上白石:私も病名は知っていましたし、それぞれのイメージもなんとなくあったのですが、人によって症状は様々で、こんなに幅や奥行きがあるものだということを知りました。自分はそうではないけど、そうなる可能性を持っているという気づきもあり、とても身近に感じて、見方が広がったと思います。それはPMSやパニック障害に限らず、世の中のいろいろなものに当てはまることなんだろうなとも思いました。
― 今のお話にあったように、具体的に世の中のものに対する見方や、人との向き合い方、コミュニケーションの取り方に影響を受けた部分はありますか?
上白石:三宅監督は「2人が横並びで、顔も見ずに喋っている時間を大事にしたい」とおっしゃっていて。藤沢さんと山添くんはほぼ向き合って喋っていないので、横並びで喋るのって楽だな、こんなに何でも言うことができるんだなと思いました。多分これまでも体験していたことだと思うのですが、今回それを実感しました。話を聞く時は相手と目を合わせなきゃいけないと思いきや、隣で聞いていたほうが話しやすいこともあると思うんです。向かい合って顔を見て話すことが必ずしもベストではないんだなと考えさせられました。この作品には、どうやったら人と楽にいられるかというヒントがある気がします。
松村:僕は実際に三宅監督との接し方も横並びだった記憶があります。山添くんの家での撮影は、照明などいろいろな都合で待ち時間が多くて、待っている間はそのまま家の中でいろいろお話ししていたのですが、乱暴な意味ではなく、相手の顔色を見ないからこそ話せることってたくさんあるなと思いました。自分的に強いトピックを話したら反応が見たくて、チラッと顔を確認したりはしましたが(笑)。自分の中で考えながら話す時は相手の顔色をうかがう余裕もないと思うので、横並びで話す安心感がテーマにありました。
上白石:真っ暗なロケバスで三宅監督と喋ったりもしましたよね(笑)。
松村:ありましたね。近くにいるのに、今どんな体勢をとっているかもわからないくらい暗かった(笑)。すごく楽しかったのを憶えています。
上白石:三宅監督が映画に映っていないのが不思議なくらい、ずっと3人で話していました(笑)。
― 原作にはないプラネタリウムや宇宙の話が入ったことによって、映画的にも広がりが生まれ、観終わった後の希望が静かに感じられたのですが、お2人は原作との違いをどう感じましたか?
松村:宇宙や空は情報が膨大すぎて少し怖くも感じるのですが、結局“綺麗”に集約されると思います。ということは、この物語も本当にそういうことなのかなと。すごく怖いことや難しいことがあるけど、映画のフライヤーにもある「出会うことができて、よかった」ということにリンクしている気がして、三宅監督もそこに気づいてこの要素を取り入れたのかなと思うくらいです。最終的によくわからないけど輝いている、綺麗だと思えてしまう感覚が、この作品と宇宙が繋がった理由なのかもしれないと感じています。
上白石:原作からの改変で好きなところはたくさんあるのですが、映画には藤沢さんと山添くんが働いている栗田科学で、中学生の2人がドキュメンタリーを撮るという新しい要素が加わっています。最初に台本を読んだ時は正直「これはどういうことだろう?」と不思議だったのですが、実際に撮影をしてみて、会社の中だけで完結せず外からの目があるという新たな手法に納得しました。あの2人がもしかしたら映画を観ているお客さんなのかもしれないし、まだ大人ではない2人のピュアな目でこの世界を見ているという要素にもなるし、でも実は捉え方が誰よりも大人だったりもする。原作からすると、第三者の目が入ったということが、より作品を多角的にしている感じがして、すごく好きだなと思いました。
宇宙に関してだと、撮影中だんだん私たちも星に関心が出てきて、夜の撮影も多かったので、 撮影しながら空を見て、「あれ何座ですかね?」と話している時間が好きでした。でも誰も答えを持っていなくて(笑)、アプリで調べながら、松村さんと三宅監督と3人で星空を眺めているのが、くすぐったくない地に足のついたロマンチックという感じですごく良いなと思いました。
松村北斗&上白石萌音が怒り・悲しみを乗り越えた方法
― 山添くんと藤沢さんは、不安定な時にお互いを支え合うシーンがいくつか描かれていますが、松村さんと上白石さんは日常生活で怒ったり悲しいことがあったりした時は、どのように乗り越えていますか?上白石:山添くんと藤沢さんの関係性で素敵だなと思ったのが、PMSやパニック障害を抱えているからということもあってか、心の中で溜め込んでおくと、それが「自分にとって良くないから言わせてもらうわ」みたいなスタンスで常にいることです。相手にもよりますが、溜め込まずに言えるって、良いことだなと思います。「今相手はこう思っているのかな?私がこう言ったからかな?」と不安に感じることがあったとしても、それが言える相手だったら、「そうだよ」と言われても謝れるし、「違うよ」と言われたら安心できるし。もちろん気を遣わせているパターンもあると思うのですが、直接言えなかったら文字にして伝えるでもいいと思います。私は何も表に出さずに沈殿させることが一番怖いなと感じます。
劇中でも「パニック障害だからそういうことができていいよね」というようなセリフがあるのですが、そんなふうに言える関係性ってすごいなって。もちろん相手のことを気遣うのは大事ですが、たまには自分のために物を言うことも必要だなと思います。私も「なぜムカついているのか」「なぜ怖いのか」とその時の感情を心の中で考えて噛み砕いていくのですが、そうすると意外とすぐにモヤモヤが解消されることも多いので、考えないようにするのではなく、しっかり立ち向かっていくようにしています。
松村:僕は、しんどいことやネガティブなことが、タンクの中でパンパンにならないと良いことは訪れないと思っているんです。昔空手をやっていた頃にそういう経験をしたのですが、どんなに練習しても全然成長せず周りに置いていかれて、でも頑張って続けていたらある時、追い抜かれた人たちを抜かすくらい急に成長したことがありました。だから何か辛いことや苦しいことがあっても、今はタンクを溜めている途中なんだと考えて諦めます。その間はもちろん苦しいですが、逆を言えばしんどいことは探しても来るわけではないので、その時が来たということは、タンクを溜めるチャンスが来たと思って、毎日頑張っています。
上白石:(拍手)
― 本作は周りもすごく優しい方が多いですが、いざ自分が同じ状況にいるとここまで優しくできるのかなと感じる部分もあると思います。お2人はこういう世の中であってほしいと考えたりはしましたか?
松村:すごく難しいですが、できる限り多くの人が温かいと思うような社会であったらいいなと思いました。
上白石:この2人も失礼な態度をとってしまうことがあります。特に藤沢さんは人をいっぱい傷つけてきたし、ここに描かれていないだけで優しくしてくれた人のことも意図せず攻撃してしまうことがあったかもしれません。誰一人傷つけずにいつも優しく生きることは難しいので、一日の中でそういう瞬間が少しでもあれば、それだけで素敵だなと思います。もし傷つけてしまった人がいたら、どうかその人のそばに優しい人がいてほしいと願います。
松村:どこかでプラマイゼロになっていたらいいですよね。山添くんはたくさんの人を困らせて苦しめているので、こういう物語がどこかにあってほしいとは思えないですが、この物語が温かく捉えられる社会であってほしい、そんな町があってほしいと思うような作品でした。
― お2人のセリフの掛け合いのなかで、山添くんの憎らしいセリフを放つ松村さんがとてもお上手だなと感じました(笑)。
上白石:あのシーンは松村さんご自身のパーソナリティが生かされた部分ですね(笑)。
松村:嫌味をいただきありがとうございます(笑)。でも、本当に生かされていたと思います(笑)。パッと言えてしまう人ほど逆に気持ちが良いし、その人なりの持論なんだろうなと思いますが、山添くんは一瞬引っ込ませかけてから言う感じが、自分で試写を観ていても嫌なやつだなと思いました(笑)。
― (笑)。松村さんは今回、山添くんの家の扉の前で何かが起こるというシーンが多かったと思うのですが、扉を閉めたり、ノックしたりと、扉にまつわる作品が多い印象です。
松村:本当にそうなんです。映画にドラマ、アニメ、いろいろな扉にまつわる作品を演じさせていただいていますね。
上白石:すごい!扉俳優だ(笑)。確かに今回もドア前のシーンは思い出深いシーンがたくさんあります。山添くんの彼女が来て、「上がっていかないの?」と言うシーンがあるのですが、そんなことも言うんだ、この人と思いました(笑)。
松村:ありましたね。言い回しも男っぽい感じで(笑)。あと扉を開けたら自転車を持って来られるなんて、普通はなかなかないですよ。山添くんと藤沢さんは、扉の前であんなにときめきチャンスがあるのに、何もないんです。
上白石:連ドラだったら、きっとインターホン越しに「待って!」となるようなところを、この2人はやらない。それが良いんです。
― 素敵なお話をありがとうございました。
(modelpress編集部)
ストーリー
「出会うことができて、よかった」人生は想像以上に大変だけど、光だってある―
月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さんはある日、同僚・山添くんのとある小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりだというのに、やる気が無さそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていたのだった。職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同士のような特別な気持ちが芽生えていく2人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。
松村北斗(まつむら・ほくと)プロフィール
1995年6月18日生まれ。静岡県出身。2012年4月期放送のドラマ『私立バカレア高校』(日本テレビ)で俳優デビュー。その後、2012年7月期『黒の女教師』(TBS)、2012年10月期『Piece』(日本テレビ)と3クール連続ドラマ出演を果たす。2012年10月『劇場版 私立バカレア高校』で映画初出演。2020年1月22日、SixTONESとしてCDデビュー。近年の主な出演作は、ドラマ『レッドアイズ 監視捜査班』(2021年/日本テレビ)、『カムカムエヴリバディ』(2021・2022年/NHK)、『恋なんて、本気でやってどうするの?』(2022年/カンテレ・フジテレビ)、『ノッキンオン・ロックドドア』(2023年/テレビ朝日)、映画『ライアー×ライアー』(2021年)、『ホリック xxxHOLiC』(2022年)、『キリエのうた』(2023年)など。上白石萌音(かみしらいし・もね)プロフィール
1998年1月27日生まれ。鹿児島県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞受賞し芸能界入り。2014年、『舞妓はレディ』で映画初主演を飾り、映画『ちはやふる -上の句/下の句-』や、驚異的な大ヒットを記録した映画『君の名は。』でヒロイン・宮水三葉役の声優を務め注目を集める。2020年1月期放送のドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS)でゴールデン・プライム帯連続ドラマ初主演、2021年後期放送のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』では深津絵里、川栄李奈と朝ドラ史上初となるトリプル主演を務めた。女優・声優・歌手とマルチに活動している。作品情報
2月9日(金)全国ロードショー『夜明けのすべて』出演:松村北斗 上白石萌音
渋川清彦 芋生悠 藤間爽子 久保田磨希 足立智充
りょう 光石研
原作:瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(水鈴社/文春文庫 刊)
監督:三宅唱
脚本:和田清人 三宅唱
(C)瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
公式サイト:https://yoakenosubete-movie.asmik-ace.co.jp/
公式X:https://twitter.com/yoakenosubete
公式Instagram:https://www.instagram.com/yoakenosubete_movie/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@yoakenosubete_movie
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