「silent」“語りたくなる”緻密な演出の凄み&「エモい」と唸る理由「いつ恋」制作陣・「チェリまほ」監督・新人脚本家から紐解く
2022.12.08 09:00
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女優の川口春奈とSnow Manの目黒蓮が共演するフジテレビ系木曜劇場『silent』(毎週木曜よる10時~)。様々な記録を樹立するほか、多くの芸能人がハマっていることを公言するなど今、一大ブームを巻き起こしている。そんな令和のラブストーリー代表作ともいえる同作の魅力を、ここでは制作陣サイドから紐解いてみる。
川口春奈&目黒蓮共演「silent」
オリジナル作品となる本作は、川口演じる主人公の青羽紬がかつて本気で愛した恋人である目黒演じる佐倉想と、音のない世界で“出会い直す”という、切なくも温かいラブストーリー。新人脚本家・生方美久氏が紡ぐ“リアルな会話”
まず本作を語る上で欠かせないのは、主軸となる脚本を手掛けた生方美久氏の存在だ。看護師として働きながら脚本を勉強していた生方氏は2021年、若手脚本家の登竜門とも呼ばれる『フジテレビヤングシナリオ大賞』で大賞を受賞。受賞作品となった『踊り場にて』は単発ドラマとして映像化された。そして、この年の審査員を務めていたプロデューサーの村瀬健氏が生方氏の才能に惚れ込み、コンクール出品作以外の脚本を一度も書いたことのないほぼ無名の新人ながら、連続ドラマでの脚本家デビューという抜擢を敢行。こうして生まれた『silent』が毎話放送後にはTwitterの世界トレンド1位、見逃し配信の再生回数では歴代最高を記録するなど異例のヒット作となり、彼女は一躍脚光を浴びた。
一方で、同公募の記念すべき第1回目の大賞受賞者であり、生方氏が「最も尊敬している」と公言している坂元裕二氏は、恋愛ドラマの金字塔・同局系ドラマ『東京ラブストーリー』(1991年)を、そして第2回目の大賞受賞者・野島伸司氏はトレンディドラマ『101回目のプロポーズ』(1991年)と、同公募の受賞者は即戦力としてドラマ界の歴史に名を残す作品を生み出している。こう考えると『silent』のヒットもある意味必然だったのかもしれない。
とは言っても、やはり生方氏の脚本には視聴者の心を鷲掴みにする“何か”がある。数え上げるとキリがないが、大きな魅力の1つは登場人物たちが紡ぎ出すセリフや言い回しではないか。モデルプレスら報道陣による囲み取材では、村瀬氏も「一番の魅力はリアリティのあるセリフだと思います」と熱弁していたようにセリフっぽさがなく、良い意味で何でもないシンプルで等身大な言葉だからこそ、視聴者の耳にすっと入り込む。
また、「まー」や「うん」といった接続や相槌、会話の間で生まれるちょっとした“間”の取り方、相手が言った言葉を自分も繰り返した反復法など、実際の会話でもよくある絶妙さもリアリティを生み出し、共感を呼ぶのだろう。
「チェリまほ」風間太樹監督の“感情移入してしまう”演出
そして同作のメイン演出を担当するのは、映画化もされたテレビ東京系ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称『チェリまほ』/2020年)、同局系ドラマ『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(2021年)、映画『チア男子!!』(2019年)をはじめとする話題作を手掛けてきた風間太樹監督。GP帯の連続ドラマの演出を担当するのは本作が初めてであり、風間監督にとっても本作は記念すべき“初”を飾った作品に。本作の演出面での魅力の1つとして、回想シーンなどを通じて多数登場するモノローグが挙げられると考える。登場人物の“心の声”と呼ばれるこのモノローグは、『チェリまほ』で馴染みのある演技手法だ。同作では、安達(赤楚衛二)が童貞のまま30歳の誕生日を迎えたことにより“触れた人の心が読める魔法”を手に入れるという設定が鍵となり、同期の黒沢(町田啓太)の心の声を聞くことで、安達は黒沢が自分に恋心を抱いていることを知り、2人の関係が発展していく。
クールで冷静な黒沢が安達を前にすると、“好き”が溢れ内心はパニックになっているという可愛らしいギャップはモノローグによって生み出され、視聴者のハートを掴んだ。そして『silent』もまた、紬や想ら各々が心に秘めていた思いが映像とともに視聴者に伝えられることで、感情移入が強まり、物語への没入感を増していく。
また風間監督が演出を担当した第5話では、前話で紬と想の関係性を察した恋人・湊斗(鈴鹿央士)が紬に別れを告げ、それを認めたくない紬が“ギリギリ別れている”状態から“別れる”までという過程が1話丸ごと使って丁寧に描かれていた。
その中でも特に印象的だったのが、約10分間にわたる紬と湊斗のLINE通話のシーン。通常、作品内での電話のシーンはそれぞれ分けて撮ることが多いというが、このシーンは実際に2人が電話しているところを撮影したという。
放送前や序盤では、紬が想との再会をきっかけに湊斗から心移りして想とよりを戻す…といった三角関係ならではの泥沼の展開を予想する人も多かったと思うが、湊斗との別れの過程を丁寧に描くことで紬が湊斗と紡いできた時間や湊斗に対する実直な思いが伝わり、紬が嫌なキャラクターとして浮き立つことなく、その清廉潔白さを保持していた。
このように、リアルに対する強いこだわりと時間をかけてゆっくりと物語を進めていくこともまた、それぞれの登場人物に思わず感情移入し、全員を応援したくなってしまう心理が働く一因になっているだろう。
村瀬健氏ら「いつ恋」制作陣が再集結
最後に、同作の要の存在となる村瀬氏について。実は本作には、高野舞監督や劇伴・テーマ音楽を担当する得田真裕氏をはじめ、彼の代表作の1つでもある同局系ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(通称『いつ恋』/2016年)の制作陣が集結している。若者のリアルを描いた本格派ラブストーリーとして人気を博した『いつ恋』だが、『silent』にもどこか通ずるものを感じさせる。その1つに、思わず「エモい」とセンチメンタルな気持ちにさせる演出が挙げられる。2作の共通点として、前述した通り、視聴者の胸に刺さるリアリティのあるセリフはもちろん、それぞれの作品にファミリーレストランが登場していることが思い浮かぶ。この舞台は、主人公たちが訪れる思い出の場所として視聴者に強い印象を与えてきた。
私たちが2つの作品を「エモい」と感じる理由は、このように思い出として丁寧に描かれていた何気ないものが大事な場面で自然と登場することで「これって…」「2人の思い出の場所だ!」と、点と点が繋がっていくストーリー性が大きなポイントになっていると考える。
リアリティを求めた強いこだわりからなる演出、そしてこれまで散りばめられていた言葉や物事が伏線となり、“考察ドラマ”として視聴者が語りたくなるドラマへと化していった『silent』。ストーリーだけでなく、演出に強い重きを置いていることからも制作陣の同作に懸ける熱い思いがひしひしと伝わってくる。加えて、それらを理解したキャスト陣が登場人物の思いを乗せて繊細に演じているからこそ、緻密な演出がより輝きを増すのだろう。いよいよ後半戦に突入し、さらなる盛り上がりを見せている同作の今後の展開と巧みな演出に期待がかかる。(modelpress編集部)
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