給湯室で噂を聞いてしまった私が、それでも自分から打ち明けることを選んだ理由
眠気の抜けない毎朝
3歳になった娘が、4月から保育園に通い始めました。本人なりに頑張っているのはわかるのですが、慣れない環境のせいか、夜中に何度も泣いて起きるようになっていました。
夫はちょうど長期の出張に入ったばかりで、家には私と娘の二人。実家は遠く、頼れる親もいません。夜中に何度も起きて娘を抱きしめ、寝付かせて、自分は3時間ほど眠ってまた朝を迎える日が続いていたのです。
そんな状態で、毎週火曜の定例会議に出席していました。前の晩までに資料は読み込んできたつもりでしたが、会議の中盤になると、どうしても瞼が重くなっていったのです。誰にも気づかれていないと、勝手に思い込んでいました。
自販機の前で、耳に入った言葉
ある火曜の会議が終わったあと、私は給湯室の奥にある自販機の前で、水を買って飲んでいました。すぐに席に戻る気力もなく、しばらく立ち止まっていたのです。そこへ、後輩と、その同期の女性社員の二人 が入ってきました。背の高い棚の死角になっていて、二人からは私が見えていなかったようです。コーヒーを淹れる音に混じって、聞き慣れた声がしました。
「あの人、会議中にいつも居眠りしてるよね」
私のことを言っているのは、すぐにわかりました。続けて、もう一人がこう返したのです。「ねえ、ちょっとは緊張感持ってほしいよね」私は手に持ったペットボトルを握り直すこともせず、二人が立ち去るまでそこから動けませんでした。事情を話していなかったのは私だ、と言い聞かせてみても、心には何かが残ったのです。
一週間後に決めたこと
それから一週間、私はずっと考えていました。何も言わずに我慢を続けるか、信頼できそうな人に打ち明けるか。職場で「弱音を吐く先輩」になることが、ずっと怖かったのです。それでも、一人で抱え込み続けることのほうが、結局は仕事にも娘にも良くない気がして、勇気を出して後輩にメッセージを送りました。
「少し話せませんか」水曜の終業後、オフィス近くのカフェで向かい合いました。私はゆっくりと事情を話したのです。
「実は娘が、夜中ずっと泣いていて」夫が出張中であること、頼れる親もいないこと、夜は3時間ほどしか眠れていないこと。後輩は驚いた顔のまま、何度もうなずいてくれました。
そして、後輩は紙ナプキンを握りしめ、頭を下げました。「ごめんなさい。何も知らずに」私は首を横に振り、自分の言葉で返したのです。
「相談しなかった私も悪いんです」
そして...
打ち明けたことで、長く溜め込んでいた重さが、少し軽くなったように感じました。翌日、私は上司にも娘の状況を伝え、しばらくは会議の出席を最小限にしてもらえることになったのです。
あのとき、給湯室の死角で動けなくなっていた自分のことは、今でも時々思い出します。あれは怒りでもなく、悲しみでもなく、「気づいてほしかった」と「気づかれたくなかった」が混ざった、説明のしにくい感情だったのだと思います。
今は娘の夜泣きも少しずつ落ち着いてきました。後輩は廊下ですれ違うたび、「お疲れさまです」と声をかけてくれます。私はそのたびに、笑って「ありがとう」と返しています。
(30代女性・営業企画職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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