会議室でうつむいたのは、3ヶ月間笑っていた私のほうだった
5年目の焦り
入社5年目。後輩も増え、中堅と呼ばれる立場になりました。でも正直なところ、自分の居場所がどんどん薄くなっている気がしていたのです。目立った成果はなく、かといって新しいことに挑戦する気力もない。定型の業務をこなし、会議では無難な発言をして、波風を立てない毎日。それを「うまくやっている」と思い込んでいました。
そんなとき配属されてきたのが、あの新人です。会議で発言しない。雑談にも加わらない。昼休みはひとりでお弁当を食べている。つい給湯室で同僚に言ってしまいました。
「おとなしすぎてやっていけない」
同僚が「まあね」と笑い、私も笑いました。
笑いの裏側
心配していたつもりでした。でも振り返ると、あの言葉の裏には別の感情がありました。あの新人が毎日黙々と何かに取り組んでいるのを見て、胸がざわついていたのです。
5年もいるのに、最近の自分は何をしているだろう。資料を右から左に流し、前例どおりの提案を繰り返し、それを「経験」と呼んでいる。あの子のまっすぐな姿勢に、入社したばかりの頃の自分を重ねてしまって、目をそらしたかったのかもしれません。
笑うことで、自分のほうが上にいると確認したかっただけなのだと思います。
あの10分間
月例会議で、新人がプレゼンの場に立ちました。正直、あまり期待していなかったのです。ところが最初のスライドが映し出された瞬間、空気が変わりました。
データの精度、構成の緻密さ。何より、3ヶ月間じっと観察して気づいた部署の課題を、的確に言葉にしていました。私が5年かけても整理できなかったことを、あの子は10分で伝えきったのです。
部長が「すぐ実行に移せるか検討したい」と前のめりになり、周囲がうなずいています。私は手元の資料に目を落としたまま、顔を上げることができませんでした。
そして...
会議のあと、彼女のデスクに行って「さっきのプレゼン、よかったよ」と伝えました。彼女は「ありがとうございます」とだけ返して、画面に視線を戻しました。その素っ気なさが、胸に刺さりました。給湯室でのあの声、聞こえていたのかもしれない。
あの子がおとなしかったのは、弱いからじゃなかった。言葉を選び、観察し、考えを深めていたのです。5年いて表面を撫でるだけだった私と、3ヶ月で核心を突いたあの子。会議室で一番おとなしかったのは、何も言えずにうつむいていた私のほうでした。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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