防犯カメラに映った息子の姿を見て、ようやく気づいた。「信じたい」と「向き合う」は違うということに
ひとりで回していた毎日
夫と別れて2年。小学3年生の息子と2人暮らしの日々は、想像していたよりずっと慌ただしいものでした。朝は息子より先に家を出て、帰りは息子が寝る直前になることも珍しくありません。「ごめんね、今日も遅くなった」が毎晩の決まり文句になっていました。
学校から「最近お友達とうまくいっていないようです」と連絡を受けたときも、「うちの子は優しい子ですから大丈夫です」と答えました。
そう言い聞かせていたのは、先生にではなく自分自身にだったのかもしれません。認めてしまったら、今の生活をどう立て直せばいいのかわからなかったのです。
階下からの訪問
日曜日の夕方、下の階の母親が訪ねてきました。「娘が泣いて帰ってきたんです。お宅の息子さんに突き飛ばされたと言っています」
とっさに「うちの息子がそんなことするわけない」と返していました。
本心でした。少なくともそのときは、信じていたのです。「子どものことですから、何かの間違いじゃないですか」そう続けながらも、胸の奥で嫌な予感がちくりと走っていたことに気づいていました。
相手の母親が「それなら、防犯カメラの映像を確認してもらえませんか」と言ったとき、断れませんでした。断ったら、本当に息子がやったと認めることになる気がしたからです。
画面の中の知らない顔
管理人室のモニターに映っていたのは、小さな女の子の背中を両手で押す息子の姿でした。倒れた子を見下ろすその表情は、口元がきゅっと曲がっていて、目が怒りに染まっていました。私の知っている「あの子」ではありませんでした。
あれは、朝出かける私の背中を玄関から見送るときの、あの目と同じでした。
映像が終わっても体が動きませんでした。「すみませんでした」それだけ絞り出すのが精一杯で、声が震えていたと思います。
そして...
帰りのエレベーターで、隣に立つ相手の母親の顔を見ることができませんでした。謝らなければいけないのは、あの親子にだけではありません。
部屋に戻ると、息子がテーブルで宿題を広げていました。いつもなら「おかえり」と言うのに、その日はこちらを見ようとしません。
あの子はきっと気づいていたのです。私がいつか映像を見ることも、もう「うちの子に限って」とは言えなくなることも。本当に見たくなかったのは息子の姿ではなく、息子をあんな顔にさせた自分自身の不在でした。翌朝、初めて息子より遅く家を出ました。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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