「待って」と送ったきり3時間黙った俺が、あの夜ずっと打っては消していたもの
返さなくなっていた理由
メッセージを返さなくなったのは、嫌いになったからじゃありません。いつからか、彼女の言葉にどう返せばいいのかわからなくなっていました。「今日どうだった?」と聞かれても「普通」としか浮かばない。その一言が申し訳なくて、既読をつけたまま「あとでちゃんと返そう」と思っているうちに日が変わる。そんなことを何度も繰り返していました。
彼女がどれだけ不安を感じているか、想像できなかったわけじゃない。でもわかっていながら何もしなかったのは、もっとたちが悪い。返さなくても届き続けるメッセージに甘えて、自分からは何ひとつ差し出していなかったのです。
文字が目に飛び込んできた夜
あの夜、何気なくスマホを開いた画面に「もう別れる」の文字がありました。指先がしびれるような感覚がして、気づけば「待って」と打っていました。
送信してすぐ、手が止まりました。待って、その先は? 待ってどうするんだ。「ごめん」? 何に対してのごめんなのか自分でもわからない。「忙しかった」? 嘘です。忙しくなんかなかった。彼女のメッセージに「普通」の一言すら返せない自分が情けなくて、ただ逃げていただけでした。
打っては消した画面
そこから3時間、メッセージを打っては消し続けました。「最近余裕がなくて」。嘘だから消した。「ちゃんとするから」。具体性がないから消した。「別れたくない」。本心だけど、それだけでは理由になっていない。
何十回と文字を打ち直しながら、ようやく気づいたことがあります。言葉が見つからないんじゃない。彼女に差し出せるものが、俺には何もなかったのです。「今日どうだった?」にすらまともに返せなかった人間が、別れを引き止める資格があるのか。その問いの前で、ずっと指が止まっていました。
そして...
結局送ったのは「ずっと打っては消してた。言い訳しか出てこなくて」。格好悪いにもほどがあります。でも、これ以上嘘は送れませんでした。
既読はすぐにつきました。なのに返事が来ない。10分、30分。あの沈黙の重さを、俺は初めて受け取る側で知りました。彼女が毎晩こんな気持ちでスマホを握っていたのかと思うと、喉の奥が詰まりました。スマホを握りしめたまま、朝を迎えました。
(20代男性・IT)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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