「それは恵まれてる人の言葉だよ」ママ友に言われた夜、私は何も返せなかった
会うたびに始まる教育の話
息子が通う保育園で知り合ったママ友は、とにかく教育の話が多い人でした。顔を合わせるたびに「今どこの塾を検討してる?」「英語は早いほうがいいよ」と話題を振ってきます。最初は情報交換のつもりで聞いていましたが、次第に「うちはそこまでしなくても」という気持ちが膨らんでいきました。
他のママたちもどこか同じことを感じていたようで、ひそかに「ちょっと必死すぎない?」と話題になることもあります。私も正直、少し距離を置きたいと思い始めていたのです。
噛み合わなかった帰り道
保育園の保護者懇親会の帰り、二人きりになったときのことです。ママ友がまた教育の話を始めました。
「小学校に上がる前に、ある程度の準備はしておいたほうがいいと思うんだよね」
その日はなぜか、聞き流せませんでした。「学歴がすべてじゃないと思うけどな」そう返した瞬間、ママ友の表情がこわばりました。数秒の沈黙のあと、低い声でこう言われたのです。
「それは恵まれてる人の言葉だよ」
思ってもみなかった返しに、唇を引き結んだまま、何も言えませんでした。
知らなかった痛み
私が黙っていると、ママ友は話し始めました。家庭の事情で進学を諦めたこと。就職活動で何度も書類選考で落とされたこと。義母に「うちの息子にはもっと学のある人がよかった」と言われたこと。
「私はただ、あの子に同じ思いをさせたくないだけなの」その声は少し震えていました。そして「ごめんね、押しつけてたよね」と続けた彼女に、私はやっぱり何も返すことができませんでした。責めていたのはどちらだったのか、わからなくなっていたのです。
そして…
帰り道、あの一言が何度も頭の中を巡りました。「恵まれてる人の言葉」と言われて腹が立ったのではありません。否定できなかった自分に、モヤモヤしていたのです。
私が「学歴がすべてじゃない」とためらいなく言えたのは、大学まで進学させてもらえた環境があったから。それを当たり前のように思っていた自分に、あの夜初めて気がつきました。
ママ友の不安を、「必死すぎる」の一言で片づけようとしていたのかもしれない。教育の正解はわからないけれど、あの夜の彼女の声だけは、もう聞き流せないと思いました。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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