「夢なんて持たなくていい」髭男爵・山田ルイ 53世が語る“キラキラしない”生き方と、娘 への全力子育て

芸人、髭男爵の山田ルイ53世さんが2026年1月に初の“後ろ向き”自己啓発エッセイ『僕たちにはキラキラ生きる義務などない』を発売しました。本書には「まずは『負け』を受け入れてみる」「失敗は糧にしなくていい」「『自分の殻』を無理に破る必要はない」「『なれた自分』でやっていくのも悪くない」といった、元ヒキコモリで何度も絶望を経験した山田ルイ53世さんがたどり着いた“生きる処方箋”が詰まっています。
今回はその著書について、また山田ルイ53世さんの子供との向き合い方、地元・兵庫に帰った際のエピソードなどを伺いました。
( Index )
「楽になりました」って反応に、それはそれでいいかなってなりました 子供には、ちょっとひねくれた頃にこの本をすすめたい 何年も食べそびれている…551の豚まん「楽になりました」って反応に、それはそれでいいかなってなりました
『僕たちにはキラキラ生きる義務などない』というタイトルを付けたきっかけは何だったんですか?
何年か前から講演会みたいなお仕事にお声掛けをいただくようになったんですけど、その講演会のタイトルが結構、こういうテーマになっていたんです。『anna』さんもきっとその機会が多いと思うんですけど、芸人や表に出るタレントって、どちらかというと“キラキラ”を後押しするフレーズを言うことや仕事の方が多いんですよ。
でも自分は“キラキラ”は必ずしも要らないよなと思っているタイプ。以前も一緒に本の仕事をしていて、それを知ってくれている担当編集さんから「そういう本を書きませんか」と言ってもらったのが始まりでした。

50歳の節目を意識した書籍でもあったのですか?
それが、本当は3年前には本が出ているはずだったんです。でも“俺の考え”みたいなことを本にするってすごくハードルが高いというか、恥ずかしいじゃないですか。おこがましいな……みたいな気持ちもあって、3年間ぐらいほったらかしていたんです。
担当編集さんには「今まさにやっているところや」と執筆中のフリを3年し続けていたんですけど、「もうさすがにそろそろ仕上げてもらわないと困ります」と言われたのが昨年だったという(笑)。だから、50歳の節目というのは全くの偶然です。
この本を書き上げたことで新たな発見や変化はありましたか?
こうやって本を書くと、現場でお会いした方に「良かったら」と献本することが多いんですけど……ほら、タレントさんって、基本的にキラキラしていることをマネタイズしている方が多いじゃないですか。そんな方にこの本を渡すと皮肉かなと思われかねないということで、結果、それほどインフルエンス力がない方にばかりお渡ししているという(笑)。
プロモーションという意味では非常に弱点を抱えた本ではあるのですが、それでも手にとって読んでくれた方からは「ちょっと楽になりました」とか「肩の荷がおりました」といった反響をいただいています。僕は、本来は“生きやすくなる10数個のヒント”みたいなものが苦手なんですよ。だからこの本の紹介文にある「初の自己啓発書」という文言も、担当編集さんに「やめてと言ったやん」と言っていたのですが、実際に「楽になりました」という反応をもらえると、それはそれでいいかなと思うようにもなりましたね。

子供には、ちょっとひねくれた頃にこの本をすすめたい
本書にはお子さんのお話も度々登場しますが、お子さんにご自身の著書をすすめられることはありますか?
考えただけでゾッとするわ〜っ!(笑)。 今までも何冊か本を出しましたけど、1冊たりとも子供たちにはすすめていないです。『一発屋芸人列伝』や『ヒキコモリ漂流記』を、こちらから「読みなさい」と言うのもアレですし(笑)。
でもこの間、下の子の幼稚園の卒園式に保護者として参加したときにも、若干“キラキラさせよう、映えさせよう”という空気を感じたんですよ。先生もちょっと涙を誘う余韻のある感じでピアノ伴奏をしていて、思わず「こんなところでもキラキラさせようとするんかい!」ってなりましたね。

本にも書いていますけど、有名人や著名人のSNSって、言うなれば住宅展示場のモデルルームみたいなものであって。素敵だな、憧れるな〜と思うかもしれないけど、それは“そこに誰も住んでいないから”という側面もあるんですよ。「なんかちょっと違うものも足されていない?」「ちょっと“こっち(キラキラ)側”に持っていこうとしていない?」ってなる振る舞いやコンテンツが、世の中にはいっぱいあるから。そういうものを一瞬でも疑う目を持ってほしいな、という意味ではこの本はいつか読ませたいかもしれないですね。
とはいえ、今はまだ上が中2、下が小1ですから。上の子は今Mrs. GREEN APPLEに夢中で、「この世界はダンスホール」なんて言葉を聞きながら、人生の楽しい部分を学んでいる途中なので、すすめるのは大学に入ってひねくれた頃ぐらいがちょうどいいかもしれないです(笑)
山田ルイ53世さんが子育てをする上で、大切にされているモットーなどはありますか?
僕の子育ての唯一のポリシーは、「子供のやることには必ずリアクションを取る」なんです。上の子はもう中学生なのであまり関係ないですけど、小学校の真ん中ぐらいまでは子供が何を言っても、どんな動きをしても全部「はっ…!」「ははははっ!」という感じで全力のリアクションを返してきたんですよ。

やっぱり自分がこういう仕事をしていますから、スベったときのお客さんのノーリアクションが堪(こた)えるということを身に沁みて分かっているわけで。だから子供にも家の中ではスベらせたくない。それと「世界というものは、あなたが何かアクションを起こしたら必ず何かしら反応があるんだよ」ということを教えてあげたいなと思ったんです。
ただそれがちょっと行き過ぎたのかわからないですが、下の子がすごい変顔とか「わあ〜」みたいなことを自信満々でやるんですよ。どうも自分のことを爆笑王だと思っている気配があって、このままだったら外で大スベりするんじゃないかって、それだけがちょっと心配(笑)。まぁでも、元気に育っているので良かったです。
何年も食べそびれている…551の豚まん
兵庫県ご出身の山田ルイ53世さんですが、現在も関西に来られる機会は多いのでしょうか?
それこそ講演会や営業などで大阪や兵庫、加古川や姫路のあたりなどは年に何回か仕事で来ますね。ただ実家が、もう兵庫にはないんですよ。10年か20年近く会っていない間に関東近郊に引っ越していたみたいで、それを東日本大震災の安否確認の連絡で初めて知るという(笑)。

でも母校の小学校へ講演会で行くこともあるので、兵庫はやっぱり今も地元だなという感覚がすごくありますね。あとは今年、通っていた学校に行くまでの道を歩くというロケもしました。僕は講演会なんかでも、駅から学校までの途中で漏らしたことが不登校と引きこもりのきっかけという話をよくしているのですが、その道の途中には体感45度ぐらいある坂がずっと続いているんですよ。
それが地獄で、ということを結構しゃべったり書いたりしていて、別に学校側から文句を言われたわけではないのですが、当時から時間が経っているからちょっと大げさに言っているかもしれないという不安があったんです。でもそのときにロケであらためてその坂を歩いてみたら、ちゃんと体感45度ぐらいありました。登り切るまでに何十分もかかる。すさまじい坂だと大げさに言っていたかなと思っていたけど、ちゃんと覚えていました(笑)。
ちなみに、関西に戻られた際に必ずといっていいほど召し上がるものなどはありますか?
いつも帰り際に551蓬莱の豚まんを買い損ねるというのはあります。新幹線で帰るときに毎回買って帰りたいなと思うのですが、人気だから並んでいるじゃないですか。新幹線の時間もそんなに余裕のない感じで取っているから、ここ5年ぐらい食べるきっかけを無くしているんですよね。

最後に、最近思わず「あんなぁ」と誰かに話したくなったエピソードを教えていただけますか?
あんなぁ、子供たちにはこのタイトル通り、そんなにキラキラ生きなくてもいい、夢なんて別に持たなくてもいいんだよということは伝えたいかなとは思いますね。もうなんか今は、大人が子供に職務質問かのように聞くじゃないですか。街を歩いていたら「ちょっと待ちなさい」と止められて、「君、夢は持っているか」「いや……すいません、ちょっと夢、家に置いてきました」みたいな。

そんなふうに夢や目標や抱負などを持っていない自分を気まずく思う状態が生まれるのは良くないなと思うので、そうじゃなくていいと少しでも思ってもらえたらうれしいです。
会話の端々から落ち着いた聡明さが伝わってきた山田ルイ53世さん。こんなオトンに育てられるお子さんたちはきっと笑いに敏感で、かつ自分に正直に生きる人へとスクスク成長していくのだろうなと感じさせられました。そうした山田ルイ53世さんの“キラキラじゃない、でもこれでいいんだと思える生き方”に触れられる本書を、ぜひ皆さんも手に取ってみてください。

<書籍情報>
『僕たちにはキラキラ生きる義務などない』
著者:山田ルイ53世
発売日:2026年1月9日(金)
定価:1,760円(税込)
写真/anna 文/松木智恵
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