

イタリアのヴィッラに魅せられて 時代とともに変化する館の輝き

ここ3年ほど、コンサートソムリエとしてオペラ取材でイタリアに行く機会があると、時間を作って集中的に訪ねたのが16世紀以降のヴィッラ(Villa)と庭である。これは当時の貴族や枢機卿(すうききょう)たちが風光明媚(めいび)な場所を選んで建てた館で、フィレンツェやローマ近郊を中心にイタリア各地に数多く存在している。
例えば、北イタリアのコモ湖畔にも多くのヴィッラがあるが、その代表的存在がカルロッタ荘だ。ご承知のように、この地は古くから製糸業で栄え、今でも高級シルクの生産で知られる地域だが、17世紀末にこのヴィッラを建てたのも絹織物で財を成した貴族だった。正門からすぐに湖の船に乗り込める絶好のロケーションが素晴らしい。
大植物園の趣の庭園
それから約100年後に、ヴィッラはナポレオンに重用された銀行家に買い取られ、建物の正面3階にバルコニーが作られた。ここからの眺めは絶景で、すぐ下に美しい玄関の噴水と花壇、さらにコモ湖と対岸の街が広がり、遠く山の稜線までを視界に収めることが出来る。19世紀初頭の彫刻や絵画も多数収集されており、現在は館内に展示されて邸宅美術館のような豪華さ。
そして1843年にプロイセンの貴族夫人がここを手に入れて、娘のシャルロッテ(イタリア語ではカルロッタ)へ結婚祝いとして与えた。それゆえ館は今もカルロッタ荘と呼ばれている。彼女の夫の公爵ゲオルクは植物好きで、このヴィッラの庭を充実させるのに情熱を傾けた。20世紀の初頭までに、花壇だけでなく果樹や深い森、日本の竹林まで採り入れた8ヘクタールに及ぶ大植物園の趣の庭園が出来上がったのである。
時代と共に変化
カルロッタ荘は、このように約300年かけて現在の形になった。絵画や彫刻の類は、作者が完成させたら基本的にそのままの形で保存され、鑑賞の対象となるが、ヴィッラや庭園は、オリジナルの形態が時代と共に変化していく妙も大切。むしろそれが一層の輝きを与えるとも言える。カルロッタ荘はその典型的な例と言えるだろう。随所に歴代所有者の好んだ趣味や芸術愛が色濃く反映されている。
これを徹底的に楽しむには現地に行き、誰にも気兼ねせずヴィッラ館内をゆっくりと巡り、時間を気にせず好きなだけ庭園を眺めること! さすれば時空を超えて館の主と会話をしているような気分になれる。その面白さとぜいたくの虜(とりこ)になってしまい、気づけば20もの館と庭を訪れて『イタリア 麗しの庭園と館をめぐる旅』というフォトエッセーまで著してしまった。だが、まだまだ行きたい場所がある…困った。イタリア病(やまい)膏肓(こうこう)に入る私である。
(コンサートソムリエ・東京藝術大学客員教授 朝岡聡)
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