暮らすように旅をする。ジョージア・トビリシ編(宮沢香奈)

2025.07.22 06:00
提供:繊研plus

3年振りにジョージアを訪れている。前回は取材がメインの短期滞在だったが、今回はベルリンのアパートメントの事情と自分の都合も重なり、7月から約3ヶ月の滞在を予定している。現在は、首都トビリシのジョージアファミリーが所持する屋敷のような大きな家をリノベーションしたアパートメントに滞在している。バケーションに来ているわけではないので、普通に仕事をして、自炊をして、ベルリンと変わらない日常生活を送っている。現地に暮らすように旅をするデジタルノマドと言えるかもしれない。

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ジョージアを選んだ理由はいろいろある。まず第一に、もう一度訪れたいと思っていた国であること。独自の製法で作られているジョージアワインを知ること、郷土料理、温泉、自然などなど、目的は多数。実はジョージアは、日本人はビザなしで1年間住むことが可能で、働くことも銀行口座を作ることも可能と優遇されている。そのため、近年では日本人の移住者が増えており、実際に起業している友人やノマドワーカーとして長期滞在している人たちもいる。現地で仕事を得て稼ぐことは容易ではないらしいが、スタートアップが盛んで、事業を始めやすい環境が揃っているという話もあり、実際はどうなのか、リサーチも兼ねていろんな人に話を聞いてみたいと思った。

ジョージアは、東ヨーロッパと西アジアの両方に区分され、首都トビリシは、旧ソ連時代の面影を強く残しながら、東欧、東南アジアの雰囲気が入り混じる。剥き出しの赤レンガに装飾された鉄格子のバルコニーが特徴的な古い建築や旧ソ連時代に建てられた”フルシチョフカ”と呼ばれる朽ちたコンクリートのアパートメントが立ち並び、廃墟のすぐ隣に現代的なモダン建築があったりする。


3年前に訪れた時は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったばかりで、戦争から逃れたロシア人とウクライナ人が一時的に避難しているといった印象が強かったが、現在はロシア人が圧倒的に多く、滞在先のアパートメントにもロシア人の男女2人がそれぞれ別の部屋に入居している。IT関係の仕事をしているという男性は、すでに2年以上住んでいるというが、何となく戦争の話は聞けず、気の利いたことも言えず、たわいもない会話しかできていない。

街の至るところに、ジョージアの国旗とブルー地に12個の黄色の星が円形に描かれた欧州連合の旗が掲示され、ウクライナの国旗を見かけることも。街で頻繁に起きているというデモにはまだ遭遇していないが、戦争反対のデモではなく、不正選挙やEU加盟交渉を2028年まで停止したジョージア政府への抗議として行われているという。ただし、反ロシア志向の動きの一部でもあるとのこと。

移住してきたロシア人が多いのは当然だが、アジア、西ヨーロッパ、インドやパキスタン、アフリカ、イスラムなど、多種多様な人種が入り混じり過ぎて、どこの国か区別が付かない。平日の夜7時ぐらいに地下鉄に乗ったら、ぎゅうぎゅうの満員電車に遭遇して驚いた。帰宅ラッシュ時間と重なってしまったせいだと思うが、それでもベルリンでは滅多に遭遇しない。ひとつの車両にいろんな人種が入り混じった満員電車に揺られながら、東京で暮らしていた頃の遠い記憶が蘇った。

異国の地であっても、やはり満員電車は不快で、地下鉄を利用する時間に気をつけようと思った。

トビリシの物価は3年前に比べたらかなり高騰しているが、それでもベルリンに比べたら全然安く、高級店に行かなければ、外食も気軽にできるのが嬉しい。スーパーは24時間営業しているところがほとんどで、品揃えも十分。治安が良く、ツーリストのために夜遅くまで営業している飲食店が多いことから、24時間営業でも需要があることと、人件費が安いため、あまりコストをかけずに長時間営業が可能とのこと。ドイツのように日曜日定休もないため、24時間365日営業していることになる。ジョージア人は働き者なのか? 

私の住むドイツ、ベルリンとは、当然ながら言語も通貨も文化も全く違う。しかし、慣れていない異国の地であっても居心地が良いと感じるのは、気候の良さやアジアの文化を随所に感じることができ、基本的に人が優しくて、親切だからかもしれない。グローバル化が進むベルリンは、常に何かがハプニングしていて刺激を与えてくれる。ローカルクラブが衰退しても新しいカルチャーが次々と生まれ、アートシーンの勢いを追い越すようにファッションシーンがおもしろくなってくる。それと比例して、安定した収入を得ないと暮らせない、ドイツ人相手に仕事をすることへのプレッシャーなどが押し寄せてくる。

”住めば都” ”隣の芝生は青い” そんな言葉が浮かんでくるが、まだ答えは見えてこない。

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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。

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