世界に広がった本わさびの未来 持続的供給策を探る

2024.08.06 12:00
提供:繊研plus

日本古来の香辛料として刺身やそばなどで親しまれている本わさび。世界的な和食ブームにより、北米や欧州、中国や東南アジアだけでなく豪州やアフリカ、中東にまで広がり日本の本わさびは、世界のスタンダードな香辛料になった。しかし、本わさびの原料事情はこれまでにないほどタイトな状況となりつつある。

(日本食糧新聞社 髙木義徳)

生産者不足が顕著

本わさびは沢わさびと畑わさびに大別される。沢わさびは渓流や湧き水を利用して栽培され、静岡県や長野県を主たる産地とする。畑わさびはその名の通り、畑で栽培される。一般的には沢わさびは大きな芋が収穫され、その芋は高価だ。料亭などですりおろすタイプはこれが多い。一方で畑わさびは主に茎や葉などが使用され、常温や冷蔵、冷凍などのチューブタイプとなるいわゆる加工わさびの原料となる場合が多い。

現在、特に原料状況が厳しいのが沢わさびだ。これまでも生産者の高齢化により、渓流の栽培地区では生産者不足が顕著になっていた。この状況にさらに加わっているのが、天候不順だ。近年は暖冬や多雨により、地下水や湧き水の温度が上昇。これまで安定した栽培をしていた畑で根腐れが起こるなど、過去の経験が通用しないのが現状だ。日本国内だけでなく世界的にも本わさびの需要が高まっているため、本わさびの需給バランスは過去にないほど乱れている。

メーカーが一役

これまで、本わさびの生産は生産者のノウハウに頼る部分が大きく、一子相伝的につながれてきた。特に種子の採取については、各生産者それぞれの代々の知恵があり門外不出とも言われてきた。生産者の高齢化による後継者不足や天候不順はこれまでの生産方式が限界にきていることを示した。現在は、加工わさびメーカーが生産者と共同で種子や苗開発に取り組み、高温や水温上昇に強い品種改良が行われている。メーカーで天候の変動に強い苗を育成し、生産者に供給する取り組みは双方にメリットを生み出している。

ただし、高温や多雨、水温上昇が今後も長期的に継続すると「畑わさびの栽培は産地を山岳部に移すなどして継続できるが、水が重要な沢わさびは将来的な安定した栽培に不安が残る」(長野県の加工わさびメーカー)など沢わさびの将来への懸念は近年多く聞かれる。国内トップの香辛料メーカー、エスビー食品が静岡でわさび田の復興を行うなどの取り組みは徐々に進んでいるが、世界的な認知が進み共通語となりつつある「WASABI」は、現在の国内の生産状況を改善できなければ、将来的には本わさびの多くは海外産となる日が訪れる可能性が否めない。

関連リンク

関連記事

  1. 坪由織物、パリ単独展で商談進む 環境配慮に美しい色
    坪由織物、パリ単独展で商談進む 環境配慮に美しい色
    繊研plus
  2. 豊島 韓国サンダル「ミュールボーイ」の独占輸入代理店契約
    豊島 韓国サンダル「ミュールボーイ」の独占輸入代理店契約
    繊研plus
  3. 【早割あり】23年秋冬 繊研レディストレンドセミナーのご案内
    【早割あり】23年秋冬 繊研レディストレンドセミナーのご案内
    繊研plus
  4. レリアン 新社長に石田俊哉氏
    レリアン 新社長に石田俊哉氏
    繊研plus
  5. 2023年秋冬メンズコレクションのトレンド10選【前編】
    2023年秋冬メンズコレクションのトレンド10選【前編】
    GQ
  6. ホープインターナショナルワークス、自己破産申請へ
    ホープインターナショナルワークス、自己破産申請へ
    繊研plus

「その他」カテゴリーの最新記事

  1. スケボー小野寺吟雲 無数のアザ&傷の両スネがエグかった!血がダラーッ 短パン&Tシャツで「もっとうまく」努力の証し
    スケボー小野寺吟雲 無数のアザ&傷の両スネがエグかった!血がダラーッ 短パン&Tシャツで「もっとうまく」努力の証し
    デイリースポーツ
  2. 大谷翔平 驚異の「45-45」ペースも勝利のための手段強調「貢献できる確率高くなる」
    大谷翔平 驚異の「45-45」ペースも勝利のための手段強調「貢献できる確率高くなる」
    デイリースポーツ
  3. 柔道女子金メダル・角田夏実が32歳の誕生日を報告「31歳最後の晩餐」は帰国便の機内食「しっかり食べれるってなんかいいなぁ」
    柔道女子金メダル・角田夏実が32歳の誕生日を報告「31歳最後の晩餐」は帰国便の機内食「しっかり食べれるってなんかいいなぁ」
    デイリースポーツ
  4. 【オート】森且行が今年17回目の準決進出
    【オート】森且行が今年17回目の準決進出
    デイリースポーツ
  5. 7周年興行を行う中森、Leon、谷のPURE-J3戦士が抱負「暑さを吹き飛ばす試合を提供する」
    7周年興行を行う中森、Leon、谷のPURE-J3戦士が抱負「暑さを吹き飛ばす試合を提供する」
    デイリースポーツ
  6. メーガン妃は「ビジネスウーマンであり慈善活動には向いていない」と王室専門家が指摘
    メーガン妃は「ビジネスウーマンであり慈善活動には向いていない」と王室専門家が指摘
    東スポWeb
  7. 【ボクシング】性別騒動ボクサーの〝危険性〟科学的データ明らかに「162%強いパンチ力」
    【ボクシング】性別騒動ボクサーの〝危険性〟科学的データ明らかに「162%強いパンチ力」
    東スポWeb
  8. バレー西田有志「よりゴリラになって進化して戻る」妻・古賀紗理那見守る中、激闘 号泣、そして代表休養宣言
    バレー西田有志「よりゴリラになって進化して戻る」妻・古賀紗理那見守る中、激闘 号泣、そして代表休養宣言
    デイリースポーツ
  9. 大谷翔平も感動「素晴らしいなと思う瞬間だった」 困難乗り越えてフリーマンが戦列復帰 観客総立ちで拍手と声援 敵軍選手も粋な計らい
    大谷翔平も感動「素晴らしいなと思う瞬間だった」 困難乗り越えてフリーマンが戦列復帰 観客総立ちで拍手と声援 敵軍選手も粋な計らい
    デイリースポーツ

あなたにおすすめの記事