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《20周年を迎えた台東デザイナーズビレッジ》①歩みと役割 “勝ちパターン”が変化
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東京の台東区にある創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」(デザビレ)が今春、20周年を迎えた。ファッション分野のクリエイター育成が目的のインキュベーション施設としては先駆的で今でも希少な存在だ。これまでに約120組の卒業生を業界に輩出するとともに、地域や行政とも連携し、物作りをアピールするイベントを続けている。今回、設立時からインキュベーションマネージャーとして若い入居者を指導してきた鈴木淳村長に同施設の歩みや役割を聞いた。
(大竹清臣)
起業家・創業支援といっても、ITなど成長産業を対象にしているものがほとんど。成熟したファッション産業で国内の物作りが縮小してきた危機感から生まれたのが同施設だ。特に台東区のように靴やかばん、ジュエリーなどファッション雑貨産業の企業が集積し、物作りを続けてきた職人の街で、次世代を担うクリエイターを育成する施設は、極めてまれだ。
にぎわい創出に貢献
設立1期目に集まったのはハンドメイド作家が大半を占め、ビジネスを志向する若者は少なかった。メディアへの訴求をはじめ、地域とのネットワーク作り、指導の仕組みなどを確立できたため、2期目以降は当初想定した入居者に入れ替わった。90人の応募に対し、15組が入居した。4期目以降は、業界からの評判も上々で順調に運営できるようになったという。卒業生のうち40組が台東区内でアトリエやショップを構えており、新たな街のにぎわい創出に貢献している。最近の入居者は、地域産業である革製品の分野を目指す人は減少している。アパレル関連は微増傾向で、ジュエリー・アクセサリーだけが大幅に増加している。ただし、競争も激しいため、成功した人はほんの一握りに限られる。入居するクリエイターの9割以上が女性だ。
鈴木村長は同施設のメリットを「①ハード②ソフト③ネットワーク④チャンス」と強調する。ハード面では廃校になった小学校を使っているので、格安でアトリエとして個室使用が可能なこと。ソフト面では鈴木村長によるブランドのコンセプト作りからプロモーション手法、行政の助成金の活用方法までアドバイスが得られる。また産地ツアーや工場見学を実施することで若手クリエイターと生産現場をつなげることができる。それ以外にも卒業生や同じ入居者同士(基本3年間)の人脈が広がる。さらには百貨店からのイベント参加要請をはじめ、メディアの取材など認知度を高める機会も多い。通常の指導のほか、クリエイター起業塾(年2回)も実施している。
多様化でチャンスに
20年前と小さなブランドの勝ちパターンも変わったため、時代に合わせて鈴木村長も指導方法を変えてきたという。かつては、良い商品を作り、合同展に出展して有力な卸先と取引し、事業を拡大することを目指していた。今はクリエイター自身がSNSで集客し、受注会や販売会を開くDtoC(消費者直販)型が主流になった。「クリエイター個人の作家性、本人の魅力をしっかり伝えることが求められている」と鈴木村長。
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消費者の志向が多様化・細分化する今こそ、個人のクリエイターによる小さなブランドの存在感が増している。拡大するだけが成功のゴールではないはず。ニッチでも熱狂的なファンに支持され、事業を長く続けられることが、これからの成功の形かもしれない。いずれにしてもファッション業界全体を活性化するためには、若い起業家を支援する仕組み作りが欠かせないだろう。
◇
次回からは卒業生や現入居者の現状と今後のビジョンについて紹介する。
【連載】《20周年を迎えた台東デザイナーズビレッジ》
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