“一緒に創る”からこそ、楽しみたい。味の素(株)で「業界初の取り組み」を実現させた女性の働き方

“一緒に創る”からこそ、楽しみたい。味の素(株)で「業界初の取り組み」を実現させた女性の働き方

2024.05.09 11:00

取材・文:ミクニシオリ

撮影:大嶋千尋

編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部

「個の時代」が叫ばれる今、誰かと一緒に、会社で働く意味ってなんだろう。今持っているスキルを活かせば、自分1人でも働けるかもしれない。そう思うと、企業の中で替えのきく人材として働くのに、疑問を感じる日もあるかもしれません。

「高め合えるからこそ、人と一緒に働くのが楽しいんです」そう話してくれたのは、味の素株式会社のコミュニケーションデザイン部で働く石原由麻さん。食品業界では珍しい、インフルエンサーによるアンバサダーチームを社内キャスティングで立ち上げた彼女ですが、薬学部を卒業してアパレル会社に就職し、味の素(株)に転職したという異色の経歴を持つ人物でもあります。

自分が学んできたことに縛られず、自身の興味関心ややりたい仕事に向かって、やれることは全部やってきたと語る彼女。その熱量の高さの根源には、彼女が働く上で大切にしている“ある考え”がありました。

■薬学部、アパレル会社、食品メーカー。異色の経歴の根幹は「興味関心への熱量」

石原さんは薬学部を卒業して、1社目はアパレル企業に就職されたんですよね。ユニークなご経歴ですが、どうして薬剤師への道には進まなかったのですか?

両親が2人とも医療関係者だったこともあり、自分もその道を志したのですが……在学中から就職活動にかけてマーケティングに興味を持つようになり、若い内から色々と挑戦させてくれる会社に就職しました。最初は店舗に配属されたので、キャリアのスタートは営業からのスタートでしたが、見据える先はマーケティング部署への異動でした。店長時代は今振り返ってもとても大変だったのですが、営業の経験を積むことができた期間でもあったので、自分のキャリアとしてやらせてもらえて良かったなと思いますね。与えられた仕事をちゃんとこなして、結果を残すことの大切さを教えてもらいました。

真にやりたい仕事ではなくとも、与えられた居場所で結果を出す……かっこいいですね。希望部署に異動するために、努力されたことはありますか?

営業時代は売上や在庫管理、マネジメントなどマルチタスクをこなしながら結果を出し、3年目には希望部署へ移ることができました。まずは求められているだけの結果を出すことは大切だったと思いますし、周囲に「マーケティングに行きたい」と公言していたのも良かったんだと思います。

私の場合は、希望部署の方にアポイントを取って業務に必要なスキルを聞いたり、面談で上司に相談したりしていたこともあり、たまたま先に異動した元上司に推薦してもらうことができ、3年目には希望部署に異動することができました。

異動先ではどんなお仕事をしていましたか?

担当商品のコミュニケーション戦略を策定して、企画を実行していくのが主な業務でしたね。インフルエンサーさんとの協業やイベント、デジタルプロモーションなど、幅広く関わらせていただき、マーケティングの基礎をしっかり学ぶことができました。

前職でも自身のやりたい仕事を実現されていたと思うのですが、転職のきっかけはなんでしたか?

アパレル会社で働くメンバーは、ファッションや洋服が大好きな方がほとんどです。私も人並みに服に興味はありましたが、周囲のメンバーと比べると熱量に差が出てしまうことが悔しかったんです。ファッションのことは必死に勉強しましたが、やっぱり自分が自信を持っておすすめできるもの、心から好きだと思えるものを世に広めたくて、大好きな「食」を展開する企業への転職を決意したんです。

■「素直さ」を強みに、社内外に想いを伝え実現した新しい試み」

現在のお仕事内容について教えてください。

現在はコミュニケーションデザイン部で、担当商品のPRとしてコミュニケーション戦略を考えつつ、会社としては今まで弱かった、インフルエンサーさんとの共創によるPR戦略を企画・実行したりしています。コミュニケーションの仕事はゼロベースから始まるので、会議に参加したり、データを分析して、それをもとに社内で今後のプランをディスカッションしていることが多いです。

味の素(株)でのお仕事の中で最も大変だったことはなんですか?

自身の発案で、インフルエンサーさんとのアンバサダープログラム「あじふれんず」をイチから立ち上げたことですね。去年からインフルエンサーさん向けの試食会を行っているのですが、これは食品業界としてはかなり新しい試みなんです。最初は、社内で理解を得るのが大変でした。

「なぜインフルエンサーさんとの共創なのか」「なぜリアルイベントを行うのか」。全てを合理的に説明できなければなりませんし、チーム内でも何度も議論を重ねて、稟議を通して企画の実行にこぎつけました。小規模でイベントを実施しながら少しずつ実績を積み重ねて、実績は社内でも認めていただき、2023年度は社内でチャレンジングな活躍をしたメンバーに送られる「スイング・ザ・バット賞」というアワードで年間MVP賞をいただくことができたんです。

新しいことを企画して実行するのって、そんなにも大変なんですね……。

味の素(株)は良くも悪くも古き良き会社ですが、そんな社内風土をいい意味で打破するべく創設されたのが「スイング・ザ・バット賞」なんです。成功例が生まれたことで、インフルエンサーさんとの共創が社内でさらに活性化していくといいなと思いますし、業界内でもこのような取り組みが増えていったら嬉しいですね。

せっかく頑張って通した企画が成功した途端、誰かに真似されるのはイヤじゃないですか?

味の素(株)はアミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」という志(パーパス)の実現を目指している会社です。だからこそ、味の素(株)に関わるみなさんとは常にWin-Winの関係であり続けたいんです。インフルエンサーさんとの関わりの中でも、そこは常に意識していて「味の素(株)と一緒に仕事して良かった」と思っていただけるよう、色々と工夫しています。

新商品を知っていただく、新商品試食会もただインフルエンサーの皆さんに来ていただくだけではなく、どうやったら楽しんでもらえるか、撮影したくなるのかに重点を置いて企画しています。参加してくださったインフルエンサーさんからも「来て良かった」と言ってもらえることが多く、モチベーションになっています。

なるほど……試食会の雰囲気が気になってきました。

前回は「食のワンダーランド」をテーマに、味の素グループのグローバルアンバサダーでもある「アジパンダ」を入口に配置しつつ、ディズニーランドに行った時のようなワクワク感がある空間づくりを目指しました。

参加者の皆さんには新商品の試食をしてもらうのですが、ただ食べてもらうだけでは飽きてしまうと思うので、麻婆豆腐をクイズ形式で試食してもらったり、ガチャガチャブースを作ったりと、イベントを楽しんでもらう工夫を盛り込みました。実はキャスティングも社内で行っているので、インフルエンサーさんも私たちと一緒に共創をしていると思っていただけるよう、参加型のイベントを多く用意しました。

キャスティングまで自社で行っているとは思いませんでした。

私たちが直接ご連絡を取ることで、インフルエンサーさんとも共に働くパートナーとして認識していただくことができました。インフルエンサーの方々は、どのような発信をしたらフォロワーさんに楽しんでもらえるかを真剣に考えて、プライドを持って発信されています。
我々としても、当社のモノづくりに対する想いや、インフルエンサーさんと共創したい理由についても、熱い想いをお伝えすることを大切にしています。

社内メンバーに対しても、インフルエンサーさんに対しても、変わらず誠実ですね。石原さんのような方が前に立つからこそ、今まで関係値がなかったインフルエンサーさんも、味の素(株)や企画を信頼できるのかもしれませんね。

素直であるというのは、自分の一つの強みだとは感じます。と言っても、素直にしかできないだけなのですが……。想いがあれば伝わるように語りたいし、分からない時は分からないと伝える。嘘をつかないのは、一緒に働く方々に信用してもらうために、とても大切なことだと思います。

■キャリアの軸は「互いにハッピーになれる関係」

石原さんの仕事への熱い思いが伝わってきました。そのモチベーションは、どこから湧いてくるんですか?

今は、あじふれんず(アンバサダー)になってくださったインフルエンサーの皆さんに「味の素(株)が好きになった」と言っていただけることが一番うれしいですね。それに、社内のメンバーたちも真面目で優しい方ばかりなので、会議中も同じくらい強い情熱を持ってぶつかってきてくれるんです。時に上司と熱い議論を交わすこともあるのですが(笑)、役職に関係なく、自分の思ったことを発言できる風通しの良さもあります。

働く場所も一緒に働くメンバーも、どちらも大好きだから、私にとって仕事は趣味みたいなものです。担当する新商品も、自分にとっても便利で美味しいなものばかりなので、PRするのも単純に楽しいです。特に最近の夜ご飯はPRを担当している「パスタキューブ™」に頼りっぱなしです。

今後のキャリアへの展望について教えてください。

人生を振り返ってみると、1人でできることって全然ないと思っています。私は不完全な人間だけど、色々な人の協力があってこそ生きているし、仕事も同じだと思うんです。インフルエンサーさんや、一緒に働くメンバーが、私と共創したことで自身の生活が豊かになったり、人生が楽しくなったと思ったりしてもらえるように働き続けたいと思っています。「やらない後悔よりもやって後悔する」のがモットーなので、いろいろなことにチャレンジし続けながら、自分や周囲をハッピーにしていきたいです。

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