【ファッションとサステイナビリティー】プラスチックとどう付き合う? ファッション企業ができること

2022.06.16 05:30
提供:繊研plus

この数年、海洋プラスチックごみ問題がG7、G20など主要国の首脳レベルで議論される重要な議題になっている。3月のUNEA5.2(第5回国連環境総会の再開セッション=ケニア)では、プラスチックに関する新しい国際枠組みについて、政府間交渉委員会を設立することが決議された。年内に交渉が始まり24年内の妥結を目指す。「環境関連の国際条約で妥結まで2年は極めて短い。プラスチックの問題がそれほど喫緊の課題だと世界で認識されている」(経済産業省)という。こうした国際動向に連動するように、産業界でもプラスチックの3R(リデュース、リユース、リサイクル)とリニューアブル(再生プラスチックや紙などの再生可能資源の利用)の取り組みが活発になってきた。各社の方針や具体的な施策を紹介する。

【目次】

ファーストリテイリング良品計画イトーヨーカ堂レッグウェア業界


ファーストリテイリング ショッパーから包材まで使用量削減、再利用

ファーストリテイリングは、ユニクロの「究極の普段着=ライフウェア」のコンセプトに沿って、品質やデザイン、価格だけでなく、環境、人、社会の観点からも「良い服」の定義を満たす服づくりに取り組んでいる。その一環として、19年7月に不要な使い捨てプラスチックを撤廃するグループ方針を策定し、ショッピングバッグと商品の包装材を皮切りに、プラスチックの利用削減、代替素材の利用、リサイクルに乗り出した。

具体的にはまず、19年9月からグループ全体でプラスチック製ショッピングバッグの環境配慮型紙製への段階的切り替えに着手し、オリジナルエコバッグの販売も開始。20年9月からは国内のユニクロ、ジーユーの店舗で紙製ショッピングバッグを有料化し、各国でも順次、有料化を実施した。

20年9月から国内のユニクロ、ジーユーの店舗で環境配慮型紙製ショッピングバッグを有料化し、その後順次各国市場での有料化も実施した

19年からジーユーで、レジで回収した商品用ハンガーを工場に返送し、再利用する取り組みも開始した。20年からはユニクロとジーユーで商品輸送時の梱包(こんぽう)材をリサイクルしやすいよう、単一素材への切り替えを開始した。21年からは梱包材のリサイクルに向け、店舗での分別・回収、リサイクル処理の実証実験を一部のエリアで開始した。

紙製バッグの有料化後は、7割の客がショッピングバッグの利用を辞退するようになり、紙製バッグの使用量も減った。また、プラスチックの使用量削減についても店頭で客の手に渡る使い捨てプラスチックのうち、ショッピングバッグと商品パッケージの85%に相当する7800トン分の廃止と切り替えを当面の目標に設定していたが、これは20年末で達成した。

有料化して以降、客の7割がショッピングバッグ利用を辞退するようになった

現在は、商品パッケージや輸送用の段ボール・ビニール袋、ハンガーなど商品の輸送過程で使う資材全般の削減・切り替え・再利用・リサイクルの取り組みも強化しており、早期に廃棄物ゼロ実現を目指している。

同社は、環境への配慮を自社のサステナビリティー(持続可能性)活動の重点領域の一つとしており、無駄をなくし、地球環境への影響を最小限にする商売の仕組み作りを推進する考えだ。この考えに沿って、今後は不要な使い捨てプラスチック削減だけでなく、資源の使用量削減やリユース・リサイクルの促進にも取り組み、循環経済の実現と資源効率の最大化を目指す。

良品計画の包材、資材 30年に再利用100%へ リサイクル前提の製品設

良品計画の無印良品は、30年までに、包材や資材の脱プラスチックと、リサイクルを前提とした製品設計、回収したプラスチック製品の再利用を100%にする目標を掲げる。19年春夏には靴下やストールの陳列用フックをプラスチック製から再生紙製に変更、20年2月には「カフェ&ミール・ムジ」で提供するストローを紙製から竹繊維を使ったものに変更した。

19年からは陳列用フックを再生紙製に切り替えるなど脱プラを推進している

21年4月には飲料パッケージもペットボトルからアルミ缶に切り替えた。商品に付けるタグを留めるピンも21年秋冬から再生紙を含むFSC(森林管理協議会)認証の紙製タグピンに順次変更。シャンプーやボディーソープなどは紙パッケージの大容量リフィルで販売している。

化粧水ボトル用のプラスチックも強度や品質保持に必要な樹脂量を算出し、従来品から20%削減した。今後他のボトルでも省プラスチック化を進める。20年7月には店内に設置した給水機での無料給水サービスも開始。同じ時期に化粧水や乳液などのプラスチック製ボトルの店頭回収、リサイクルにも着手した。

レジ袋はプラスチック製を廃止し、紙製に切り替えた。国内店舗ではレジ袋を辞退した客に会員用アプリにマイル(ポイント)も付与する。生活雑貨の大型商品の持ち帰り用には再生ポリプロピレンを使ったデポジット制のシェアバッグを3サイズ用意している。

目標の進捗(しんちょく)は、包材や資材の脱プラスチックは、衣服・雑貨で脱プラスチック化したアイテムの比率(衛生・品質安全上プラスチックが必要な商品は除く)が21年8月末時点で14%、生活雑貨13.2%。削減したプラスチックの総重量は衣服・雑貨で52トン、食品で213トンに上る。リサイクルを前提として設計されたアイテム数の比率(衛生・品質安全上プラスチックが必要な商品は除く)は、生活雑貨が28.4%。回収したプラスチックの製品総重量は729キロで、再利用したプラスチックの総重量は自社製品以外への使用を含めて729キロ。

創業以来、素材の選択、工程の点検、包装の簡略化の3点を守りながら物作りをしており、環境や生産者に配慮した素材選定、全工程で無駄を省き、必要な物を必要な形での提供を目指している。プラスチック削減、リユース、リサイクルも「資源循環型・自然共生型の持続可能な社会の実現につながるものとして取り組んでおり、その実現が企業価値向上にもつながると考えている」という。

ヨーカ堂のドレスシャツ 付属資材を紙に ペットボトル20万本分削減

イトーヨーカ堂はPB「セブンプレミアムライフスタイル」で刷新した〝超形態安定シャツ〟を3月8日に発売した。付属資材をファイバー紙に切り替えており、年間でペットボトル20万本分のプラスチックの削減を見込む。100店で税込み3289円で販売するが、消費者に受け入れられており、発売から2カ月で計画を3割上回る3万枚を販売している。

店頭で紙への置き換えをアピール

同ビジネスシャツは、15年の発売。綿100%の肌触りと高い形態安定性でヨーカ堂の衣料品売り場の中でも人気商品として定着しており、累計で330万枚を販売している。今回の刷新では、吸汗速乾、部屋干しにも対応した抗菌防臭性といった新たな機能を加えるとともに、パッケージを除いた付属資材に紙を採用することで環境保全の意識を高める消費者に応えることにした。パッケージ内で襟の形状を保つためのプラスチック製だった資材などを置き換えるものだが、いかに配送に耐える強度を確保するか、実験を繰り返して実装にこぎ着けたという。

同社はこの間、環境配慮型の商品開発に力を注いでいる。セブン&アイグループの環境宣言「グリーンチャレンジ2050」に基づいたもので、ビジネスシャツの取り組みは宣言で掲げるプラスチック対策につながる。このほかにもグループ店舗で回収したペットボトルを再生した原料からインナーを作り、ヨーカ堂店頭で回収した衣料品をソックスにするなどがあり、衣料品の開発商品では環境配慮を盛り込んだものが過半を占めるに至っている。差別化ポイントとして、今後も広げる構えだ。

6月の環境月間では1~19日に衣料品、傘、タオル、ステンレスボトル、羽毛布団の買い替えキャンペーンを実施するとともに、多様な環境配慮型商品をアピールしている。

レッグウェア業界 副資材や原料の切り替え進む コストアップが課題

レッグウェア業界では各社がフックやパッケージなど副資材の原料変更や、ストッキングや靴下にリサイクル素材を使うなど、プラスチックの使用削減に取り組んでいる。ユーザーの環境意識の高まりにこたえながら、はき心地や利便性を損なわないような工夫がなされている。

福助はプラスチックフックを25年までに100%紙製に移行を掲げる。ほかにも、3足組みストッキング「デイリー満足」は1足ごとに台紙・中台紙・袋で包装していたものを、簡易的な箱型包装に変えて約7割の資材を削減。ストッキング自体もナイロンの一部をリサイクルナイロンに変更した。25年までにリサイクルナイロンの使用商品を、同社のストッキング全体の8割にする目標を掲げる。また、「満足」とデイリー満足のストッキングは20年春夏からコンパクトパックを採用し、プラスチックの使用量を削減。22年春夏からは紙製のパックも採用し、さらに使用量を削減する。

福助は「満足」「デイリー満足」でコンパクトパックを採用し、プラスチック使用量の削減を進めている

直営店の買い物袋は石灰石を主原料とする「ライメックス」製に順次、変更している。今年中に完全移行する計画だ。

課題はコストアップのほか、靴下を3足まとめるバノックピンは代用がきかず、現状はプラスチックから移行が難しい。

アツギはオリジナルブランドを中心に、パッケージのフックや袋を、焼却時のCO2排出量が少ない「グリーンナノCO2オフ」やバイオマスプラスチックに切り替えてきた。買い物袋はライメックス製を採用。靴下「エコワークフィット」はペットボトルをリサイクルした原料を素材の一部に使用し、包装資材のプラスチックフックをファイバー製の紙フックに変更、「あしづつみ」でもフックを紙製に切り替えた。コストアップの課題はあるものの、全社的な環境への目標の策定も視野に、さらに環境への配慮を進めていく。

(繊研新聞本紙22年6月16日付)

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