「美しい国」より

永遠の美しさの裏には人魚を食べる習慣が…美しさに振り回される人々に襲い掛かる人魚の呪いに「美しくて切ない、残酷なお話だ…」の声【作者インタビュー】

2025.02.12 18:30
「美しい国」より

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、星海ゆずこさんがX(旧Twitter)に投稿した『美しい国』をピックアップ。

10月6日にX(旧Twitter)へ本作が投稿されたところ大きな反響を呼び、多くの「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、作者の星海ゆずこさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。

美しいとは何?

あるとことに美しい国があった。その国の生き物はどんなに老いても姿は美しく若いまま。寿命が尽きるまで美しいのだ。これにはある風習が関係していた。人魚を食べるのだ。ルキは18歳になるのが待ちどうしかった。18歳になると人魚の肉を食べることが解禁されるからだ。

ルキは国境の向こう側にいる人間を見たことがあった。本に書いてある通り、しわしわだった。人魚を巡って戦争が起きても老いないこの国は負けるわけがない。「この国より美しくて自由な国ってあるのだろうか」とルキがぼやいていると「あるよ」という声が。そこには魔法使いがいた。

ルキは魔法使いに人魚を食べないのかと尋ねた。人魚は食べないと答えた。「老いるのもステキで、悪くないけど!」と。生き物はいずれしわしわで弱くなってしまう。しかしそれは、心に刻まれた物語と共にしわしわになるのだ。魔法使いは言う。「あなたの国は人魚に呪われてしまっているのね」

この言葉にルキはがっかりした。そう考えながら釣りをしていると大きな獲物がかかった。打ちあがったのは人魚だった。この人魚を家で育てることにした。この人魚、喋るのだ。ルキが知っていた人魚は喋らない。普段人が食べていた人魚は養殖だったため喋らないのだという。他にも人魚は色々なことを喋ってくれた。いつしか2人の間には友情が芽生えていた。

ある日、ルキは喧嘩をして帰ってきた。食べ物である人魚を友達と言うのが変だと言われたからだ。人魚を育て始めてから、ルキは人魚を食用としては見れないようになっていたのだ。その後、ルキの家族はお金の関係で人魚が食べれなくなっていた。3日間人魚を食べなかっただけでお父さんとお母さんの身体には変化が。お父さんとお母さんは焦りを感じていた。

ある日勘が働いたルキは学校の授業中に恐怖を感じ、急いで家に帰った。するとそこには、ルキが飼っていた人魚を食べようとするお父さんとお母さんの姿があった。ルキは人魚をかばった。その時、人魚を切ろうとする包丁がルキに当たってしまった。

弱っているルキ。そんなルキに語りかける。「ワタシが人魚に生まれ、756年もながく生き続けられたのはルキお前と出会うためだったのだと!」この国の人々、人魚を食べる人も食べない人も人魚に呪われていた。果たして人魚に隠された秘密とは何なのか。

人魚がいた国の人々や、人魚とルキとの絆を描いた本作。ネット上では「なんて美しいお話なのだろう」「めっちゃ引き込まれる」「美しくて切ない、残酷なお話だ…」と多くの声が寄せられている。

「小さい頃に読んだ大切な絵本の存在のように、静かに寄り添って問いかけてくれるような作品を目指している」作者・星海ゆずこさんの語る創作の裏側

――『美しい国』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

近年美容にこだわりを持つ国の文化が入り交流が盛んになったり、SNSが大きく生活の一部へとなった事を受けてからか、人間たちの外見への美的なこだわりや固定観念が強くなり、人間社会で生きる中で美容整形や歯科矯正等の広告がどんどん増えて外見を「美しく」変えて整えるような事が当たり前になったな、と感じた事が「美しい国」への執筆の大きなきっかけです。

花が土の中から少しずつ芽吹いてやがて華やかな花弁を身につけ、徐々に色とみずみずしさを失って次の生き物の命へと繋ぐ大切な種を残し枯れて土に還っていく様に、生き物は当たり前にその身を老化させていきます。自然なことです。しかし、ドラッグストアを少し通るだけでもすぐに視界に入ると思うのですが、シワを消すやらマイナス何歳肌やらと、まるで老いる事を「治さなくてはいけない良くない事」であるかのように扱われている事に、大きな悲しみや不自然さを人間たちに感じ…心の底から湧き上がったものをペンに乗せこの物語は完成いたしました。

――『美しい国』の中で気に入っているシーンがありましたら、理由と共にお教えください。

どのシーンもお気に入りですが、人魚のララシュバルツが、自分を庇い命からがら海まで運んで死んだ人間ルキに向かって「お前がいなくては、海になんの価値もないのに」と、本来生息していた大切な故郷の海を背に言葉をこぼすシーンが気に入っています!

お互いが出会っていなければ変わることは無かっただろう、人間ルキの価値観の変化と、人魚ララの価値観の変化が詰め込まれた素敵な1ページです。

――星海ゆずこさんの作画は特徴的で、多くの読者が魅了されています。描くうえで意識していることや、こだわりがありましたらお教えください。

元々絵本作家を目指していた経緯があってか、どこかふんわりした線だったりフルカラーで本文を作成する癖が引き継がれて今では個性の一部になっていると思います。

自身の他の物語の旅をお楽しみ頂いた事のある方々にはピンときて頂けると思うのですが…私の執筆する作品は何かしらの社会問題や命についてのテーマが組み込まれているので…重いのです!けれども作品を通し伝えたいこの気持ちの数々は、責めたり攻撃したり重い感情からくるものではありません。そっと読者様の価値観や世界観の中に、まるで小さい頃に読んだ大切な絵本の存在のように、静かに寄り添って問いかけてくれるような作品を目指しているので、作品に込めている感情を伝えられるように優しい印象を感じられる作風や作画から外れないよう気を付けている部分がこだわりと言えるかもしれません。

――星海ゆずこさんの考える「魔法」の魅力をお教えください。

「魔法」といえば、杖を一振りして、特別な呪文。空を飛んだり人生を変えてしまうような奇跡を起こしたり…そんなキラキラとした非現実的で特別な存在が多くの人々の頭には浮かぶと思います。

しかし私は魔法は非現実的ではないしもっと身近にあるものだと思っています。例えば大好きな美味しいものを口に入れて舌で味わった瞬間の全身が喜んで心が踊る瞬間、私はまるで魔法にかけられたようだな!と感じるのです。私が愛する魔法は心を動かされた瞬間に感じる目に見えない大きな輝きです。魔法は空想の世界のファンタジーではありません。耳をすませ目を凝らしてみると、いつも自分のそばに存在します。

自身の作品の世界の旅の終わりに、皆様の心にも魔法が届いていますように。

――星海ゆずこさんの今後の展望や目標をお教えください。

現在もっと様々な目線で世界を見たり命について学ぶために勉強や旅に時間を費やしているため活動を縮小しのんびりなペースで執筆を続けているのですが、機会をいただけたらまたご出版いただけたら嬉しいなと思っていることや、発売中の著書【MAGICA】がフランス語でご出版頂いた際に、たとえ言語ができなくてもその場で生まれ住んでいなくても自身の込めた魔法は海を超えて届ける事が可能なんだと大きな衝撃を受けた事から、もっと様々な価値観を持ち様々な生き方をしている方々の元へ、海を超えて作品を届けていきたいと願っているビジョンが一番の展望と目標です!

のんびりペースの執筆ではございますが、一生執筆し続けますので踊るように魔法と向き合い続けていきたいです。

記事にご掲載いただきました「美しい国」も収録されております【MAGICA】1~2巻が大和書房様より発売中です!全国の書店・ネットショップにてお手にとっていただけます。是非物語の世界に迷い込んで頂けたら嬉しいです。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。

ここまで読んでくださった方、そしていつも物語の世界の旅を楽しんで下さっている方、ありがとうございます!皆様が素敵に魔法を受け取って下さるお陰で執筆を続ける事が出来ています。心から感謝申し上げます。

生きていると様々な時間に出会う事になる事でしょう。それはきっと貴方の心を太陽のように照らし大きな祝福を運ぶ時もあれば、光の届かない海の底で小さくなり静かに涙する様な時間もあると思います。

私は大きな光は持ち得ません。貴方の丸まった背を支えるため駆けつける事も難しいです。けれど作品を通してなら、夜道を照らす静かな月の光のような存在にはなれると思うのです。魔法使い・星海ゆずこと魔法の世界を、そっとお見守り頂けたら幸いです。

貴方の歩む道へ魔法のような時間が溢れますように。良い夜を! 

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