阿部顕嵐、初のプロデューサー業に意気込み「観た人の日常に変化を起こすような作品を創っていけたら」
2024年11~12月、東京・大阪にて上演される舞台・東洋空想世界(オリエンタルファンタジー)「blue egoist」で、主演の阿部顕嵐が自身初のプロデュースを務める。ドラマや舞台など幅広いフィールドで活躍する阿部だが、グループでのセルフプロデュース経験を活かし、今後は制作段階からより一層作品に関わっていきたい想いがあるという。そんな阿部の想いや今後の展望について、また謎めいたビジュアルが話題を呼んでいる「blue egoist」について語ってもらった。
初のプロデューサー業は「所属グループでの経験が活きている」
──今作で阿部さんは初のプロデュースを務めます。プロデューサーに挑戦しようと思ったのはどうしてだったのでしょうか?
巡り合わせではあるんですけど、「プロデューサーをやってみないか?」とお誘いをいただいて。もともと興味もあったんです。まだ先、40歳以降かなとは思っていましたけど。だから、お話をいただいたのでやってみようかなと。あと、僕自身これから舞台の出演が減っていくと思うので、その前にやっておくのも良いかなと思って。タイミングも良かったです。
──プロデューサー業はいかがですか?
正直、今までやってきたことと変わらないというか。所属グループ(7ORDER)もセルフプロデュースでやってきたので、その経験が活きているなと今になって思います。今回、ビジュアルのアートワークや衣装、音楽、MVなど、全部に僕の手が入っています。ちゃんとプロデューサーしてます(笑)。
──これまで様々な舞台作品に出演されてきましたが、プロデュース作品となると、作品に対する気持ちもまた変わりますか?
そうですね。これまでも自分が関わる作品では意見を言ってきたので、プロデューサーとまではいかなくてもある程度自分の血が入っているけど、プロデューサーとして自分の名前が出るということは、「阿部顕嵐がやりたかったことってこんな感じなんだ」と思われるということ。そこに対して責任を持って、ちゃんといいものを提供したい、妥協したくないなという気持ちは強くあります。
──そんな「blue egoist」、あらすじは非公開ということですが、どのような作品になりそうでしょうか?
ある意味、期待を裏切る作品になっていると思います。今後僕らじゃないキャストでの上演や海外での上演もできればと思っているので、そういうことも見据えた作品になっています。「東洋空想世界(オリエンタルファンタジー)」と銘打っていることからもわかる通り、日本やアジアの文化を取り入れたものになっています。
──キャスト6名による主題歌パフォーマンス映像も公開されていますが、歌ったり踊ったりという楽曲パフォーマンスも作品のポイントのひとつに?
はい、それは大きなポイントです。単純に、歌って踊るパフォーマンスというのは見ていて楽しいですし、何よりこのキャストなので、パフォーマンスも含めて“美しくてカッコいい6人”というのは1つの大きなテーマです。
──プロデューサーとして、この作品において統一していることや、意識していることはありますか?
“美しくてカッコいい”、“スタイリッシュ”というのは統一しています。このビジュアルだけで「観に行きたいな」と思ってもらえるようなものを作ろうと頑張っています。
今回の共演者陣の印象は?
──共演者の印象についても聞かせてください。今回の出演者は阿部さんのほか、七海ひろきさん、立石俊樹さん、福澤 侑さん、高橋怜也さん、後藤 大さんの合計6名です。
七海さんと俊くん(立石)は初めましてなのですが、お二人ともとても技術のある方なので、一緒にできて光栄です。
──七海さんにはどのような印象がありますか?
俊くんにも共通して思っていることですが、すごく華のある方だと思います。それでいて、裏では全然着飾っていない。元宝塚歌劇団ということで、勝手に常にぴしっとしているイメージを持っていたんです。例えば、家でも背筋をピンと伸ばして座っているようなイメージがあったんですが、「家でソファーに座るとき、背もたれ使ってないですよね?」ってご本人に聞いたら「いや、めちゃめちゃ使いますよ」って言われて(笑)。すごくラフに話してくださる方で安心しました。
──では立石さんはいかがですか?
第一印象として「顔がカッコいい」「スタイルがとてもいい」。それから、歌がとてもうまい。一緒に歌いたくないくらいうまいです(笑)。それと、すごく器用な方だなというのはステージを観ていても、話をしていても思います。
──共演経験のある、福澤 侑さん、高橋怜也さん、後藤 大さんについても聞かせてください。
侑くんはダンスを踊らせたらピカイチ。僕がこれまで見てきた中でも、侑くんほど踊りで空間を支配する力がある人はほかにいないんじゃないかと思うくらい。ちょっと狂気的なんですよね。それがすごく好きです。怜也くんも歌がめっちゃうまい。舞台「桃源暗鬼」で一緒だったんですが、歌がなかったので「なんで歌わないの?」って思ったくらい。ダンスも、経験がないと言っていたけど、一緒に練習しているとすごく器用にこなすし。やればできるのにずっと弱音を吐いてるっていう(笑)。とにかく頑張り屋さんなので、ちゃんと本番までに仕上げてくる。頼もしいです。大くんはね……俺、大好きなんですよ。スキル面でも、踊れるし、ラップも含めて歌もできるので、歌って踊ることに関して全く不安がない。本読みもすでにバッチリで。今作ではスパイスになってくれると思います。
──そんな中で、阿部さんはどのようなお芝居をしたいと思っていますか?
脚本の小沢道成さんが、「僕のすべてをここに載せた」と言ってくださったんです。それを演じるのはとてもハードルの高いことでもありますが、だからこそ僕は脚本に素直に従いたい。エゴは持ちつつも、作品ファーストで、脚本通りに演じていくことが僕の使命かなと思っています。内容についてはまだ言えませんが、とにかくまずは「カッコいい人たちが歌って踊るんだ」っていうそれだけで観に来てほしいです。観てもらえば、いろいろと感じ取れるものもあると思うので。
「夢は何歳からでも叶えられる」と真田広之をリスペクト
──ここからは阿部さんの俳優活動についてのお話を聞かせてください。今年5月に俳優活動に専念することを発表されましたが、専念したくなるほどの俳優業の面白さをどのように感じていらっしゃるのでしょうか?
僕は昔からずっと俳優がやりたいという気持ちがあって。その理由は、とにかく演じることが楽しいから。たくさんの人と出会って、その人たちと同じ方向を向いて一つの作品を作るというのは唯一無二な経験だと思うんです。だから舞台・映像関係なく、面白い作品にはどんどん出ていきたい。そのためには俳優活動に専念しないと時間が足りないと思って、専念することに決めました。
──昔からずっと俳優がやりたい気持ちがあったとのことですが、俳優の面白さは、今と昔で変化していますか?
していないですね。今も純粋に10代の気持ちのまま。自分が特別うまいとも思わないし。ただ「一緒に仕事をしたい」と言っていただける機会があるとうれしいです。
──一緒に仕事をしたいと思う人が多いからこそ、様々な作品に出演したり、主演作も増えたりしているのだと思いますが、そんなご自身の状況の変化はどのように捉えていますか?
あんまり感じていないですね(笑)。
──純粋に「お芝居のお仕事だ! やったー」という感じ?
そうですね。いかにいい作品にして世に出すか、それだけを考えています。もちろん、自分を選んでいただけたということは、自分にしかできないことだと受け取ってはいますけど、だからといって別に浮かれることはない。淡々とやっています。
──俳優としての将来像や理想像は何かありますか?
真田広之さんのように海外で日本の文化を発信できるような作品を作るというのが、僕の目標の1つです。
──阿部さんは常々憧れの俳優として、真田広之さんを挙げられていますが、それは活動の仕方に憧れているということ?
それも1つ。知り合いに、真田さんをご存知の方がいるんですが、その方が真田さんのことをすごく努力家だとおっしゃっていて。時間が少しでも空いたら英語の勉強をしたりとか。そういう姿勢も素敵だなと思います。それに、真田さんがハリウッドへの挑戦を始めたのは30代からだそうで、「夢は何歳からでも叶えられる」というのを体現している方でもありますよね。そういうところも含めて、リスペクトしています。
観た人の日常に変化を起こすような作品を創っていけたら
──先ほど、今後ご自身が舞台に立つことは減っていくと思うとおっしゃっていましたが、それはどういうことなのでしょうか?
今まで舞台にもたくさん出させていただいていますが、映像のお話もいただけるようになってきて。まずは自分の名前と顔を広めるために、しばらくは映像作品の出演を増やしていきたいなと思っています。挑戦したい作品と経験に費やせる時間とのバランスの問題という意味です。
──40歳以降でプロデューサーも考えていたということもおっしゃっていましたが、今後の舞台や映像作品との関わり方について、今考えているプランなどがあれば教えてください。
今回もすごく素敵な機会をいただけましたが、今後も舞台・映像問わず、制作から入っていきたいという想いは強くあります。ハリウッドの作品なんかはもうほとんどがそうだと思いますが、プロデューサーと出演者、監督や演出家が一緒になって意見を出し合って作るというのはすごく健全だと思うので、僕もそうやって作品を創っていきたいです。
──制作から入って作っていくというのは、カロリーが高いことでもあると思うのですが、そうやってエネルギッシュに活動できる動機や原動力はどのようなものなのでしょうか?
僕としてはそれが当たり前だったから、ですかね。これまでもセルフプロデュースでグループ活動をしてきたのと、自分が出演してきた舞台や映像の現場でも、積極的に自分の意見を伝えてきました。最近は、賀来賢人くんが「Watch 忍びの家 House of Ninjas」で主演とプロデュースを務めたりもしていますし、だからこそ、自分ももっとやっていきたいなと思っています。
──俳優として、また、ときに制作陣として、どのような作品を作っていきたいと思っていますか?
作品によってどんなことを感じてもらいたいかは変わってきますが、例えば時代劇だったら、日本の歴史や日本の良さを知ってもらうことができますよね。そうやって、カルチャーやメッセージ性のあるものを作りたいと思っています。たまには、浅瀬でぴちゃぴちゃ遊んでいるようなものもやりたいですけど(笑)。僕自身が、観て意味を感じる作品が好きなので、そういうものを世の中に届けていきたいなという想いがエゴとしてあります。観た人が、「明日早く起きてみようかな」とか、そういうことでもいいから、新しい一歩を踏み出すきっかけになれたらうれしい。ちょっとでも、観た人の日常に変化を起こすような作品を創っていきたいと思います。
■取材・文/小林千絵
撮影/梁瀬玉実
ヘアメイク/瀬戸口清香
スタイリング/中原幸子
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