井手上漠が声をあげ続ける理由「18年間性別の壁にぶち当たってきた」<「normal?」インタビュー>
2021.04.21 08:00
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各分野でジェンダーフリーが唱えられる今、“自分らしい美”を象徴する新アイコンとして注目を集めているのが、モデルの井手上漠(いでがみ・ばく/18)。モデルプレスは20日に初のフォトエッセイ「normal?」(講談社)を発売した井手上に、同書で自身の生い立ちを赤裸々に語った理由、ジェンダーへの意識が確実に変わりつつある社会に対して今感じている想いなどに迫った。
井手上は2018年、「第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」ファイナリストに選出され、DDセルフプロデュース賞を受賞し、“可愛すぎるジュノンボーイ”として一躍話題になって以降、ファッションショー出演、ベストジーニスト受賞、「JUNON」での美容男子連載、女性ファッション誌での特集など、性別にとらわれない唯一無二の存在として地位を確立。今年3月に上京し、さらに活躍の幅を広げていく。
これは井手上のTwitterのプロフィール欄に書かれた言葉。心の中に“女か男か”という違いがない、という自分のアイデンティをオープンに示し、自分らしく生きる姿は多くの人に勇気を与え、ジェンダーレスアイコンの一人として同世代から支持を得ているが、今に至るまでには計り知れない苦労や葛藤があった。
「私はまだ18歳なんですけど私なりに色んな経験をしてきたと思っています。その中でも特に性別について考えさせられることが多かったんです。性別の壁って当事者としてぶつかる経験がないと考える機会があんまりないと思うんですけど、私は常にそういう人がこの世の中にいて苦しんでいるということを知ってもらいたかった。だから、まだまだ少しではあるけど知名度が向上しつつある今、私に何ができるかなと考えたら、それは発信することだなと思い至りました」
今あえて“フォトエッセイ”という形で自身の考えを発信する理由は“知ってもらうため”。エッセイパートには、「生い立ち」「家族」「SNS」「性」など、多彩なテーマを収録し、これまで語られることがなかったエピソードや性に対して踏み込んだ内容もつづられている。
「私の過去というのは難しいものなので、『理解して』というのも違うし、『同情してほしい』とかそういう感情はないんですけど、複雑すぎて私から発信しないと伝わらない過去なんです。18年間性別の壁にぶち当たってきて私が感じたこと、この世の中に対して想ったことを包み隠さずまとめていて、私みたいな当事者だけじゃなくて、そういった困難に日々触れていない人にも読んでほしいです。私も今までは過去について真剣に振り返る機会がなかったので、エッセイを書くにあたって振り返ってみました。あんまり私の過去は明るいものではないから普段から思い出したくはない過去もあるわけで…自分で言うのもなんですけど『あのときすごく頑張ったんだな』とか思って過去に向き合う良い機会になりました。過去を顧みた時私にも言いたくないことも多々あったんですけど、エッセイは一生残るものだし同じ悩みを抱いている方々へ少しでも力になれればと思って、リアルに書きたいと今までメディアで喋ったことのないことも、沢山書きました」
「すごく生き生きした私も見れるんじゃないかなと思います。思い出の場所を巡っているのでエッセイもイメージが湧きやすいんじゃないかなと思います。
特に印象的だったのは私の島の横の西ノ島町というところの摩天崖という観光名所があるんですけど、撮影日があいにくの雨で衣装も赤いドレスですっごく薄手だったので寒くてそれは死ぬかと思いました(笑)。写真では『寒そうだな』とあんまり伝わらないと思うんですけど、震えるほど寒かった中での撮影だったんだと思いながら見て頂ければです。
どの衣装も着たことのない服で、色んなスタッフさんと一緒に選んだんですけどすごく楽しかったです。本当に地元で撮影したので不思議な感覚でオフ感もありました。18年間住んできたところなので全部馴染みしかない場所ですごくアットホームなところなのでお家の中で撮ったみたいな感覚なんです。知り合いしかいないので撮影中は人が通るとカメラを向けられている私を見られるのは『ちょっと恥ずかしいな』と思ったんですけど皆応援してくれたし、私の祖父も撮影風景を観に来てくれました」
「オピニオン編と呼んでいるんですけど、そのパートはしっかりと読んで頂けたら嬉しい限りです。もちろん私の生い立ちも知ってほしいんですけど、オピニオン編は当事者じゃないと絶対に分からないことをしたためてあるんです。多分いくら私が打ち明けても完全には理解してもらえないし、この本を通じて理解してもらうのは難しいとは思いますが今はただ知ってほしいだけ。知るだけで絶対に違うんです。“普通”に囚われすぎてしまっている世の中で、まず普通とは何なのかを真剣に考えて、この本のタイトルを『normal?』としたんです」
井手上の出身校・隠岐島前高校でも2020年に制服改革を行い、6月から制服規定が変更。男子用・女子用からタイプ1・タイプ2という名称に変更となり、生徒が自由にどちらかを選べるように。井手上は同級生とともに制服改革の活動を行い、Instagramでスカート制服を着た写真を投稿すると、大きな話題を集めた。
「私は学ランも好きで、締まりがあるクールな感じが好みだったから、元々スカートの方を穿きたいと思っていたわけじゃないんですけど、せっかく校則が変わったのであと一年だし変えてみようかなと思って穿いてみたらスカートはスカートですごく楽しかったです」と、制服規定変更後は、スカート制服で過ごしたという高校3年の日々を懐かしそうに振り返った井手上。
性別以外の理由で好んで制服を変える人もいるといい、「寒いから学ランを着るという人もいるし、ジェンダーに囚われず自由に選んでいるので皆生き生きしています。生き生きしている姿ってやっぱりかっこいい。皆が生き生きできる社会になれたらと思います」と熱を込めて語る。
「この経験を通じて改めて、服装って思ったよりも大事だなと感じたんです。制服を通じて決められた服装がどこかで個性を潰しているかもしれない。人によっては、それはわがままかもしれないし、すごく難しいところなんですけど、私はどこの学校も制服が選べる制度になったらいいなと思います。もちろんそうなったところで当事者が自分の着たい方を着れるかというと周りの目とか環境もあるから一概には言えないんですけど、それ以前に制服を選べる制度がないと選択肢自体もない。前提がなかったら一歩踏み出すこともできない。だからルールとかマナーから見直すべきなんです。男性が学ランで女性がスカートというのは多分マナーだったと思うんですけど、今の時代はそうじゃなくても良い、と感じる人が多いんだったらその時代にあった普通(normal)に変化していって欲しい。でも結局一番大事なのは制服自体じゃなくて、どちらか選べるとなったときに『こっちを着たい』と自由に周りを気にせずに生きられる世の中を作ること。だからその前提としてまずは制服を選べる制度を当たり前にしなければならないと思います。
実際に色んな学校で取り入れ始めているのでどんどん時代は変わっているなと思うし、すごく良いことだと思います。例えば1年でガラッと世の中を変えるのは国が動かないと無理ですから、本当に10年後20年後に完全に変わっていれば良い話で少しずつ変えるのが大事だと思うし、その一歩として私がこのエッセイを出す意味があるのならば嬉しいです」
「例えば5年前と比べても変わってますよね。時代が流れれば人も変わるし色々マナーとか原則も変わるものですよね。だから時代に合わせないといけない。その結果が少しずつ生きやすい世の中になっているのあればすごく良いことだと思います。それがすごく一部だとしても大事で、全くないよりも一部があるだけで全然違ってそこからどんどん広がっていく。私が今あげているジェンダー平等について考える声は世界中から見たら米粒みたいに小さいものだと思うんですけど、その米粒が大事だと思っていて、その米粒を誰かが見つけたときにそれが救いになって勇気に繋がればその人も堂々と生きていけて、そういう人が増えればまた米粒が大きくなる。まだまだ私の声は小さなものですけど私がやっていることは意味があることだと信じてこれからも続けていきたいです。
もちろん今でも『変わって欲しい』と思うことは沢山ありすぎて言い切れないくらいなんですけど、それもエッセイに沢山書きました。当事者じゃないと壁にぶち当たらないから気づけないんですけど、当事者が声を出すことも難しくて、諦める人が多いんです。でも20年後はもっと今より明るくなっていると思います。実際に海外だともっとジェンダーに囚われていない国があるし、日本もそうなっていると思います。その第一歩として私がこの時代に生きているということは意味があることですから」
「周りの人が応援してくれているのは私が今、生き生きしているからだと思うんです。昔から内気で野暮ったくなく、自分らしく輝きを持っていたら…、きっとあの頃だって応援してくれていたと思います。自分に迷いがあってどこかで偽りの仮面を被っていたからそういう姿に周りも違和感があったんじゃないかな。例えば綺麗なお花ってそのまま保ちたいと思いませんか?生き生きして美しいものって誰でも応援したくなるし、そういう感覚だと思います。今はおじいちゃんも沢山『綺麗だね』と言ってくれるしそれが私にとっては励みだし、その言葉をもらってどんどんステップアップしている気がします。
結局生き生き楽しく生きているか生きていないかで周りからの反応が違うと思うので、見られ方は自分次第なんじゃないかな。どうあがいても残念なことにそうなんです。どうしても周りを責めがちだと思うし私もそうだったんですけど、自分がどう変わるか。その勇気は自分の心にしかないものでそれを開かなきゃいけないから、そこがすごく難しいと思うんですけどね」
メイクの研究の成果が大きいそうで、「やっぱりメイクの力ってすごいですよね。メイクは私にとって一生の課題で、メイクを学ぶことがストレス発散というか趣味になっています。特に眉毛はすごく研究しました。顔って眉毛で一番変わると言われているし、太さ、角度、濃さで変わるので元々すごくコンプレックスだったんですけど、眉毛を変えたいというところからメイクを始めて結構こだわっています」と明かしてくれた。
「今の夢は美容が好きなので最終的にはそれをお仕事にできたらと思います。今はまだ18歳なので具体的にこうなりたいというよりは、ただただ輝いている存在であり続けてゆきたいというのが将来の夢です」と夢を語った。
そんな井手上の夢を叶える秘訣は?
「経験の量だと思います。色んな人と話をして色んな大人と出会ってみて、色んなところを見てみる。そういう風に自分から経験しに行かないと出会いもないし、夢も見つからないと思います。私も5年くらい前の私から考えたら絶対に視野や価値観が広がっているし、『これもやってみたい、あれもやってみたい』ということが色々出てきたんです。
私は人の話を聞くのも人と関わるのも好きだし、自分のためになると思ってやっています。自分とは真逆の意見を持っていて価値観が合わない人の意見ですら聞きたいんです。『苦手だな』と思うタイプの人でさえ関わってみたら『こういう考え方もあるんだ』と思うし、夢や希望、目標に繋がると思います。この世界って人で成り立っているし、自分一人じゃ絶対に生きていけないので。
昔はどちらかというと人の話を聞く方で自分の意見を言わないタイプだったんですけど、今は自分の意見も言うし人の意見も聞くようになりました。そういう言葉のキャッチボールから生まれる新しいものが大事だと思って、変わらない人生じゃつまらないので何か新しいことやものを見つけるために色んな経験に触れることが大事だと思います」
(modelpress編集部)
井手上漠「18年間性別の壁にぶち当たってきた」フォトエッセイに込めた思い
「いでがみばくです、性別ないです」これは井手上のTwitterのプロフィール欄に書かれた言葉。心の中に“女か男か”という違いがない、という自分のアイデンティをオープンに示し、自分らしく生きる姿は多くの人に勇気を与え、ジェンダーレスアイコンの一人として同世代から支持を得ているが、今に至るまでには計り知れない苦労や葛藤があった。
「私はまだ18歳なんですけど私なりに色んな経験をしてきたと思っています。その中でも特に性別について考えさせられることが多かったんです。性別の壁って当事者としてぶつかる経験がないと考える機会があんまりないと思うんですけど、私は常にそういう人がこの世の中にいて苦しんでいるということを知ってもらいたかった。だから、まだまだ少しではあるけど知名度が向上しつつある今、私に何ができるかなと考えたら、それは発信することだなと思い至りました」
今あえて“フォトエッセイ”という形で自身の考えを発信する理由は“知ってもらうため”。エッセイパートには、「生い立ち」「家族」「SNS」「性」など、多彩なテーマを収録し、これまで語られることがなかったエピソードや性に対して踏み込んだ内容もつづられている。
「私の過去というのは難しいものなので、『理解して』というのも違うし、『同情してほしい』とかそういう感情はないんですけど、複雑すぎて私から発信しないと伝わらない過去なんです。18年間性別の壁にぶち当たってきて私が感じたこと、この世の中に対して想ったことを包み隠さずまとめていて、私みたいな当事者だけじゃなくて、そういった困難に日々触れていない人にも読んでほしいです。私も今までは過去について真剣に振り返る機会がなかったので、エッセイを書くにあたって振り返ってみました。あんまり私の過去は明るいものではないから普段から思い出したくはない過去もあるわけで…自分で言うのもなんですけど『あのときすごく頑張ったんだな』とか思って過去に向き合う良い機会になりました。過去を顧みた時私にも言いたくないことも多々あったんですけど、エッセイは一生残るものだし同じ悩みを抱いている方々へ少しでも力になれればと思って、リアルに書きたいと今までメディアで喋ったことのないことも、沢山書きました」
井手上漠、地元・隠岐諸島で撮影「お家の中で撮ったみたいな感覚」
井手上が生まれ育った島根県隠岐諸島の海士町は、東京まで行くのに約1日かかるという人口2300人の町だ。フォトパートは地元を中心に隠岐諸島の島を周り、撮影をした。「すごく生き生きした私も見れるんじゃないかなと思います。思い出の場所を巡っているのでエッセイもイメージが湧きやすいんじゃないかなと思います。
特に印象的だったのは私の島の横の西ノ島町というところの摩天崖という観光名所があるんですけど、撮影日があいにくの雨で衣装も赤いドレスですっごく薄手だったので寒くてそれは死ぬかと思いました(笑)。写真では『寒そうだな』とあんまり伝わらないと思うんですけど、震えるほど寒かった中での撮影だったんだと思いながら見て頂ければです。
どの衣装も着たことのない服で、色んなスタッフさんと一緒に選んだんですけどすごく楽しかったです。本当に地元で撮影したので不思議な感覚でオフ感もありました。18年間住んできたところなので全部馴染みしかない場所ですごくアットホームなところなのでお家の中で撮ったみたいな感覚なんです。知り合いしかいないので撮影中は人が通るとカメラを向けられている私を見られるのは『ちょっと恥ずかしいな』と思ったんですけど皆応援してくれたし、私の祖父も撮影風景を観に来てくれました」
井手上漠が明かす日常の“見えない壁”
男・女の二択しかない性別欄、公共のトイレ、銭湯や温泉…エッセイでは日々マイノリティとして感じている日常の“見えない壁”についても自身の経験から言葉をつづっている。
「オピニオン編と呼んでいるんですけど、そのパートはしっかりと読んで頂けたら嬉しい限りです。もちろん私の生い立ちも知ってほしいんですけど、オピニオン編は当事者じゃないと絶対に分からないことをしたためてあるんです。多分いくら私が打ち明けても完全には理解してもらえないし、この本を通じて理解してもらうのは難しいとは思いますが今はただ知ってほしいだけ。知るだけで絶対に違うんです。“普通”に囚われすぎてしまっている世の中で、まず普通とは何なのかを真剣に考えて、この本のタイトルを『normal?』としたんです」
井手上漠、高校では制服改革も「ジェンダーレス制服は前提」
“ジェンダーレス制服”というワードを最近ニュースで耳にしたことがある人も多いだろう。これまで男子用、女子用とされてきた制服を選べるようになったり、ユニセックスデザインが採用されたりと、多様性を尊重し、性差を感じさせないための制服が、国内でも年々浸透。ニュースでも大々的に取り上げられ、話題になることが増えてきた。井手上の出身校・隠岐島前高校でも2020年に制服改革を行い、6月から制服規定が変更。男子用・女子用からタイプ1・タイプ2という名称に変更となり、生徒が自由にどちらかを選べるように。井手上は同級生とともに制服改革の活動を行い、Instagramでスカート制服を着た写真を投稿すると、大きな話題を集めた。
「私は学ランも好きで、締まりがあるクールな感じが好みだったから、元々スカートの方を穿きたいと思っていたわけじゃないんですけど、せっかく校則が変わったのであと一年だし変えてみようかなと思って穿いてみたらスカートはスカートですごく楽しかったです」と、制服規定変更後は、スカート制服で過ごしたという高校3年の日々を懐かしそうに振り返った井手上。
性別以外の理由で好んで制服を変える人もいるといい、「寒いから学ランを着るという人もいるし、ジェンダーに囚われず自由に選んでいるので皆生き生きしています。生き生きしている姿ってやっぱりかっこいい。皆が生き生きできる社会になれたらと思います」と熱を込めて語る。
「この経験を通じて改めて、服装って思ったよりも大事だなと感じたんです。制服を通じて決められた服装がどこかで個性を潰しているかもしれない。人によっては、それはわがままかもしれないし、すごく難しいところなんですけど、私はどこの学校も制服が選べる制度になったらいいなと思います。もちろんそうなったところで当事者が自分の着たい方を着れるかというと周りの目とか環境もあるから一概には言えないんですけど、それ以前に制服を選べる制度がないと選択肢自体もない。前提がなかったら一歩踏み出すこともできない。だからルールとかマナーから見直すべきなんです。男性が学ランで女性がスカートというのは多分マナーだったと思うんですけど、今の時代はそうじゃなくても良い、と感じる人が多いんだったらその時代にあった普通(normal)に変化していって欲しい。でも結局一番大事なのは制服自体じゃなくて、どちらか選べるとなったときに『こっちを着たい』と自由に周りを気にせずに生きられる世の中を作ること。だからその前提としてまずは制服を選べる制度を当たり前にしなければならないと思います。
実際に色んな学校で取り入れ始めているのでどんどん時代は変わっているなと思うし、すごく良いことだと思います。例えば1年でガラッと世の中を変えるのは国が動かないと無理ですから、本当に10年後20年後に完全に変わっていれば良い話で少しずつ変えるのが大事だと思うし、その一歩として私がこのエッセイを出す意味があるのならば嬉しいです」
井手上漠が声をあげ続ける理由「すごく一部だとしても…」
多様性の尊重への社会の意識は年々高まっているが、井手上自身は子どもの頃と比べて「社会が変わった」と感じるかと質問すると、逆に「変わったと思いませんか?」と問い返された。「例えば5年前と比べても変わってますよね。時代が流れれば人も変わるし色々マナーとか原則も変わるものですよね。だから時代に合わせないといけない。その結果が少しずつ生きやすい世の中になっているのあればすごく良いことだと思います。それがすごく一部だとしても大事で、全くないよりも一部があるだけで全然違ってそこからどんどん広がっていく。私が今あげているジェンダー平等について考える声は世界中から見たら米粒みたいに小さいものだと思うんですけど、その米粒が大事だと思っていて、その米粒を誰かが見つけたときにそれが救いになって勇気に繋がればその人も堂々と生きていけて、そういう人が増えればまた米粒が大きくなる。まだまだ私の声は小さなものですけど私がやっていることは意味があることだと信じてこれからも続けていきたいです。
もちろん今でも『変わって欲しい』と思うことは沢山ありすぎて言い切れないくらいなんですけど、それもエッセイに沢山書きました。当事者じゃないと壁にぶち当たらないから気づけないんですけど、当事者が声を出すことも難しくて、諦める人が多いんです。でも20年後はもっと今より明るくなっていると思います。実際に海外だともっとジェンダーに囚われていない国があるし、日本もそうなっていると思います。その第一歩として私がこの時代に生きているということは意味があることですから」
井手上漠、過去の苦しい経験を乗り越え得た考え「見られ方は自分次第」
幼少期から周りの子と少し違った井手上を見て母親に苦言を呈すこともあったという祖父や、「気持ち悪くない?」と違和感を口に出した周りの同級生――――かつて辛い言葉を投げていた人たちの現在の反応を聞くと「応援してくれています」と即答。辛い時期を乗り越えた井手上がたどり着いたのは、周りを責めずに、“自分の行動が周りの反応を変える”という達観した考えだ。「周りの人が応援してくれているのは私が今、生き生きしているからだと思うんです。昔から内気で野暮ったくなく、自分らしく輝きを持っていたら…、きっとあの頃だって応援してくれていたと思います。自分に迷いがあってどこかで偽りの仮面を被っていたからそういう姿に周りも違和感があったんじゃないかな。例えば綺麗なお花ってそのまま保ちたいと思いませんか?生き生きして美しいものって誰でも応援したくなるし、そういう感覚だと思います。今はおじいちゃんも沢山『綺麗だね』と言ってくれるしそれが私にとっては励みだし、その言葉をもらってどんどんステップアップしている気がします。
結局生き生き楽しく生きているか生きていないかで周りからの反応が違うと思うので、見られ方は自分次第なんじゃないかな。どうあがいても残念なことにそうなんです。どうしても周りを責めがちだと思うし私もそうだったんですけど、自分がどう変わるか。その勇気は自分の心にしかないものでそれを開かなきゃいけないから、そこがすごく難しいと思うんですけどね」
井手上漠、雰囲気が変わった理由は?
デビュー当時の「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」の頃と比べると、圧倒的に雰囲気が変わった。なんというか、以前は癒やし系の穏やかなオーラが強かったが、今はより意志の強さを感じる凛とした風格をまとっているのだ。そう伝えると、「『大人になったね』とか『前は丸みがあるキュートなイメージだったけど最近はクール、ビューティーの方に行ったね』と言われることが多いです」と頷いた。メイクの研究の成果が大きいそうで、「やっぱりメイクの力ってすごいですよね。メイクは私にとって一生の課題で、メイクを学ぶことがストレス発散というか趣味になっています。特に眉毛はすごく研究しました。顔って眉毛で一番変わると言われているし、太さ、角度、濃さで変わるので元々すごくコンプレックスだったんですけど、眉毛を変えたいというところからメイクを始めて結構こだわっています」と明かしてくれた。
井手上漠、今後の夢と夢を叶える秘訣
今後はお芝居にも挑戦。「本当に不安しかないんですけど、やってみることが挑戦。私にしかできないこともあると思うのでそこを出せれば良いかなと思っています」と見据える未来には希望が溢れている。「今の夢は美容が好きなので最終的にはそれをお仕事にできたらと思います。今はまだ18歳なので具体的にこうなりたいというよりは、ただただ輝いている存在であり続けてゆきたいというのが将来の夢です」と夢を語った。
そんな井手上の夢を叶える秘訣は?
「経験の量だと思います。色んな人と話をして色んな大人と出会ってみて、色んなところを見てみる。そういう風に自分から経験しに行かないと出会いもないし、夢も見つからないと思います。私も5年くらい前の私から考えたら絶対に視野や価値観が広がっているし、『これもやってみたい、あれもやってみたい』ということが色々出てきたんです。
私は人の話を聞くのも人と関わるのも好きだし、自分のためになると思ってやっています。自分とは真逆の意見を持っていて価値観が合わない人の意見ですら聞きたいんです。『苦手だな』と思うタイプの人でさえ関わってみたら『こういう考え方もあるんだ』と思うし、夢や希望、目標に繋がると思います。この世界って人で成り立っているし、自分一人じゃ絶対に生きていけないので。
昔はどちらかというと人の話を聞く方で自分の意見を言わないタイプだったんですけど、今は自分の意見も言うし人の意見も聞くようになりました。そういう言葉のキャッチボールから生まれる新しいものが大事だと思って、変わらない人生じゃつまらないので何か新しいことやものを見つけるために色んな経験に触れることが大事だと思います」
(modelpress編集部)
#ノンストップ 出演中📺井手上漠さんからモデルプレス読者へメッセージ💌@i_baku2020 @bakunohon0420
— モデルプレス (@modelpress) 2021年4月21日
🔻初のフォトエッセイ「normal?」についてたっぷりと語ってもらったインタビューはこちらhttps://t.co/Q7HmPuaS7H pic.twitter.com/lcBxduZgDw
井手上漠(いでがみ・ばく/18)プロフィール
2003年1月20日生まれ、島根県隠岐郡出身。中学3年生の時にジェンダーにとらわれれず自分らしく輝ける世界への希望を綴った作文「カラフル」が、「第39回少年の主張全国大会」文部科学大臣賞を受賞。2018年11月、「第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」ファイナリストに選出され、DDセルフプロデュース賞を受賞。2019年10月より女優の橋本環奈らが在籍するディスカバリー・ネクストに所属。
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