「若手は経験を積んでから」と信じてきた40年→社長の一言で気づいた自分の罪
笑顔で資料を返した日のこと
1年前のことです。月例ミーティングで、新卒の女性社員が業務改善の提案書を持ってきました。経費精算の手順を変える、という内容だったと思います。 正直、聞いた瞬間に違和感がありました。入って1年も経っていない人間が、自分たちが何年もかけて作ってきた仕組みを変えようとしているのです。私は微笑んで、「これは経験を積んでからまた持ってきてよ」と資料を返しました。会議のあとに廊下で、「若手はまず仕事を覚えるところから始めようか」と声をかけて励ましたつもりです。彼女のためを思って言った言葉でした。
「当然」を疑わなかった日々
その日以降、彼女は会議でほとんど発言しなくなりました。私はそれを、自分の指導の成果だと考えていました。「若手は目上の言うことを聞いて、まず仕事を覚える」。それが私の信じてきた働き方だったのです。 部下たちが私の前で笑顔を見せながら、影では距離を取っているらしいことには、うすうす気づいていました。それでも、結果を出している部署を率いているのは自分だ、という自負がありました。年功序列で会社は回ってきたのだから、これからもそうあるべきだと、疑ったこともありませんでした。
社長の問いかけと、見覚えのある資料
春の全社会議で、社長が「現場から改善案はないか」と切り出しました。会場には誰の声も上がりませんでした。私の隣で、彼女がふっと手を挙げたのです。彼女が読み上げ始めた内容は、1年前、私が笑って差し戻した、あの提案書だったのです。経費精算の手順を変えて、月に約30時間の業務削減ができるという、あの数字。彼女の声には緊張がにじんでいましたが、内容は1年前より洗練されていました。
そして...
社長は彼女に向かって、「これは素晴らしい。なぜ今まで上がってこなかった?」と言ったあと、ゆっくりと私のほうを見ました。何も返せませんでした。「上がってこなかった」のではなく、「自分が遮っていた」のです。それが、その場にいる全員にもわかったのだと思います。 会議のあと、彼女は別部署にスカウトされていきました。私は自分の机に戻り、長いあいだパソコンの画面をぼんやり眺めていました。年功序列を信じてきた40年が、間違っていたとは思いたくありません。けれど、若い人の声を「経験不足」のひとことで片付けてきた自分が、会社にとってどういう存在だったのかは、もう自分でもわかってしまいました。明日の会議では、まず若手に意見を聞いてみようと思います。
(60代男性・部長職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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