お兄ちゃんの育休=楽だと思ってた私→実家で見た光景に、自分の偏見が恥ずかしくなった話
「ずっと家にいるだけでしょ?」
リビングに入ると、兄が息子のオムツを替えていました。子どもの頃から知っている兄が、こんなに手慣れた動作で甥のお世話をしている姿が、なんだか妙に新鮮で、つい軽口を叩いてしまったのです。
「お兄ちゃん育休とか何してるの?ずっと家にいるだけでしょ?暇じゃない?」
職場で耳にする「育休=休み」というイメージが、頭にこびりついていました。実際、職場で育休を取った男性社員のことを、先輩たちが「いいよなあ、家でゴロゴロして」と笑っていたのに、私も相槌を打っていた一人だったのです。
兄は手を止めずに「そんなふうに見える?」と笑い返しました。私は「だって、寝かしつけて、ご飯あげて、それくらいでしょ?」と続けて、ソファに座りました。
スマホとメモ帳
しばらくして、テーブルに置かれていた兄のスマホがふと目に入りました。ロック画面には、見たことのないアプリの通知がいくつも並んでいます。授乳時間、離乳食、予防接種までの日数。隣には、開いたままのメモ帳がありました。保育園の見学スケジュール、入園に必要な書類のリスト、アレルギー対応の食材まで、ぎっしりと書き込まれていたのです。
「これ全部……お兄ちゃんが?」。声が、自然と小さくなっていました。兄は「うん、まあ、必要だから」と、何でもないように答えました。義姉は看護師で夜勤があり、少し前には祖母の看病で1週間家を空けたと、母が前に話していたのを思い出しました。その間、兄は1歳の息子を一人で見ていたということです。
私が「家にいるだけ」と笑った育休の中身が、そこにありました。
自分の言葉
夕食の席で、味噌汁の味が感じられませんでした。会社で先輩に同調して笑っていた自分の顔が、頭をよぎります。あのとき笑われていた男性社員にも、家にはきっと、こういうメモ帳があったはずです。
私は箸を置いて言いました。「私、勘違いしてた。育休って、休みじゃなかったんだね」。兄は少し驚いた顔をしてから、「俺も最初はそう思ってたよ」とだけ言いました。責められもせず、説教もされなかったぶん、自分の浅さがよけいに恥ずかしくなりました。
そして...
翌朝、いつもより早く起きて、コーヒーを淹れました。子どもの頃に兄と2人で買った、おそろいのマグカップに。「お兄ちゃん、これ」と渡したとき、兄は何も言わずに受け取ってくれました。
帰り際、玄関で兄の顔を見るのが、なぜか気まずくて、靴を履きながら「ごめん」とだけ言いました。兄は「いいよ」と笑ってくれました。
家に帰る電車の中で、ずっと考えていました。今度出社したら、育休明けの先輩に何か声をかけたい。「お疲れさまでした」だけでもいい。私が知らなかったことを、その人は何ヶ月もかけて積み上げてきたのだから。
(20代女性・営業職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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