妻に言えない理由があった。毎晩トイレで母にメッセージを送り続けた俺の、情けない事情
母の異変
3カ月前、実家に帰ったとき、母の様子が気になりました。同じ話を何度も繰り返す。先週の電話の内容を覚えていない。「最近ちょっと忘れっぽくてね」と笑う母に、胸がざわつきました。
病院に付き添った結果、軽度の認知機能低下だと医師に告げられました。「日常的に会話の機会を持つことが大切です。毎日少しでもやりとりをしてください」と。母はその場で俺の手を握り、「このことは誰にも言わないで。お嫁さんにも」と言いました。心配をかけたくないという母の気持ちを、無視することはできませんでした。
トイレしか場所がなかった
妻と一緒にいるリビングでスマホを長時間触れば、不審に思われる。かといって毎晩「ちょっと電話してくる」と外に出るわけにもいかない。消去法で選んだのが、寝る前のトイレでした。
「また持っていくの?」と妻に聞かれるたび、「お腹の調子悪いんだよ」と嘘をつく。「最近毎晩だよね。病院行ったほうがいいんじゃない?」と心配されても、「大丈夫だって」としか返せない。毎晩15分、母に今日あったことを報告し、返事をもらう。その小さなやりとりが母にとって大切な習慣になっていると信じて、続けていました。
話題が尽きた先に出た言葉
問題は、毎日送るネタが足りなくなったことです。仕事の話は母には伝わりにくい。趣味の話もすぐ尽きる。自然と「今日の夕飯」や「家での出来事」が中心になっていきました。
「今日の夕飯、また味が濃かったんだよね」「洗面所にいつも髪の毛が落ちてるんだよ」。送った瞬間、少し胸が痛みました。本気の不満というより、母が「あらあら」と返してくれる話題として選んでしまった部分がある。母は嬉しそうに「言ってあげなさいよ、直接」と返信してくる。会話を続けることが目的だったはずなのに、いつの間にか妻への愚痴が定番になっていた。不満が全部嘘だったとは言えません。でも、あんなふうに書くほどのことでもなかった。その自覚はありました。
そして...
ある夜、トイレから出るとテーブルにスマホを置き忘れていたことに気づきました。翌日から妻の味付けが薄くなり、洗面所がきれいになった。確信しました。見られた、と。
母を守るための嘘が、妻を傷つけていた。打ち明ければ済む話なのに、「言わないで」という母の言葉と、少しだけよそよそしくなった妻の横顔の間で、俺はどちらも選べずにいます。今夜もスマホを持って立ち上がる自分が、ひどく情けなく感じました。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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