「あんた、まだバイトしてるの?」と見下す同級生→10年後、私の店に客として来た元同級生が目を丸くした
笑われた成人式の夜
成人式のあと、同級生たちと近況を報告し合う席がありました。就職先や大学の話で盛り上がる中、私は正直に答えました。「今は飲食店でバイトしてる」と。場の空気が少しだけ変わったのを感じました。
すると、ひとりの同級生がこう言ったのです。
「あんた、まだバイトしてるの?」
彼女は内定が決まったばかりで、「早く正社員になりなよ」と続けました。周りが気まずそうに目をそらす中、私はグラスを握る手に力がこもるのを感じながら、何も言い返せませんでした。
私がバイトを続けた理由
バイトを続けていたのは、夢があったからです。いつか自分のカフェを開きたくて、調理も接客も、現場で一つずつ覚えていく道を選びました。大学に行かなかったのは家庭の事情もありましたが、この道で生きていこうと決めたのは自分自身です。
あの日の彼女の言葉は、私が選んだすべてを否定されたようで、何年経ってもちくりと残り続けていました。ただ、その痛みが足を止める理由にはなりませんでした。朝早くから仕込みに入り、閉店後にレシピを研究する日々を、淡々と積み重ねていったのです。
10年後の「いらっしゃいませ」
28歳のとき、大通りから一本入った路地に、カウンター8席の小さなカフェを開きました。開店から2年が経ったある昼下がり、ドアが開いて入ってきたのは、あの同級生でした。
「いらっしゃいませ」私はいつもどおりに声をかけました。
彼女はメニューを受け取りかけて、ふと顔を上げ、「え、もしかして」と目を丸くしました。私は「久しぶりだね」とだけ返し、注文を待ちました。
そして...
彼女はコーヒーを一杯飲んで、帰り際に「ここ、あなたのお店なの?」と聞きました。「うん」と答えると、何か言いたそうに口を開きかけて、けれど結局「ごちそうさま」とだけ言って出ていきました。
私は特別な感情を抱きませんでした。見返してやりたいとか、謝ってほしいとか、そういうことではなくて。ただ、あの日の悔しさが、今ここに立っている私を作ったのだと思えたことが、何より嬉しかったのです。カウンターを拭きながら、次のお客さんを待ちました。いつもと変わらない、落ち着いた午後でした。
(30代女性・飲食経営者)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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