あいつの企画を「レベルが低い」と笑った俺が、掲示板の前で動けなくなった理由
覗き込んだ画面
社内コンペの募集が出たとき、俺も応募するつもりでいました。企画のネタはある。あとはまとめるだけ。そんなとき、隣の席のあいつが昼休みに企画書を作っているのが目に入りました。
画面を覗いて、最初に感じたのは焦りでした。切り口が、俺が考えていたものと似ていた。でもそのときの俺は、焦りを認める代わりにこう言ったのです。
「お前の企画なんて通るわけないだろ」
そして「レベルが低い」と笑いました。あいつは何も言わずに画面を閉じました。
止めたかった本当の理由
数日後、俺はまた声をかけました。「恥をかくだけだぞ」「誰に見せたって同じこと言われるよ」最後に「今回のコンペ、出すのやめたら?」と言いました。
心配しているふりをして、本当はあいつに出してほしくなかった。俺より先に評価されるのが怖かったのです。
あいつは結局何も言い返しませんでした。それを「効いたな」と思った自分がいました。でも、退勤後にあいつのデスクのモニターがついているのを何度か見かけていました。
見て見ぬふりをしていたのは、その努力を認めたら自分の怠慢と向き合うことになるからです。
掲示板の前で
結果発表の日、3階エレベーター前の掲示板に人だかりができていました。最優秀賞の欄に、あいつの名前がありました。胃の奥がきゅっと締まるのを感じました。
翌日の全体朝礼で部長が言いました。「地道に努力する人間が、最後にちゃんと届くんだよ」その言葉は、あいつに向けられたものです。
でも俺には、自分への否定に聞こえました。地道に努力しなかった人間は、届かない。それは俺のことでした。
そして...
俺はあのコンペに、結局応募しませんでした。企画書は途中まで書いて、下書きフォルダに入れたまま期限が過ぎました。あいつを笑っている間に、自分の手は止まっていたのです。
あいつの企画をけなしたのは、あいつが弱いからじゃなかった。俺が怖かったからです。同期に先を越される恐怖を、相手を下げることでごまかしていた。
掲示板の前で動けなかったのは、悔しかったからではありません。あの名前が自分だった可能性を、自分でつぶしたことに気づいたからです。
(20代男性・企画職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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