盛況だったベアトアンジェリコ展 ルネサンスと現代アートの交差点

25年にフィレンツェで開催された展示会で最も入場者数が多かったのは、1400年代初期を代表する、フィレンツェで活躍したベアトアンジェリコの展示でした。平日も長蛇の列、週末は建物からはみ出すほどの大盛況で、イタリア人も必要とあれば列を作り辛抱強く待つのかと感心することしきりでした。
神様からの告知
ベアトアンジェリコは天使に祝福された修道士という意味を持ち、修道僧であった彼は、修道画家として、聖母、キリスト、聖人を描きましたが、敬虔(けいけん)で美しくピュアな表情は、本当に天使が描いたのかと思うのほどの出来映えで、当時から高い評価を受けていた人物です。
彼の代表作品に、フィレンツェのサンマルコ修道院に描かれている『受胎告知』があります。白ユリを手にしたガブリエル大天使がマリア様の前に降り立ち、「おめでとうマリア。恵みに満ちた方よ。主があなたと共におられます」と、マリア様がキリストを身ごもったことを神からのメッセージとして告知している場面です。
会場はルネサンス時代に建てられた宮殿を利用しており、中庭には展示会のテーマに沿ったインスタレーションアートが設置されます。現代アーティストの展示会の際には、中庭のスペースを大胆に使い自らの作品を展示しますが、今回は展示会のテーマとは全く別物のような巨大な木製のオブジェが出現しました。バッテン目のキャラクターを生み出したアメリカ人アーティスト、Kaws(カウズ)の作品です。
「ザ・メッセージ」
高さが6メートルもあり、インパクトのあるこの作品は、展示中のベアトアンジェリコと何かしらの関連があるはずです。全く関係のない作品が現れるはずがありません。立っている男性は右手を胸に当て、左手には何かを持っています。一方、座っている女性は手の中をじっと見ています。互いに手にしているのはスマートフォンです。
ここでお分かりになった方はいらっしゃるでしょうか? 受胎告知をカウズが現代風に再解釈しています。ガブリエル大天使はスマホでマリア様にメッセージを発信し、現代のマリア様はもはや大天使の顔を見ず、スマホを凝視し、告知を受け止めています。大天使が神の言葉を運ぶのではなく、現代ではスマホがその役目を果たしています。説明を読んで、作品の意味を理解した人たちはぴりっと風刺の利いた表現にくすっと笑い、神の言葉の代理であるスマホを作品に向け写真に収めていました。
(フィレンツェ在住ライター・いがらしようこ)
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