痩せたがる若者の美の基準 一つの〝物差し〟でしかない数字

SNSで「スペ110」「スペ120」といった言葉を見かけたことがあるだろう。「スペ◯◯」は、身長から体重を引いた数値で、スタイルの良さを数字で語ろうとする指標だ。起源は性風俗業界の採用現場とされるが、いまでは若年層の女性の間にも広がっている。
見た目を数値化
SNSでは「スペ110が標準体形」「スペ120がスタイルが良い」といった表現がしばしば見られる。しかし、これらは個人の発信にとどまり、公的・学術的機関が「スペ◯◯」を健康的・理想的な体形として推奨している事実はない。
医学的・公衆衛生的な文脈で、健康的かどうかを判断する際の出発点はBMI(ボディマス指数)だ。BMIは、体重(キログラム)÷身長(メートル)の二乗で計算する体格指数で、18.5未満は低体重、18.5~24.9は普通体重、25以上は過体重とされ、WHO(世界保健機関)をはじめ多くの国で用いられている。「スペ110」が標準体形とされることがあるが、具体的な身長で見ると矛盾がはっきりする。たとえば身長160センチで「スペ110」なら体重は50キログラムで、BMIは約19.5となり、普通体重の範囲に入る。一方、身長150センチで「スペ110」なら体重は40キログラムで、BMIは約17.8となり、低体重に分類される。同じ「スペ110」でも、身長が10センチ違うだけで、医学的には普通と痩せすぎに分かれてしまう。
このように、「スペ◯◯」は一見わかりやすい指標だが、身長が低めの人や思春期の女性ほど、痩せすぎを普通と誤認しやすい構造を持っている。つまり「スペ◯◯」は、ルッキズムの文脈で生まれた見た目の圧力を数値化したものなのだ。
個性生かす物差し
体の美しさを数字で考えるとき、どんな視点があり得るのか。ワコールは多くの女性の体を計測し、「身長-体重」という単純な数値ではなく、バスト・ウエスト・ヒップのバランスや立体的なプロポーションから身体美をとらえてきた。ただしワコール自身、これを絶対的な理想プロポーションではなく、一人ひとりの個性を生かすための「物差し」と位置づけており、数値で人をランク付けする「スペ◯◯」とは発想が異なる。
様々な研究からも、美しい体を支えるのは一つの数字ではなく、複数の要素であることがうかがえる。「スペ◯◯」のように身長と体重だけで美しさを決めようとする発想が、いかに単純化されすぎていることか。体は年齢やライフイベントとともに変わるのが自然であり、その変化の中にも美しさがあるという視点を忘れてはいけない。
(化粧心理学者・平松隆円)
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