きもの地で洋服を作るミゼン 花織や結城紬、米沢織… 伝統産業の素晴らしさ伝える

2025.01.10 11:00
提供:繊研plus

大島紬や牛首紬といった日本のきもの地から洋服を作るプロジェクトを進めるミゼン(東京、寺西俊輔代表)は、24年12月で2周年を迎えた。日本の伝統産業の素晴らしさを広め、職人の地位向上を促す活動に力を入れている。

(青木規子)

職人と技が主役

代表でデザイナーの寺西さんは、仏エルメス本社でデザイナーとして経験を積んだ経歴を持つ。ヨーロッパで物作りに携わるなか、日本の伝統文化の素晴らしさを世界に発信したいと一念発起し、帰国して起業した。現在は東京・青山の旗艦店を拠点に、きものの織物産地とタッグを組んで、その魅力を伝える取り組みを進めている。

同社はこれまで、牛首紬や結城紬といった紬の産地とタッグを組んで新しいデザインの反物を作り、ケープやスーツといった洋服を作ってきた。きもの地の職人と職人技を主役とする洋服だ。きものの素材に興味を持つ人、きものを着るのが難しくなった年配者など、広い層に発信している。洋服としては高額だが、その価値を丁寧に伝えている。

こういった取り組みの背景には「日本に受け継がれてきた手仕事をより輝く存在にしたい」という思いがある。素晴らしい技術を持ちながら多くの産地が縮小するなか、良いものを後世に残すためにはどうすればよいか。「技術こそが価値」と考える寺西代表は、それを伝えるためにプロジェクトを開始した。

現在のラグジュアリーファッションビジネスでは、デザイナーがピラミッドの頂点に立ち、デザイナーのイメージを実現するために、様々な技術を駆使するという考え方がある。だが、それは洋服文化の歴史が長いヨーロッパならではのルール。寺西代表は「日本の手仕事をそこに押し込むのではなく、元来日本がきもの文化の中で培ってきた技術者も主役となるというルールを、ファッションやデザインの世界にも浸透させたい」という。

ストーリーを伝える

24年末には、創業2周年を記念して新作コレクション「昇~SHO~」を発表した。タイトルには、新たなラグジュアリーに昇華させるという思いが込められており、六つの産地で運気上昇を意味する模様がオリジナルで織られた。

沖縄の南風原花織は、作家の宮城麻里江さんが手掛けた。モチーフの竹は、すくすくと上へと育つ様子から、縁起の良い植物と言われている。織名はクヮンクヮン花織経絣。獅子(しし)舞が毛を揺らして踊る様子を「シーシクヮンクヮン」といい、布裏に飛び出している糸がそれを表している。69万3000円。

茨城の石下結城紬では、亀甲絣と十の字絣の技法を使って「昇り鯉(ごい)」を表現した。ベースは淡いピンクを基調にしたぼかし。そこに優雅に鯉が泳いでいる。55万円。

石下結城紬では優雅に泳ぐ鯉がデザインされた

そのほか京都の螺鈿(らでん)織では雲気が立ち上がる様子を描いた立涌(たてわく)の文様、山形の米沢織では夜明けの光をグラデーションで表現した。25年の1年間は同テーマでそのほかの産地とも作品を協業し、随時発表する予定だ。

これらの反物で仕立てたのは、スポーティーなシャーリングコート。素材の魅力やストーリーをしっかりと伝えるために、服のデザインを絞った。襟は高くて大きめ、身頃は反物4枚を横に連ねてたっぷりとした量感に仕上げた。袖口やウエストのギャザーが布に動きを与え、袖口のカフスが張りをプラスする。シャーリングのひもにはロープ状の組みひも「江戸打ち紐(ひも)」を使っている。

ミゼンはきもの文化に加え、他の分野の日本の作り手にフォーカスした活動も開始した。今回は自然栽培のブドウでワインなどを生産する山形のいにしえと協業し、ワインとジュースを発売した。

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