消費者の海苔離れに危機感 2年連続で不作、単価2倍に
海苔(のり)市場が大きな転換を迎えている。最大産地の有明海の凶作で2年連続50億枚を割り込む不作となり、単価はこの2年で2倍に跳ね上がった。メーカーでは昨年と今年にかけて値上げを実施、消費者の海苔離れが懸念される。商品施策では海苔を使わない商品に注力せざるを得ない動きもみられる。一方、世界の海苔の需要は増えている。近年では韓国メニューの「冷凍キンパ」などが市場をけん引し、世界の海苔の構図が一変している。
(日本食糧新聞社・三井伶子)
価格改定や規格変更
海苔業界は、22海苔年度の共販枚数が50年ぶりに50億枚台を割る48億4000万枚と大幅な減産となり、原草価格がおよそ5割高という前代未聞の事態となった。さらに資材などの諸コストや人件費などが軒並み上昇し、メーカーでは海苔商品の価格改定と規格変更を実施。過去に例のない値上げ幅が消費者の海苔の購入点数の減少を招き、市場には海苔不使用商品が増加した。
迎えた23海苔年度も、年末年始の有明海における極端な少雨傾向が栄養塩不足を招き、未曽有の大凶作とされた前年度に続いて生産枚数は49億3600万枚と2年連続50億枚を割り込み、平均共販価格は暴騰相場の前年をさらに上回る結果となった。こうした原草価格の連騰に加え、生産資材価格も上昇基調を継続していることから、メーカーは昨年に続き海苔製品の価格改定を実施している。
国内市場を見ると、海苔使用量の減少が顕著だ。日本ではコンビニエンスストアを中心とした業務用需要が70%以上占めてきたが、海苔を使わない、あるいは少量しか使わないおにぎりなどが増えている。業務用食材として高くなり過ぎてしまった海苔が敬遠され、コンビニでの使用量が大幅に減少してしまった。
高まる世界の需要
国内で海苔の消費や生産量が減る一方で、世界の海苔の需要は増えている。背景にまず挙げられるのが、日本食レストランの爆発的な増加がある。06年に2万4000店だった店舗数は23年には18万7000店と17年間で8倍に増加。また、韓国の味付海苔やタイのスナック海苔が世界中で販売され、受け入れられている。
近年目覚ましい成長をみせるのが、弁当やテイクアウトのファストフード、デリバリー(配達すし)、そして「冷凍キンパ」の急速な普及だ。いずれも健康的で食べやすくおいしいといった共通点があり、世界の海苔の需要は飛躍的に高まっている。
今後、世界の海苔の需要を満たすためには、海苔をしっかり増産しなければならない。新漁場の開発や、より優れた品種の継続的な開発、後継者の育成や事業承継などが必要となっている。
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