

森山未來主演「飛鳥クリニックは今日も雨」から覗き見る、新宿・歌舞伎町の深淵<後編>

“人間の欲望”をテーマにしたLemino制作オリジナルドラマ“欲望三部作”第3弾「飛鳥クリニックは今日も雨」(全8話)が4月17日より配信中。原作は、Xのフォロワーが90万人を超えるインフルエンサー・Z李氏による同名小説。新宿・歌舞伎町で看板のない“何でも屋”を営む主人公・リーを森山未來が演じる。今回は、東洋一の歓楽街といわれる新宿・歌舞伎町の深淵を描いた本作について、アウトローの世界で数多くの取材を行ってきた、作家で編集者の草下シンヤさんに自身の経験を交えながら作品の魅力について深掘りしてもらった。(前後編の後編)
泥臭く生々しい登場人物たち
本作の魅力のひとつに泥臭くて生々しい人間が描かれていることがある。
主人公のリーは完璧な人間ではない。ミスもするし、納得できない過去のトラウマをいつまでも引きずっている。その過去によって感情的になり、自らや周囲を危険にさらす選択もしてしまう。
リーの脇を固めるキャラクターも同様だ。お調子者で愛嬌のある相棒の純は目を離せばすぐに女性を口説いているし、同じく仲間のマサキは触らない方がいいと釘を刺されていたシノギに手を出して痛い目に遭っている。登場人物たちはみな欠点のある者ばかりで、いかにも人間臭い。
そしてこの塩梅がシリアスな展開の多い本作においてうまく機能している。修羅場を生き抜くためには、ただタフであるだけではいけない。絶望的な状況で心をふっと緩ませるユーモアやギャグが全員を勇気づけることもある。
生々しいという点でいえば、ヤクザとの掛け合いや決闘の場面も実にリアルだ。通常、ヤクザとの乱闘シーンを描こうとすれば、廃工場や波止場などのいかにも絵映えしそうな舞台を用意したくなりそうなものだが、本作の場合、デリヘルの待機場や場末のバーなどでヤクザとの死闘が繰り広げられる。
私がこれまでに目撃してきている修羅場も、その大半はなんでもない日常的な場所で起こっている。特に歌舞伎町においては、ただの街角や飲食店の店内が一瞬にして修羅場に変わってしまう。
以前、私が居酒屋で裏社会の人間に取材をしていると、たまたま反目する組織の人間が入店してきたことがある。入店した人間はわざわざ私のところに挨拶にきてくれたのだが、これまで私と穏やかに話していた人間がテーブルの下で箸を握っているのがわかった。2人が近づけばどんな事態に発展するかわからない。両者の圧力をひしひしと感じながら、お引き取り願うのに大変な苦労を要した。
裏社会の人間の恐ろしさというのは表出した暴力だけではなく、水面下に潜んでいる狂気や粘着性にある。そういった点でも本作はヤクザの恐ろしさを存分に描いている。表に出ているものが本当に正しい姿なのか、信じていいのは誰なのか、視聴者を飽きさせない仕掛けが随所に埋め込まれている。
雨と過去
緊張感漂うテンポの良いストーリー、生々しい人間ドラマ、一度、本作を見始めればその世界観にどっぷりと浸ってしまうことは請け合いだが、そこに雨の叙情が哀愁を漂わせてくる。
雨は本作において、現在と過去をつなぐ重要なモチーフだ。リーはいまだに自分を許すことのできない悲しい過去がある。かつての恋人と共に歌舞伎町を歩く光景が時折カットインし、その過去からいまだに抜け出すことができないリーの揺れる心情が描き出される。
歌舞伎町に漂う一筋のタバコの煙のように危うい存在であるリー。雨の情景が加われば、さらにその煙は揺らめき、今にもたち消えそうになってしまう。
しかし、どれだけ傷つきながらもリーがその足を止めることはない。リーを突き動かす原動力になっているのは、金や名誉といった底の浅いものではなく、かつての恋人に対する贖罪の思いや仲間に対する信頼といった人間的な感情だ。
だからこそリーは自分自身の過去に決着をつけるために進んでいくことができるのだろうし、そんなリーの姿を胸が張り裂けそうになりながらも追いかけざるを得なくなる。
T字路が多用され、迷路のように混沌とした歌舞伎町という街。監視カメラが増えたとはいえ、死角はいくらでもあるし、そこに人間の欲望や拭い去れない過去がこびりついている。雨が降れば、水滴に滲んだネオンがすべてを許すように幻想的な光を放つようになる。
「飛鳥クリニックは今日も雨」を見終わった後、そんな歌舞伎町の街角に誰もがリーの姿を探したくなるに違いない。喫茶店、サウナ、裏スロ、ヤクザ事務所、怪しい飲食店、バッティングセンター……。街角に染み付いた過去をリーは拭い去ることができたのだろうか。そしてリーはどのようなケジメを自分自身につけたのだろうか。本作を観て確かめてほしい。
歌舞伎町を思い出す時、脳裏にリーの姿が浮かんでくる。雨の日にはその姿がより強く立ち上ってくることだろう。
文/草下シンヤ
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