森山未來“リー”が距離を置く吉原光夫“山上”の不気味さと圧倒的存在感＜飛鳥クリニックは今日も雨＞

2025.04.22 18:00

森山未來が主演するLeminoオリジナルドラマ「飛鳥クリニックは今日も雨」が独占配信中。第2話は、登場シーンは少ないながらゾクッとする印象を放ったキャラクターにも焦点を当ててレビューする。(以下、ネタバレを含みます)

新宿・歌舞伎町を舞台にした本格裏社会ドラマ

詐欺・情事・外道という“人間の欲望”をテーマにしたLeminoオリジナルドラマの第3弾。同ドラマの原作は「週刊SPA！」(扶桑社)で連載中の、Xのフォロワーが90万人を超えるインフルエンサー・Z李氏による同名小説だ。東洋一の歓楽街といわれる新宿・歌舞伎町で看板のない何でも屋を営む主人公・リーが、詐欺や未成年売春といった事件の真相に迫っていく。

主人公のリーを森山、リーの仲間である純を勝地涼、リーのかつての恋人・美香を馬場ふみかが演じる。監督は、自主制作映画「SRサイタマノラッパー」(2009年)が話題を呼び、「22年目の告白私が殺人犯です」(2017年)、「あんのこと」(2024年)、「室町無頼」(2025年)などを手掛けてきた入江悠が務める。

仲間のマサキが暴力団に捕まり、リーと純が助けに行く

投資詐欺を行っていたゴールド櫻田(新納慎也)からの回収を終えたリーたち。リーは、しばらく櫻田とは距離を置くよう忠告したが、なぜかマサキ(深水元基)は櫻田につきまとっていた。

ある日、マサキからリーに電話がかかってくる。櫻田がだましていた暴力団、辰巳一家の幹部に捕まってしまい、助けを求めたのだ。純も「自業自得」と言うが、リーは自分たちがこの後ターゲットになるのもやっかいだとして、マサキたちがいるボクシングジムに向かった。

ひとまず純がマサキの腕時計を「1000万」の価値があるとして渡し、あとは櫻田から回収できると説得して難を逃れる。

ところが、腕時計が偽物だったことがバレ、櫻田に渡した1億に謝罪分を上乗せして合計2億円を用意しろと迫られた。

リーは、歌舞伎町で伝説級といわれる詐欺師・明王高梨(YOUNG DAIS)を探し出す。純がかつて高梨のピンチを救ったことがあり、「借りを返すなら今」と迫って、金を用意してもらって事を収めた。

リーが頼ることを拒否した危険な男・山上

「やっぱり欲かいても、ロクなことねぇよな」とモノローグで振り返るリー。本作は裏社会の出来事ではあるが、一般社会にも通じる格言的せりふだ。

そんな展開の中、登場シーンは短いながら存在感を放ったキャラクターがいる。リーが辰巳一家ともめていると聞きつけてやって来た暴力団・唐人会の山上(吉原光夫)だ。

「ケツ持とうか？」という山上の申し出を「自分でやります」「今まで誰にも頼らずにやってきたんで」と断ったリー。あとからその理由をマサキたちに「一回でもケツ持ちなんか頼んでみろよ。やっかいごと押し付けられて骨までしゃぶられんのがオチだよ」と説明した。

山上には暴力団幹部らしい恐ろしさが漂っていた。歌舞伎町で生きていく者の術として、リーが自分の中で一線を引くところをわきまえていることが分かりつつ、2人の間の空気感からは何らかの因縁があるようにも見え、これからの展開でも注目の人物といえる。

「エール」コンサートで話題になった実力派俳優

その山上を演じる吉原光夫は、舞台ファンにはおなじみの俳優。劇団四季出身で、退団後も数々のミュージカルの舞台で美声を響かせる活躍をしている。テレビドラマには、2020年の連続テレビ小説「エール」(NHK総合ほか)で初出演。主人公・古山裕一(窪田正孝)の妻となる関内音(二階堂ふみ)の家業である馬具店の職人頭・岩城新平を演じた。

同作は作曲家・古関裕而をモデルにした物語で、劇中で岩城について「歌がうまい」と言われるシーンはあったが、実際に歌唱シーンはなかった。ところが、最終回となる特別編「『エール』コンサート」の放送で、古関作曲の「イヨマンテの夜」を吉原が歌い出すとSNSが騒然。驚きの声量と圧倒的な歌唱力で「うまさが別格」「すごすぎ」「何者!?」などの声が上がって「岩城さん」が当時のTwitterでトレンド入りする反響を呼んだ。

その後、大河ドラマ「どうする家康」(2023年、NHK総合ほか)、「VIVANT」(2023年、TBS系)、ディズニープラスのオリジナルドラマシリーズ「ガンニバル」でも強烈な役どころで出演している吉原。“コワモテ”とも言われる顔立ちと立派な体格は、画面の中で目を引き、今後もさまざまなフィールドで活躍するに違いない。本作でも不気味な存在感が光っている。

Leminoオリジナルドラマ「飛鳥クリニックは今日も雨」(全8話、第1～2話は無料配信)は、Leminoで独占配信中。

◆文＝ザテレビジョンドラマ部