

元バレーボール日本代表・木村沙織氏が初めて語る知られざる“挫折”「避けてきたワードだった」<NumberTV>

バレーボール・日本代表の“絶対的エース”として史上初の4大会連続五輪出場を果たし、現役時代は「サオリン」の愛称で親しまれた木村沙織氏が、2月13日に配信された「NumberTV」(全24回)の第14回に登場。自身のバレー人生を振り返る木村氏は「避けてきた」“挫折”について初めて語り、思わず涙を流す場面があった。(以下、ネタバレを含みます)
きっかけは母親がやっていた“ママさんバレー”
同番組は数々のアスリートのドラマを伝えてきたスポーツ総合雑誌「Sports Graphic Number」とLeminoの共同プロジェクトによって誕生した、トップアスリートの人生にフォーカスを当てるオリジナルドキュメンタリー。苦難を乗り越えてきたプロアスリート本人が、個々の競技人生を変えた「最大の挫折」と「復活」の物語を自らの言葉で語るリアルドキュメントとなっている。
第14回は2012年のロンドン五輪では28年ぶりの銅メダル獲得に貢献し、2016年のリオ五輪ではキャプテンとしてチームをけん引した木村氏の日本女子バレーの歴史に名を刻んだ輝かしいバレー人生の裏にある“挫折”をひもとく。
木村氏は、小学2年の時に母親がママさんバレーをやっていたのをきっかけにバレーを始め、高校はバレーの名門である成徳学園高校(※現・下北沢成徳高校)に入学。1年生からレギュラーを務め、2年生で「春の高校バレー」で全国制覇を成し遂げる。
17歳にして日本代表入りし、日本女子バレーボール史上最年少となる17歳でアテネ五輪に出場。「スーパー女子高生」と呼ばれて注目を浴びた当時について、木村氏は「その当時、ワールドカップとかオリンピックとか、どの大会が一番すごいのかとか、どれが一番頑張らなければならないのかとか、どこに照準を合わせてとか、そういうのが全く分かっていなかったので、先輩方に迷惑だけはかけないように必死に背中を見て付いていこうって感じでした」と苦笑い。
高校卒業後、東レアローズに入団した木村氏はすぐに主力となり、チームを常勝軍団へと押し上げる。同時に、代表では2008年の北京五輪に出場し、大会を通してチーム最多得点をマークし、名実共にチームに貢献。木村氏は「日の丸を背負う1人のプレーヤーとしてしっかり頑張らなきゃなというのが芽生えてきた時期だったと思います」と回顧する。
“IDバレー”で大きな変化が
そんな栄光の道をたどる中、指揮官の交代によって初めての挫折を味わうことに。「IDバレー」と評されたデータに基づいたチーム作りを目指す眞鍋政義監督から「絶対的エース」という役割を与えられ、かつてない責任とプレッシャーを背負った上、「トスがセッターの手から離れてから、1秒以内にスパイカーが打つ」など、細かいルールが決められたことで、敵のブロックや守備陣形をギリギリまで見極めて打つタイプの木村氏はなじめずどんどん自分のバレーを見失ってしまう。
木村氏は、調子を崩したことで眞鍋監督から「戻してもいい」と提案されたことを明かしながら、「自分だけチームの方針と違うことが許されるのが悔しくて、『絶対やります』って意地張って言っていて…」とかたくなだったことを告白し、「あの時、もっと早く認められたら良かったなって思います。今となっては」と涙を見せる。
また、リオ五輪まで日本代表のキャプテンを務めた4年間の苦労を振り返りつつ、リオ五輪出場を決めたイタリア戦について「キャプテンになってから結構つらかったりとか、悔しかったりとか、うまくいかないほうが多かったんですけど、オリンピック(出場)を決める試合ですごくすっきりしたというか、全部背負っていたものがはがれたっていうか。(キャプテンとしてではなく1人の選手としての)“木村沙織”っていう感じでバレーしてたなと思います」と述懐。
さらに、「何かいろいろ思い出してきちゃった。『苦しかった』とか『つらかった』とか、“挫折”っていうのをあまり話したことがなくて…。認めてこなかったので、自分を。『こんなんじゃない』みたいな感じで、(挫折は)避けてきたワードだったので」と目頭を押さえた。
なお、2月27日(木)にLeminoで配信される第15回は、元サッカー日本代表の“天才レフティー”中村俊輔氏が登場する。
◆文=原田健
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