日本一カッコいい標識、直訳のクセが強すぎる… 「王者の風格」とネット民驚愕
長野市内で発見された道路標識が「あまりにカッコよすぎる」と話題に。市内の担当者は「バスのアナウンスもカッコいい」と語る。
文章を訳す上で重要となってくるのがニュアンス。直訳では、話し手の意図が伝わりづらいケースも珍しくない。
しかし以前X上では、長野市内で目撃された標識の「日本一カッコいい直訳」が話題となっていたのをご存知だろうか。
流石にカッコよすぎでは...?
ことの発端は、Xユーザー・島村悠道さんが投稿したポスト。
「長野県下カッコイイ交差点名ランキング 暫定1位」と、あまりにマニアックすぎるランキング名の綴られた投稿には、道路にて撮影したと思しき「地名」を示す標識の写真が添えられている。
なんとこちらの標識には日本語は一切なく、ただ「Old Battlefield」とだけ記されていたのだ。
「交差点の王者」と話題
「外国の標識では...?」と感じた読者もいるかと思うが、標識上部にはしっかり「Nagano Ciry」(長野市)と記されており、こちらは由緒正しき日本国のものなのだ。
あまりにカッコよすぎる標識は瞬く間に話題となり、件のポストは投稿からわずか数日で7,000件近くものリポストを記録する事態に。
Xユーザーからは「めちゃくちゃカッコいい」「これは交差点の王者」「長野どころか、日本一では?」「そもそも『古戦場』がカッコいいもんな」など、驚きと称賛の入り混じった声が多数寄せられていた。
ポスト投稿主・島村さんに話を聞いたところ、件の標識は仕事で長野を訪れた際に「古戦場入口交差点」にて撮影したものと判明。
英語表記のカッコよさにも触れつつ、島村さんは「『〜入口』という交差点名の場合、『〜 Ent.』という英語表記になるケースが往々にしてあるのですが、そのような表記になっていないことから、ひょっとして担当者の方もカッコよさを狙ったのかな? と思いました」と振り返っている。
そこで今回は話題の標識の真相を探るべく、国土交通省 関東地方整備局「長野国道事務所」をはじめとする関連機関に、取材を敢行することに。
その結果、戦国武将もビックリなエピソードが多数、明らかになったのだ...。
「標識」である以上、避けられない問題が...
https://twitter.com/toike_shimamura/status/1788565171771957494
長野県では「長野県案内サイン整備指針」を設けており、話題の「Old Battlefield」標識もその一環。
導入の経緯について、同県は「長野県を訪れる外国人観光客が急激に増加する中、国内外から来訪される方が迷うことなく、容易に目的地にたどり着けるよう、より分かりやすく景観にも配慮した案内サインが求められています」とし、様々な施策について紹介している。
また、日本語の正式名が「古戦場入口」にも関わらず「〜 Ent.」(エントランス)表記を使用していない理由について尋ねると、国土交通省「長野国道事務所」の担当者からは「信号機に取り付ける標識はスペースが限られており、そうした点を考慮しての表記となります」「例えば、実際の地名も『古戦場』の前に『川中島』がつくのが正確な表記ですが、実用性や分かりやすさを優先し、こちらの表記を採用しました」との回答が。
日本人にも外国人観光客にも配慮し、限られたスペースを最大限に活かそうとする「柔軟性」が感じられた思いである。
長野市の博物館、完全にノリノリである
続いては、今回話題となった「川中島」の古戦場について「長野市立博物館」に詳しい話を聞いてみる。
同地の詳細について、担当者は「長野市立博物館がある『川中島古戦場史跡公園』は、戦国時代に越後の戦国大名・上杉謙信と甲斐の戦国大名・武田信玄が争った『川中島の戦い』が繰り広げられた場所にあります」と説明。
約10年間の間に5回あったとされる「川中島の戦い」のうち、最も多くの死者を出すなど熾烈を極めた「第4次川中島の戦い」は、正にこの一帯で繰り広げられたという。
博物館の担当者は「謙信と信玄が一騎打ちに及んだとも伝えられ、江戸時代には武者絵や芝居の題材としても人気を博しました」とも補足しており、非常に歴史的意義が深い場所なのだ。
そんな川中島の戦いから460年が経過した令和の世では、「古戦場」はどのようなエリアとなっているのだろうか。
こちらの疑問に対し、博物館の担当者からは「川中島古戦場史跡公園には、信玄が本陣を構え、戦勝祈願をしたと言われる八幡社を中心に、高坂弾正が戦死者を弔ったとされる首塚が残っています」「また、周辺には合戦で討死した山本勘助の首と胴を繋いだという胴合橋や、同じく討死した信玄の弟・信繁の菩提を供養する典厩寺など様々な史跡があり、全国から多くの方が訪れています」との回答が。
博物館としては、日本古来の「古戦場」でなく「Old Battlefield」として話題となった件について、複雑な思いがあるのでは...と心配したが、担当者は「今回、古戦場の標識が注目を頂いている件は、大変ありがたいと思います」と、笑顔を見せる。
続けて「周辺には川中島の戦いに関連する多くの史跡がありますし、当館では謙信や武田信玄にまつわる資料も展示しています。ぜひ現地まで足をお運びいただき、戦国時代の雰囲気を感じて頂ければと思います」と、じつに懐が深いコメントを寄せてくれたのだ。
また「路線バスでは『Kawanakajima Old Battlefield』と、停留所名がカッコよく英語でアナウンスされます。機会がありましたら、ぜひ聞いてみてください(笑)」ともコメントしており、完全にノリノリである。
長野市を訪れる際は、長きに渡る歴史と浪漫が「国際化」という形で現代と違和感なく融合した魅力を、ぜひ全身で体感してほしい。
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執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)
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