WEST.のライブパフォーマンスの魅力を分析

WEST. デビュー10周年、全“魂”で歌い、熱狂を生んできた7人のライブパフォーマンスの軌跡

2024.05.17 19:00
WEST.のライブパフォーマンスの魅力を分析

4月にデビュー10周年を迎えた7人組グループ・WEST.。現在ツアー「WEST. 10th Anniversary LIVE TOUR AWARD」を開催中、18日(土)には「METROCK 2024」にも出演するなどライブに精力的なWEST.は、熱気あふれるパフォーマンスでも定評がある。本稿では「熱量」「一体感」といったワードで語られることの多い、彼らの音楽性とライブの魅力を分析。関西グループらしいコテコテ感たっぷりのデビュー曲「ええじゃないか」(2014年)でその歴史をスタートさせた彼らの音楽的変遷をまずはざっと俯瞰してみたい。

メッセージ性の強いライブへの変革

「ええじゃないか」をはじめ、「ズンドコパラダイス」(2015年)、「おーさか☆愛・EYE・哀」(2017年)など、デビュー当時は関西色を押し出したシングルが目立つ。これは直属の先輩・SUPER EIGHTも辿った流れで、言うならば、“自己紹介”期のようなものだ。その後、流れが変わったのはデビュー6年目に発表したシングル「Big Shot!!」(2019年)。今もライブで頻繁に披露するこの曲で、現在の彼らの核である“WEST.の熱量”の一端を見せると、次に仕掛けたのが「第二のデビュー曲」と7人が語るロックチューン「証拠」(2020年)だ。実はこの年、シングルのリリースは「証拠」のみ。“一曲入魂”ではないが、年末の歌番組など含め2020年は「証拠」をとにかく歌い込み、世間に着実に浸透させた。と同時に、バンドを取り入れたメッセージ性の強いライブのスタイルへと徐々に変化していったのもこの頃だったと記憶している。

「青春」と「実直さ」そして「生」

「WEST.のライブが熱過ぎる」「一度観たらハマった」「一体感が最高」……。そんな声が筆者の周りでも聞かれるようになり、2022年には増加する観客動員数が後押しして初めてのドームツアーに挑んだ7人。その定評のあるライブの魅力を伝えるにあたり、ここでは3つのキーワードを挙げて解説させてもらう。それは「青春」と「実直さ」、そして「生」だ。

関西ジュニア時代からさまざまな苦楽を共にしてきた彼らは、もともと固い絆で結ばれたグループだ。そのチームワークや風通しの良さは、生のステージでダイレクトに観客に伝わる。自然なアイコンタクトは他のアイドルグループと比べても多い方だし、誰かの沸き上がったパッションが一瞬にして伝播し、唯一無二のグルーヴが生まれる。熱気に満ちたWEST.のナンバーを1曲でもYouTubeで見てもらえれば話は早いのだが(おすすめはレーベル公式チャンネルで見られるMETROCK2022 OSAKAの「ムーンライト」)、彼らの“本気”と“エネルギー”はどんな人の胸も突き動かすパワーに満ちている。目の前の“今”に全身全霊を注ぎ、飛び跳ね、ポジティブな想いを放つパフォーマンスは時に涙が溢れてしまうほど。歌でつながる7人とファンの「青春」――。眩いきらめきを具現化したような、たまらなく愛おしい時間をWEST.のライブは届けてくれる。

「実直さ」はWEST.の人間味溢れる部分とイコールだ。ライブという場所にリスペクトを抱き、いつもひたむきに向き合ってきた7人。多岐に渡る活動の中でもライブを大事に、コツコツと磨き続けた結果、今の唯一無二の形があると思う。中でも、ここ数年、ライブをよりエモーショナルなものにしているのが重岡大毅の存在だ。楽曲の前後や途中に熱いメッセージをアドリブで放つのが恒例化しているが、一点の曇りもないその真っすぐな想いは本当に胸を揺さぶる。体験したことのない人はぜひ一度、人生観を変えられるほどの彼の言葉のシャワーを浴びてほしいと願う。

約2年前、重岡にインタビューする機会があり、その真意を尋ねたところ、彼はこう答えた。「あのスタイルは誰かに影響を受けたわけでもなく、本当に気付けば。“ステージの上で歌う”ってことを一生やっていきたくて、それに熱中して生きられれば後悔はない。そんな意識でステージに立ってたら自然とそういう言葉が出ちゃう」。さらに「とにかく何かパワーをもらって帰ってほしい」とも。その愚直な想いは他のメンバーも同じだろう。ちなみに重岡が作詞作曲を手がけたナンバーは、ライブで欠かせない「ムーンライト」や最新ツアーでも披露された「超きっと大丈夫」など今のWEST.らしさを形づくる名曲が多数。顔をくしゃくしゃにして、全“魂”で叫ぶような歌は、アイドルのそれを超越していると思う場面も少なくない。

「生」は“生っぽさ”と“生命力”の2つの意味で挙げた。前述の「証拠」や、サンボマスター山口隆が書き下ろした「週刊うまくいく曜日」(2021年)などのロックチューンは、力強いバンドを背負ったWEST.らしい情熱的なパフォーマンスと親和性抜群。生音のアナログ感×ガムシャラな7人の「生っぽさ」は“これぞライブ!”な感覚がクセになる。

3年続くツアー内のアコースティックコーナーも、各々が楽器を演奏しながら互いの息遣いを感じて歌う極上のセッションが見ものだ。「生命力」はそのままの意味で、WEST.のライブはとにかく「生きて」いる。いい意味で何が起こるか分からない“予定調和一切なし”のステージは、とてつもない生命力にあふれ、躍動している。もちろん、全力でそれに応えるファンの熱量と声援のパワーも圧巻! お互いに“巻き込み”“巻き込まれ”の熱狂空間は、いつだって最高の余韻を残して幕を閉じるのだ。

そんなWEST.の直近のライブは、5月18日(土)の「METROCK 2024」。彼らにとって今年初の野外ロックフェスとなる。会場で参戦する人は全力で楽しむべし。行けない人もABEMAで無料独占配信されるのでぜひチェックして、その熱量を感じてほしい。

取材・文=川倉由起子

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