<ネタバレ注意>『銀河の一票』政治ドラマは引く?「政治の話じゃないです、私たちの話です」
2026.05.31 11:00
提供:ママスタ☆セレクト

「政治はよくわからない」「どうせ自分が投票したところで変わらない」。そんなふうに感じている人も少なくないのではないでしょうか。総務省によると、国政選挙である第50回衆議院議員総選挙(令和6年10月)での投票率は、53.85%。2人に1人しか投票に行っていない、ということがわかります。「でも実際、投票しても変わらないでしょ?」そんな声も聞こえてきそうです。筆者自身、選挙には行くものの、「自分が投票する意味はあるのだろうか」と感じることもあります。
ところが、「もしかしたら投票で政治は変わるのかもしれない」と思わせてくれるドラマが、フジテレビ系で毎週月曜日よる10時から放送の『銀河の一票』です。
参考:総務省|選挙|国政選挙における年代別投票率について
政治家の娘・茉莉とスナックのママ・あかりのバディ
主人公は、最大与党・民政党のNo.2である幹事長・星野鷹臣(坂東彌十郎)の娘で秘書の星野茉莉(黒木華)。父を告発する手紙をきっかけに、茉莉はスナックのママである月岡あかり(野呂佳代)を都知事候補にスカウトし、都選挙戦に挑みます。
政治家の娘として育った茉莉のモットーは、宮沢賢治の『農民芸術概論綱要』にある「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という言葉。しかし、同じ理想を抱いていた父・鷹臣は、妻の死をきっかけに変わってしまいます。それでも、「いつか都知事になって東京モデルから国政を変える」ことを夢見て、父の秘書として働いていた茉莉。ところが、父を告発する手紙が届いたことで状況が一転。手紙の裏を取ろうと行動していた茉莉は、幼馴染で議員の日山流星(松下洸平)に裏切られ、鷹臣に知られたことで、茉莉は鷹臣から退職金としてレンガ(1,000万円の手切れ金)を突きつけられます。これは都知事になる茉莉の夢が途絶えたことを意味していました。
そんななか、茉莉が出会ったのはスナックのママをしている月岡あかりでした。政治について聞かれたあかりは「政治の話は、わかんないから、ごめんね。手が届かないっていうか、変えたくても変えられないし」と話します。そのあかりの想いは、多くの視聴者の感覚に近いのではないでしょうか。
けれど、あかりは苦しむ人を放っておけない性格。死のうとしていると勘違いして茉莉を引き留め、「世界がぜんたい幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ないって。あなただって、世界の一部でしょう? 私が幸せでいるために、あなたにも幸せでいてもらわないと」と伝える姿に、すっかり心を奪われた茉莉は、都知事候補としてスカウトするのでした。ママスタコミュニティのママたちからも、あかりについてこんなコメントが寄せられています。
『あかりみたいな人がお友だちにいたらいいなぁ』
『ドラマだけじゃなくて、現実にああいう人が存在してるといいのにな。いたら巡り会いたい』
誰でも不意に「穴に落ちる」かもしれないから
このドラマには、いくつもの名言や印象的なエピソードがあります。そのなかでも筆者がとくに考えさせられたのは、第4話の「穴に落ちる」という言葉でした。第4話の冒頭、鷹臣の元秘書で、今は生活困窮者の支援をするために「よろず困りごと相談所」を開いている五十嵐隼人(岩谷健司)は、
『準備も覚悟も待ってはくれず、人は不意に穴に落ちる』
といいます。落ちれば自己責任で、「その穴は避けられた、落ちない努力をするべきだった」と言われる。けれど、空いていた穴なら避けられても、穴は突然現れるのだと。
このドラマには、さまざまな「穴に落ちた人」が登場します。政治の世界で居場所を失った茉莉、五十嵐、雲井蛍(シシド・カフカ)。大切な人を失ったらしいあかり。コロナ禍での就活がうまくいかず日雇い労働をする若者。視覚障害のある親友を事故で亡くしたYouTuber。通り魔事件を起こした”無敵の人”。
もちろん、それぞれ事情は違います。それでも、「自分には関係ない」と思っていた出来事が、ある日突然、自分の身に起こるかもしれない。このドラマは、そんな不安をうっすら抱えつつも、なるべく見て見ぬふりをしながら生きる私たちに、「他人事ではない」と問いかけてきます。
その一方で、このドラマの政治家たちは、「国」を優先し、「個人」を切り捨てようとします。流星は、第1話で「俺たちは影響を与える側にいる。国を背負う人間は、個人を背負っちゃいけない」「毎日たくさんの人が亡くなっている。でもそのほとんどが国に影響を与えない」と告発についての事実を暴こうとする茉莉を諭します。
たしかに流星の言うとおり、国を動かす政治のなかでは、個人一人ひとりは小さく見えるのかもしれません。それでも、このドラマが描いているのは、「誰も取りこぼさない」ことを諦めない人たちの姿です。
「きれいごと」が鼻で笑われる世の中で「きれいなこと」を諦めない
あかりは、倒れた日雇い労働者に、「下を向いて歩いていたら、穴に落ちちゃっただけ」と声をかけます。穴に落ちた人は、穴から出る方法を知っているから落ちた人を助けられる、とも。でもその前に、失敗なんかにさせない、そんなの誰にも思わせない社会を作りたい、と語るのです。そして自分を襲った”無敵の人”に対しても、「大丈夫、話そう、聞かせて?」と話を聞こうとします。
茉莉は「誰も取りこぼさない」という自身の都知事の理想像について「きれいごとかもしれませんが……」とあかりに話します。それに対しあかりは「きれいごとじゃないよ、きれいなことだよ」「きれいなことを諦めないって、いっちばん強いよ」とも。現実でも、「きれいごと」を鼻で笑うような空気があるなかで、あかりのこの言葉が胸に沁みます。ママたちからもこんなコメントが寄せられていました。
『こんな人たちが本当の政治家だったらな』
『応援したくなるね。子どもがコロナ就活世代だったから、一歩違ってたら、うちの子も……と考えたら、他人事ではないから。世界を変えてほしい』
政治の話ではなく、私たちの話
『政治の話じゃないです。私たちの話です。私と、あなたの』
第1話で、「政治はよくわからない」というあかりに茉莉が伝えたこの言葉どおり、『銀河の一票』は遠い政治の世界を描くドラマ、ではなさそうです。先も見えず誰もが突然穴に落ちるかもしれない時代に、あなたはどう生きて、何を選ぶのか? そんな問いをエンターテイメントとして差し出してくれる作品なのかもしれません。
文・佐藤さとな 編集・編集部 イラスト・猫田カヨ
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