山田裕貴(C)モデルプレス

山田裕貴、朝ドラ「なつぞら」出演までの軌跡 “8年前のあの日”から変わらない信念<モデルプレスインタビュー前編>

2019.06.24 08:15

女優の広瀬すずがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『なつぞら』(NHK総合/月曜~土曜あさ8時)で小畑雪次郎役を演じる俳優の山田裕貴(やまだ・ゆうき/28)が、モデルプレスのインタビューに応じた。

100作目の朝ドラ『なつぞら』

朝ドラ節目の100作目となる『なつぞら』は脚本家・大森寿美男氏によるオリジナル作品。戦争で両親を失いながらも北海道・十勝でたくましく育った広瀬演じるヒロイン・奥原なつが、当時まだ「漫画映画」と呼ばれていたアニメーションの世界に挑む姿を描く。

山田裕貴(C)NHK
山田裕貴(C)NHK
山田演じる雪次郎は、なつの幼なじみで菓子屋・雪月の一人息子。農業高校時代には演劇にハマり、なつを演劇部に誘った。菓子職人を目指してなつと一緒に上京し「川村屋」で修行に励んでいたが、演劇への思いを断ち切れず店を辞めることを決意する。

幾度のオーディション落選を経て “最後のチャンス”を掴んだ

山田裕貴(C)モデルプレス
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20歳で『海賊戦隊ゴーカイジャー』(テレビ朝日)のゴーカイブルー/ジョー・ギブケン役で俳優デビューしてから8年。幅広い作品で経験を重ね、オーディションを経て初の朝ドラ出演を射止めた。その役として“役を生きること、普通にいること”を信条にする山田らしく、内に秘める熱い思いを静かに雪次郎に投影。視聴者の心を掴んでいる。

― 今回が朝ドラ初出演。これまでにも何回かオーディションを受けられていたそうですね。

山田:はい。もう5、6年受けてたんじゃないかな。最初は「もうこれ受かるものじゃないな」と思っていて。オーディションが終わって結果が出るまで2週間ぐらいあったんですけど、マネージャーさんには「まだ来てませんか!?結果」って催促してました(笑)。待っている間が嫌で嫌で、「来るなら早く来てくれ!とどめを刺してくれ」って感じ。2週間目入ったぐらいから、ようやく忘れ始めてたんですよ。「もういいや、多分ないない!切り替えていこう」みたいな。でもある日、朝ふと起きた時になんかビビッと来て、「結果いつ来んだよ!」って起き上がった瞬間叫んだら、その日にマネージャーさんから合格の電話がかかってきたんです。

― すごいですね。予知?

山田:びっくりしましたね。「あ~そうですか。どういう役ですか?」とか、わりと冷静に話を聞いた気がします。首の皮一枚つながったじゃないですけど、本当にひょいっと引っ張り上げてもらった感覚です(笑)。高校生役もやってきましたけど、歳も20代後半のアラサーに差し掛かっていて、今回がダメだったらもうないかもなって思ってたんで。

山田裕貴(C)モデルプレス
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― 今回、初めての朝ドラの現場でも吉沢亮さんをはじめ共演経験のある方がたくさんいらっしゃるのは、やはり安心感がありますか?

山田:そうですね。でも、共演してこなかった方ともすごく仲良くやらせてもらっていて、本当に楽しいです。最初は朝ドラのヒロインが本当に大変だと聞いていたので、すずちゃんのことを心配していたんですけど、撮影前にも「ジム行ってきた」とか言っていて、「この子、バケモノだな」と(笑)。本当にすずちゃんがめちゃくちゃ楽しそうにやってくれるので、その雰囲気がやっぱり皆に伝染するんですよね。だから僕も、すずちゃんとしても、なっちゃんとしても、楽しくいさせてあげられたらいいなと思います。同級生役ですけど、8個も上なんで、どうしても見守る気持ちが出ちゃう(笑)。

でも、楽しく進んでるから撮影があっという間なんですよ。撮ってる分量と実際のオンエアのズレがもうよく分からなくなってます(笑)。本当に楽しいですね、誰と絡んでも。

“癒やしの雪次郎”と話題「まさにそれが狙い」

山田裕貴(C)NHK
山田裕貴(C)NHK
― 視聴者からは雪次郎が「可愛い」「癒やし」という反響が多く上がっていました。演じる上で心がけたことは?

山田:まさにそれが狙いでした。最初の方は特に戦争など話が重くなる部分があったので、ちょっと休憩所のような、ふんわり軽くできる存在が雪次郎であればいいなと。

― まさにそうなっていると思います。雪次郎はどんな人物だと考えていますか?

山田:雪次郎はお菓子屋「雪月」の一人息子ですが、あの大変な時代にお菓子屋ができるということはちょっと裕福だったんじゃないかと思います。それでばあちゃん、母ちゃん、父ちゃんに可愛がられてすごく伸び伸び育った子なんじゃないかなって。北海道という土地柄もあり、広い大地と家族に愛されて育ったら、あの時代からするとちょっとなんか抜けてるというか、ほんわかした子になるんじゃないかという考えがありました。

芝居が好きという部分では自分と重なる部分が多いです。脚本の大森さんが当て書きをしてくださっているのかなと思うほど、自分が思っている言葉が本に並んでくるので、「どこまで僕を調べ上げてくれたんだろう?」と思うぐらい。やっぱり僕がやることによって、どうしても熱くなってくるんですけど。それは中川大志くんや吉沢亮くんに言われました。「やっぱ熱いね」って(笑)。熱くしようと思ってないんですけど、僕は。でも、それもまた良い化学反応だし、僕がやる意味があったかなと思います。

山田裕貴(C)NHK
山田裕貴(C)NHK
― 吉沢さんや中川さんのほか、清原翔さん、岡田将生さん、いろんなタイプの男性が登場しています。その中でのバランスというか、雪次郎として意識したことはありますか?

山田:一番モテなさそうなやつでいようかなと思っていました。僕がすごい懸念していたのは、「美男美女出すぎじゃない?」と言われることだったんです。やっぱり普通の人たちのお話だから。普通の、と言っても北海道を開拓した方がいたりもするんですけど、そういう中でちゃんと普通でいられるように。本当に雪次郎と同じことを言ってるんですけど、普通に生きることが重要だなと思っていました。毎回そう思いながらどの作品もやるんですけど、役を生きる。お芝居にせずに。

朝ドラに出ることが決まったタイミングで1回、視聴者の人たちのことを考えてお芝居をするのか、自然にお芝居をやればいいのか悩んだ時があったんです。ちょっとオーバーにやったり、可愛くやったり、かっこよくやってみたり。でもやっぱり普通に生きてる人たちはそう思って生きてないからやらないよな、というところに落ち着いて。

雪次郎はかっこよくいようと思っているわけじゃないし、一生懸命生きてるだけ。そうやってかっこよくやろうとせず、作品の中に溶け込もうとしてきたことが多分僕の強みであり、それが繋がって今ここにいると思ってます。

山田裕貴(C)モデルプレス
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― 方向性に迷っていた時、誰かに相談とかはされなかったんですか?

山田:基本相談しないです。Twitterに書いちゃいますね(笑)。でもそれを相談とも思ってないというか、「僕はこう思っています」という提示だけ。人に喋ってこうだよ、ああだよって言われると、後々その人のせいにしちゃいそうになるし、自分で頑張った感覚をちゃんと味わなきゃと思います。

相談というか悩みで言ったら、朝ドラ終わった後の方が気になりますよね。朝ドラで俳優生活終わり、ということじゃないので。「朝ドラが決まりました」という瞬間から、じゃあどこまで知ってもらえるのかはある程度想像がつくじゃないですか。それを下回るか上回るかは自分の芝居次第で。作品が決まった時から「終わった時はどうなってるかな」と考えるのは、デビュー作の『ゴーカイジャー』が決まった8年前のあの日からずっとそうです。それはどの作品をやっていても変わらないですね。

『ゆきぞら』始まる

山田裕貴(C)モデルプレス
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― ここまでを振り返って印象深いシーンはありますか?

山田:いっぱいあるんですけど、雪次郎はここからが面白くなってくるので。ナレーションの内村(光良)さんに「雪次郎の乱が始まる」と言われるくらい怒涛の展開が始まります。これはすずちゃんが言ってたんですけど、「こんなに雪次郎の話って、もうこれヒロイン雪次郎じゃん。『ゆきぞら』じゃん」って。すごい上手いこと言ってました(笑)。

― 語呂が良いですね(笑)。ちなみに雪次郎は、ずっと夕見子ちゃんが好きだと思っているのですが、そのあたりは?

山田:それもいろいろあるんですよ(意味深)。

― そうなんですね。今後、なっちゃんの恋にも絡んでくるんでしょうか?

山田:どうですかね。でも、なっちゃんの方がずっとそばにいる雪次郎を好きになる可能性もあるかもしれないし。

― 気になります。では最後に、いつも伺っているんですが、朝ドラ出演という1つの夢を叶えた今、山田さんが考える「夢を叶える秘訣」を教えて下さい。

山田:夢を夢だと思ってないです。僕の夢というか目標は、まだ全然叶わない。でも、それも通過点と言えなきゃダメだと思うし、通過点にしなきゃいけないと思う。そこで終わらせちゃったら夢になっちゃうんで、“俳優・山田裕貴”を終わらせないように頑張るだけです。

夢って近いし、遠いし、でもフッと寄ってきてくれる場合もある。今回の朝ドラみたいに。案外それだけを思ってる時はダメだったりして。人生何が起こるか分からないから、夢を夢だと思わないことですかね。

― ありがとうございました。

『ゆきぞら』と命名された怒涛の展開を語るインタビューも後日公開予定。(modelpress編集部)

山田裕貴(C)モデルプレス
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山田裕貴(やまだ・ゆうき)プロフィール

1990年9月18日生まれ。愛知県出身。2011年俳優デビュー。近年の主な出演作には映画『あゝ、荒野』『万引き家族』、ドラマでは『ホリデイラブ』、『健康で文化的な最低限度の生活』、主演映画『あの頃、君を追いかけた』、『HiGH&LOW』シリーズ、『特捜9』シリーズなど。今後の待機作として映画「HiGH&LOW THE WORST」(2019年10月4日公開)、「嘘八百 続編」(2020年新春公開予定)、主演舞台「終わりのない」(2019年10月29日~世田谷パブリックシアターほか)がある。

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