「反抗期がない子ども」は、親子関係に問題があるのか?【脳科学者が解説】
【脳科学者が解説】子どもに反抗期がないことを心配する親御さんは珍しくありません。「反抗期がない子は、ちゃんと育たない」という話は本当でしょうか? 発達と親子関係について、脳科学者の知見から解説します。
Q. 「反抗期がない子は、ちゃんと育たない」というのは本当でしょうか?
Q. 「もうすぐ高校生になる息子がいるのですが、これまで反抗期というものを経験したことがありません。保護者会などで集まると、子どもの反抗期に関する悩みで持ち切りになるのですが、共感できるエピソードが我が家にはほとんどないのです。
『反抗期がない子は、ちゃんと育たない』『まともな大人にならない』といった話も聞きますが、息子や我が家の親子関係は普通ではないのでしょうか?」
A. まったく心配ありません。幸せなことだと受け止めましょう
まったく心配ありません。親子間での衝突がなく済むのであれば、むしろ幸せなことです。
一般に「反抗期」とは、他人の言うことを拒否したり、反抗的な行動をとったりしやすい時期を指します。個人差はありますが、自分で立って歩けるようになってから2歳くらいまでの幼児期にみられる「第一次反抗期」と、小学校高学年から中学生くらいの思春期にみられる「第二次反抗期」に大きく分けられます。
少しの違いはありますが、いずれも子どもが肉体的にも精神的にも成長し、自分の世界を広げていく過程で起こるものです。自分にとって自由な世界を広げようとする子どもと、それを止めようとする親の間で、それまでの親子関係の距離感が変化し、ぶつかりが生じます。
子どもがどのようなことを求め、親がそれにどう関わるかによって、衝突が起こるかどうかが変わります。「反抗期があるか、ないか(あったとしても気付かない程度か)」は、それぞれの家庭や親子の関係によってさまざまで、「こちらでないとおかしい」というものではありません。
たとえるならば、同じ道を行きかう人がすれ違うときのようなものです。右側と左側のどちらを歩いていたかによって、お互いが邪魔になることもあれば、何事もなく通れることもあるでしょう。邪魔になりそうなときも、うまく譲り合えれば、トラブルにはなりません。反抗期とは、そのようなものです。
「反抗期があった子どものほうが、いい大人になる」などと説明されることもありますが、これはある意味、反抗期で悩むご家庭に対する「励まし」の言葉に過ぎないと考えていいでしょう。
確かに、反抗期が大変だった分、その経験が糧になり、他人のことを思いやれる大人に成長する方もいます。しかし、それはもともと、その方の素養がよかったからに過ぎません。逆に幼いころから素行が悪く、大人になってもその性格のままで周囲に迷惑をかけてしまう方もいます。
反抗期は、子どもの成長に必ずしも欠かせないものではありません。反抗する必要がなかったのであれば、幸せなことです。息子さんに反抗期が来ず、親子のコミュニケーションがとれているのであれば、それはあなたとの関係がうまくいっている証拠だと、自信をもってください。
もしあなた自身が、特に反抗期もなく育ち、今も親子関係がいいのであれば、自分がやりたいことを思うようにさせてくれた親御さんに感謝しましょう。
阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
執筆者:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)
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