「景観を損ねる」と苦情を受けた我が家→洗濯物が急に増えた事情を、誰にも言えずにいた話
急に増えた洗濯物の山
母を引き取ったのは、ゴールデンウィーク明けのことでした。一人暮らしをしていた70代の母の足腰が急に弱り、当面は我が家で世話をすることになったのです。
それまで3人分だった洗濯物が、母の介護用パジャマやタオル、シーツが加わって倍近くに増えました。ベランダの物干し竿だけでは間に合わず、庭にも竿を出して並べる日が続きました。
「近所からどう見えるかな」と頭をよぎることはありました。でも母の食事や通院の付き添いで一日が回らず、洗濯物の見え方まで気を配る余裕は、正直なかったのです。
玄関に立っていた自治会長
夕方、インターホンが鳴って画面を見ると、自治会長と並んで隣の奥さんが立っていました。何の用件か想像もつかないまま、玄関を開けたのを覚えています。
自治会長は柔らかい口調で「ご近所から、洗濯物が景観を損ねるとご相談がありまして」と切り出しました。私はその場で立ちつくしました。
頭をよぎったのは「やっぱり、見えていたんだ」という思いでした。気にしながら気にしないふりをしていた自分の弱さが、急に突きつけられたようでした。
「母を引き取ったばかりで」と頭を下げて
気がつくと、私は「申し訳ありません」を何度も口にしながら頭を下げていました。
「洗濯物が多くてすみません。母を引き取ったばかりで、まだ干す場所のやりくりがついていなくて」
そう話しながら、本当は最初から近所に一声かけておけば良かったのだと思いました。けれど「同情されたくない」「迷惑をかける家だと思われたくない」という見栄が先に立って、私は誰にも事情を話せずにいたのです。
下を向いた視界の端に、隣の奥さんがじっと黙って立っているのが見えました。
そして...
翌朝、洗濯機を回し終えた頃にインターホンが鳴りました。画面に映ったのは、前日に苦情で訪れた隣の奥さんでした。
身構えながら玄関を開けると、奥さんは少し緊張した様子で「何か困ったことがあれば声をかけてください」とだけ伝えてくれました。
「ありがとうございます。本当に助かります」。素直にそう答えていました。
苦情を入れたのは、確かにこの人かもしれません。でも事情を黙ったまま、勝手に世間体を気にして閉じこもっていたのは私の方でした。あの朝の短いやりとりで、私たちの間にあった見えない壁が、少しだけ低くなった気がしています。
(40代女性・パート)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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