実家の味を妻に求めて何が悪いと思っていた俺へ、母が向けた厳しい一言
「母さんの味」が当たり前だった俺
俺は子どもの頃から母の味で育ちました。煮物も味噌汁も、家庭の味といえば母の料理だったのです。 結婚してからも、その感覚は何も変わりませんでした。妻の料理がまずいわけではありません。ただ、「ちょっと違うな」と感じるたび、俺はそのまま口にしていたのです。
「実家のほうが美味しい」というのは、俺にとっては悪気のない感想でした。妻も笑って受け流してくれていたので、嫌だとは思っていないのだろうと勝手に決めつけていたのだと思います。平日も休日も、母の家でも、俺は同じように比較を続けていました。
持参した肉じゃがに、また同じことを言った俺
その日、妻はわざわざ前日から仕込んだ肉じゃがを実家に持っていきました。母の好物を覚えていてくれて、出汁の取り方にもこだわっていたようです。 3人で食卓を囲み、母の煮物と並んだ妻の肉じゃがに、俺は何の気なしに箸を伸ばしました。そして、いつもの癖で口にしてしまったのです。 「やっぱり母さんの味と違うな」 本当に、それだけのつもりでした。けれど隣で妻が箸を止めたのが、視界の端に入っていました。気まずさを感じながらも、いつものように笑い飛ばせばいいかと思っていたのです。
母から放たれた、聞いたことのない声
そのとき、母が箸を置きました。聞いたことのないような硬い声でした。 「いい加減にしなさい」 顔を上げると、母は厳しい目で俺を見ていました。「お嫁さんが毎日作ってくれてるのに失礼でしょう」 追い打ちのように、母は続けます。 「私の料理だって最初はお父さんに文句言われたのよ」頭を殴られたような感覚でした。母も若い頃、父に同じことをされて傷ついていた。それなのに俺は、その同じことを妻に毎日のように繰り返していたのです。返す言葉が見つかりませんでした。
そして...
帰りの車の中、俺はずっと運転に集中するふりをしていました。本当は、隣に座る妻に何と声をかければいいのか、わからなかっただけです。 家に着いてから何時間も、自分の言葉を探し続けました。妻がどんな気持ちで聞いていたのか、想像するほど情けなくなりました。 夜、リビングでテレビを観ていた妻のところまで歩いていって、隣に座り直しました。 「いつもありがとう」 言えたのは、それだけでした。短い一言ですが、俺にとっては今までで一番重い感謝だったのです。母の言葉がなければ、俺はずっと気づかないままだったかもしれません。
(30代男性・営業職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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