「嫁の実家には帰らなくていい」と夫→私の父が倒れた日、駆けつけたのは義母だった
気遣いだと思っていた言葉
夫はもともと、家族行事に積極的なタイプではありませんでした。お盆も年末年始も、自分の実家にすら帰らない人で、私の帰省にも消極的です。「嫁の実家には帰らなくていい」「お互い、自分のペースでいよう」と言われたとき、私はそれを夫なりの気遣いだと受け取っていました。
私の実家は新幹線で2時間の地方都市にあります。父は自営業で、忙しい中でもいつも娘を気にかけてくれる人でした。結婚してからは年に一度か二度しか帰れていませんでしたが、父は「無理しなくていい」と笑っていました。
夫の言葉を、私は素直に信じていたのです。「実家に縛られなくていい」と言ってもらえる夫に、感謝すらしていました。
父が倒れた朝の電話
それは10月のある火曜日、朝7時のことでした。母から電話が入ったのです。「お父さんが倒れて、救急車で運ばれた」スマホを握ったまま、母の話を聞き続けるしかできませんでした。
夫の出張先にもすぐ電話をかけ、「お父さんが倒れたの。すぐ実家に行きたいんだけど、一緒に来てくれない?」と伝えると、夫は少し黙ったあと、こう答えました。
「悪い、今日は仕事が抜けられないんだ。一人で行ってくれるか」
期待していたわけではありませんが、私は「分かった」とだけ返して通話を切りました。新幹線に乗り込み、流れる景色を見ながら、夫の「嫁の実家には帰らなくていい」という言葉が頭の中で反響していました。
あれは本当に気遣いだったのかと、私は初めて疑い始めていました。
駆けつけてくれたのは義母だった
新幹線が動き出して30分ほど経った頃、知らない番号から電話が入りました。義母でした。
「お父さんのこと、お母さまからお電話いただいて。私、これから新幹線に乗って向かうから—。あなた一人じゃ大変でしょう」
聞き間違いかと思いました。義母とは、結婚式と義実家の集まりで会う程度の関係です。「いいんですか」と尋ねると、義母は穏やかに「親が倒れたときに、嫁さん一人で動かせるわけがないでしょう」と。
最寄駅で合流した義母は、手土産と、私のための着替えと、おにぎりまで用意していました。「病院、付き添うわよ。あなた、ご飯食べてないでしょう」その細やかさに、こらえていたものがにじみました。
そして...
父は一般病棟へ移り、容態は落ち着きました。義母は3日間、私と母の傍にいてくれました。母は何度も「お義母さま」と頭を下げ、私はその様子を、感謝とは違う複雑な気持ちで見ていました。
夫からは、その日の夜に「ごめん、明日行く」とだけメッセージが届きました。彼が翌日に到着したとき、義母は何も責めず「来てくれてありがとう」と言うだけ。夫が、母の前でうつむいたまま黙っていた背中を、私は今も忘れません。
「嫁の実家には帰らなくていい」と言ってくれた夫の言葉を、私はもう以前のようには受け取れないでしょう。あれは気遣いの言葉ではなく、夫が自分の家族と向き合えない人だからこその言葉だった。義母の存在が、それを教えてくれました。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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