「事務職って楽でいいよね」と言う営業部→大混乱の日、頼られたのは事務の私だった
笑って受け流す毎日
毎朝8時に出社して、受注データの入力、伝票の照合、備品の発注管理、取引先への確認連絡。一つひとつは地味でも、ミスが許されない作業の連続です。それでも社内での扱いは「座ってるだけの仕事」でした。
ある日のランチの席で、営業部の主任がこう言いました。「事務職って楽でいいよね、定時で帰れるし」。周囲がふっと笑い、私も「そうですかね」と返しました。胸の奥にちくりとした痛みがありましたが、顔には出しませんでした。反論するほどのことでもない。そう自分に言い聞かせていました。
月曜の朝、画面が真っ赤になった
翌週の月曜日、出社して端末を立ち上げた瞬間、画面にエラーが並んでいました。「今月の受注データが全部消えてます」。私が上長に報告すると、フロア全体が一気にざわつき始めました。
営業部は午前中にクライアントへ見積もりを出す予定で、そのもとになるデータがすべて消えている。電話が鳴り始め、営業担当者たちの表情がみるみる険しくなっていくのがわかりました。けれど、誰も原因を調べようとしません。隣の席の同僚と目を合わせ、私たちは黙ってバックアップの確認作業に入りました。
頼られる側になった瞬間
しばらくして、あの主任が私の席にやってきました。「バックアップから戻せないか?」。つい先日「楽でいいよね」と言ったその人が、困り果てた顔で立っていました。
「やってみます」と答え、過去のバックアップ履歴を一件ずつ確認していきました。幸い、先週金曜の時点のデータが残っていて、3時間かけて大部分を復旧できました。その間、営業部からは何度も「まだ?」と声がかかりました。手が止まるたびに焦りが込み上げましたが、ここでミスをすれば取り返しがつきません。指先に力を入れて、ひとつずつ確認を続けました。
そして...
データが復旧した夕方、主任が「助かった。本当にありがとう」と頭を下げました。その言葉はうれしかったはずなのに、素直に喜べない自分がいました。
普段は見えていないのに、困ったときだけ頼りにされる。それって「楽な仕事」の裏返しなのかもしれません。あの日、定時を2時間過ぎてようやく帰り支度をしながら、ふと思いました。楽でいいよね、か。そう言える人は、きっと一度もこの席に座ったことがないのだと思います。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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