打ちかけた「スポーツドリンク買っていく」を誤送信した俺。焦って返した先に、彼女の笑顔があった話
「風邪ひいた」に反射的に動いた指
オフィスを出て駅に向かう途中、スマホが鳴りました。画面に表示された「風邪ひいた」のに、胸のあたりがぎゅっとなりました。彼女は滅多にこういう弱音を送ってこない人です。よほど具合が悪いのだろう、と思いました。
すぐに返事を打とうとして、近くにドラッグストアがあるのを思い出したのです。まずはスポーツドリンクと、それから熱がある時に食べやすいものを買っていこう。頭の中で段取りを組みながら、片手で「スポーツドリンク買っていく」と打ち始めました。
人混みで肩がぶつかった拍子に、指先が画面に触れてしまいました。歩きながらの操作は、あまり慣れていなかったのです。
誤送信から始まる応酬
手元を見ると、「スポーツドリンク」という文字が送信済みに。しまった、と思わず足が止まりました。続きを打とうとしたその時、彼女からの返信が届きました。「何それ」。
その一言に、はっきりとした呆れが滲んでいるのがわかりました。そうだよな、と苦笑いしながら、急いで「買ってく」とだけ返したのです。本当は「スポーツドリンク買っていく途中で誤送信してごめん」と送りたかったのに、焦れば焦るほど指が短い単語しか打てないのが、自分でも情けなかったのです。
すぐに「え」と返信が来ました。ドラッグストアに駆け込みながら「あとゼリー」。彼女から「いるの?」。少し考えて「いる」と返しました。
いっぱいになったカゴと、追いつかない言葉
店内を回りながら、スポーツドリンク、ゼリー、保冷剤。熱の時に彼女が何を欲しがるかを考えてカゴに放り込んでいったのです。
会計を待つ間に、送ってしまった返信をさかのぼりました。自分で見ても、これは冷たいと思われても仕方がないやりとりです。ちゃんとした文章で「すぐ行くから待ってて」と送ればよかった。でも、今さら長い文を送るよりも、駆けつけるほうが先だと思い直しました。
そして…
ドアを開けた彼女は、少し赤い顔をしながらも、笑っていました。「メッセージは下手だけど行動は早いね」。その言葉に、張り詰めていたものがすっと抜けていったのです。
文章を組み立てるのは、今も本当に苦手です。長い説明をしようとすると、かえって言葉が詰まってしまう。それでも、心配な気持ちだけは足を動かす力に変えられる人でありたいと、この夜にあらためて思いました。彼女の風邪が治ったら、次はちゃんと「大丈夫?」と先に送れるように、少しずつ練習していきたいのです。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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