毎年「主役、やってみたい?」と聞いてきた私が、娘の本音を知った日
先生への相談
発表会の時期が近づくと、私は担任の先生に時間をもらうようにしていました。「うちの子、主役が向いていると思うのですが」と伝えて、役を考えてもらうためです。押しつけのつもりはありませんでした。娘は練習熱心で、家でも毎日台詞を繰り返していた。それを先生に伝えたかっただけ。
私自身、幼い頃は引っ込み思案で、発表会ではいつも端の役でした。娘には同じ思いをさせたくない。それが、ずっと私を動かしてきた理由でした。
「うん、やってみる」
主役を打診された夜、娘に「主役、やってみたい?」と聞きました。娘は少し間を置いてから「うん、やってみる」と言いました。その顔を見て、私は迷いなく「お願いします」と先生に伝えました。
今思えば、あの「少し間」が気になります。娘は何かを飲み込んでから「うん」と言ったのではないか。当時の私には、そこまで見えていませんでした。
届いた言葉
発表会から1週間後、公園で娘と話したというママから連絡がありました。内容を聞いて、驚きました。「本当はやりたくなかった。お友だちのほうが上手だったもん」。娘がそう話していたというのです。
娘は一度も私に言いませんでした。言えなかったのかもしれない。私が先回りして「やってみたい?」と聞いてしまったから。
そして...
その夜、娘の寝顔を見ながら、唇をきゅっと噛みました。あの子のためだと思っていた。でも本当は、幼い頃の自分を晴らしたかっただけだったのかもしれない。翌朝、「来年の発表会、どんな役がやりたい?」と聞くと、娘はぱっと顔を輝かせて「木の役! ずっとやりたかったの!」と言いました。私はしばらく、返事ができませんでした。来年の舞台で木を演じる娘を、今度こそ私がちゃんと見届けようと思いました。
(30代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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