「お前の親の介護なんか知らない」と言った夜から、俺は妻に何も聞けなくなっていた
できない自分を認めたくなかった
義母の介護が始まってから、妻の帰りが遅くなりました。週に何度も義実家へ通い、ケアマネの名前を覚えて、介護記録をノートにつけていた。自分には何もできない、という感覚がじわじわと大きくなっていきました。
「一度、一緒に来てほしい」と言われるたびに、どうすればいいかわからなくて「わかった」と言って忘れていました。情けないとは思っていました。でも認めたくなかった。何もできていない、という事実を。
ある水曜の夜、23時を過ぎて帰ってきた妻に「もう少し協力してほしい」と言われたとき、溜まっていた何かが出てしまいました。「お前の親の介護なんか知らない」と。
消えなかった言葉
「お前の親の介護なんか知らない」。なぜそんな言葉が出たのか、今でもよくわからない。無力さを妻にぶつけて、矢印を逆向きにしたかっただけだったと思う。
言った瞬間、やってしまったと思いました。妻の顔が固まった。反論もせず、ため息もつかず、ただ部屋へ戻っていきました。「待って」とも「ごめん」とも言えなかった。
翌朝も、翌々朝も、妻は普通に朝食を用意していました。ただ、義母の話をしなくなっただけで。俺からも聞けなかった。謝ろうとするたびに、あの夜の妻の横顔が浮かんで、言葉を引っ込めていました。
父が倒れた夜
父が救急搬送されたという連絡が入ったのは、そんな夜の一つでした。病院名を確認しながら、頭の片隅で「妻にどう伝えるか」を考えていました。「来てほしい」とは言いにくかった。でも、一人では足が動かなかった。
「父が倒れた。病院に来てほしい」と言うと、声が震えていました。
妻は少し黙っていました。「知らない」と言われても仕方ないと思った。でも妻の声は落ち着いていました。「わかってる。」と。
そして…
妻はその後、俺の代わりに父の担当医と連絡を取り、入院の段取りを進めてくれていました。聞いてもいないのに、介護認定の手続きについて調べてくれていた。
「ありがとう」と言ったとき、妻は「母のときに覚えたから」とだけ言いました。返す言葉がありませんでした。
(40代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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