「外注で対応できる」と彼女を切った私が、工場の床に座り込んだ日
10年間、見ていなかったもの
彼女が入社してから10年以上、工場の機械は大きなトラブルなく動き続けてきました。マニュアルもほとんどない古い設備を、ひとりで独学で維持してきた。休日の呼び出しにも応じてきた。そのことは知っていましたが、どこか「あって当たり前」の話として処理していました。
業績が悪化し、人員を整理しなければならない局面で、私が最初に思い浮かべたのが「メンテナンスは外注に切り替えよう」という考えでした。女性スタッフがひとりでこなしていること、外部の業者なら複数社で対応できる。そのほうが安定する、と自分に言い聞かせました。
「わかりました」の返信
「メンテナンスは外注で対応できるから、今月末で退職してもらえないか」
メッセージを送ってから、返信が来るまでしばらく間がありました。返ってきたのは「わかりました」の文字でした。
引き継ぎをしようとしましたが、後任もおらず、外注業者の担当者との顔合わせも日程が合わなかった。形だけの挨拶で終わりました。それでもまだ「なんとかなる」という感覚がありました。
止まった工場で
退職から2カ月が過ぎた頃、工場のメイン機械が止まりました。製造ラインが完全に停止した状態で外注業者を呼びましたが、「このメーカーの機械は専門外です」と言い、手をつけないまま帰っていきました。
汗ばんだ手でスマホを持ち、彼女にメッセージを打ちました。
「工場のメイン機械が止まって、外注業者も手が出せない状態。お願いだから見に来てくれないか」
「君しかわからない機械だから。助けてほしい」
送りながら、指先が少し震えていました。切り捨てておいて「助けてほしい」と。
そして...
「申し訳ありませんが、現在は別の会社でお世話になっています。対応は難しいです」
それ以上のメッセージは来ませんでした。怒りも、皮肉もなかった。その簡潔さがかえって、胸の奥に重く残りました。
誰もいなくなった工場で、止まったままの機械の前に座り込みました。10年以上ここを守ってくれていた人を「外注で代わりがきく」と判断した。その誤りに、ようやく気がつきました。彼女が次の職場できちんと評価されているとすれば、それは私への答えでもあると思います。
(50代男性・製造業管理職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
関連記事
「コラム」カテゴリーの最新記事
-
【誕生月別】「俺が守る」有言実行な男性ランキング<第1位~第3位>ハウコレ -
【星座別】2026年5月、最も恋愛に奮闘する女性ランキング<第1位〜第3位>ハウコレ -
「あそこのご主人、外国人らしいよ」ご近所のヒソヒソ話に耐えた3ヶ月と、態度が変わったある日曜の朝ハウコレ -
【星座別】恋愛中に出やすい「甘え方の癖」<おひつじ座〜おとめ座>ハウコレ -
『学歴がないと惨めになる!』嫁と孫を怒鳴る義母。しかし数年後⇒成長した【孫の行動】に…義母が涙したワケGrapps -
彼氏がいるのに別の人が気になってしまう。その罪悪感、実は向き合い方次第で答えが出ますハウコレ -
「生ゴミ食わせんな!」娘作のハンバーグを“捨てた”夫!?しかし直後⇒「な…!?」夫が突然青ざめたワケ。愛カツ -
デートのたびに「楽しかった」としか送れなかった→彼女に問われて気づいた、一言に詰め込んでいた全部のことハウコレ -
【誕生月別】「俺が守る」有言実行な男性ランキング<最下位~第10位>ハウコレ