部下の仕事を「この程度」と舐めていた俺が、午前中でギブアップして逃げ出した話
「この程度」という思い込み
部下が毎日やっているエクセルのデータ入力。正直、楽な仕事だと思っていました。伝票を見て数字を打ち込むだけだろう、と。だから夕方に「疲れた」という声が聞こえたとき、つい口が滑りました。
「この程度で疲れるな。俺の若い頃はもっと大変だった」。言った瞬間、部下の表情からすっと光が消えたのを覚えています。周りの目もあった。でもそのときは、甘えたことを言う部下のほうが悪いと本気で思っていたのです。
30分で折れた自信
翌朝、自分で証明してやろうと部下の席に座りました。ところが画面を開いて愕然としました。入力規則がセルごとに違い、プルダウンの選択肢は50種類以上。一箇所間違えると関連するセルが真っ赤になり、どこを直せばいいのかわからなくなります。
30分で首と肩がガチガチになり、「ちょっと休憩」と席を立ちました。1時間後に戻っても目がかすんで画面の文字がまともに読めず、思わず目薬に手が伸びました。部下は毎日、この状態を8時間続けている。その事実が、じわじわと胸に効いてきました。
「会議がある」という嘘
結局、午前中で限界が来ました。「今日は午後から会議があるから」。自分でも情けない言い訳でした。午後に会議なんてないことは、スケジュール表を共有している部下にはバレているはずです。
自席に戻り、入力できた行数を数えてみました。たったの400行。部下は毎日3000行を8時間でこなしている。俺が昨日「この程度」と切り捨てた仕事の、7分の1すら満足にできなかったのです。
そして…
夕方、部下のデスクに向かいました。「あの作業、いつも何時間やってるの?」。部下は少し間を置いて「8時間です」と答えました。その声に怒りはなく、ただ淡々としていて、それが余計にこたえました。
面と向かって「すまなかった」と言えない自分が情けなくて、帰りにコンビニで缶コーヒーを買いました。翌朝、誰よりも早く出社して部下のデスクに置き、付箋に「昨日は悪かった」と書きました。たった一言。でもそれが、今の俺に絞り出せる精一杯でした。
(50代男性・営業)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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