「この程度で疲れるな」と説教してきた上司が、翌日私の隣で音を上げており...
3000行の日常
私の仕事は、毎日届く紙の伝票をエクセルに入力することです。1日あたり約3000行。入力規則が複雑で、セルごとにプルダウンの選択肢が違います。一箇所ミスをすると関連するセルに連鎖エラーが発生し、原因を探してやり直すのに20分かかることもざらでした。
目は乾き、肩と腰が悲鳴を上げる頃には、まだ午後の分が半分以上残っている。それでも毎日、誰に褒められるわけでもなく、黙って8時間こなしていました。
「この程度の仕事で」
ある日の夕方、「疲れた」と口にしてしまいました。独り言のつもりだったのに、後ろを通りかかった上司の耳に入ったようです。「この程度で疲れるな。俺の若い頃はもっと大変だった」。振り返ると、腕を組んだ上司が見下ろすようにこちらを見ていました。
周りの同僚たちの視線が一斉に集まるのを感じながら、何も言い返せませんでした。「この程度」。その一言が、帰りの電車の中でもずっと胸の奥に刺さったままでした。
上司の席替え
翌朝、上司が「どれ、俺がやってみるか」と自信満々の顔で私の席に座りました。ところが30分後には「ちょっと休憩」と席を立ちました。1時間後、戻ってきたかと思えば「目が痛い」としきりに目薬を差しています。
画面をちらりと覗くと、入力できていたのはほんのわずかでした。そして午前中いっぱいで「今日は午後から会議があるから」と言い残し、足早に私の席を離れていきました。午後に会議なんてないことは、共有のスケジュール表を毎日確認している私が一番よく知っています。
そして…
夕方、上司がそっと私のデスクにやって来ました。「あの作業、いつも何時間やってるの?」。少し間を置いて「8時間です」と答えると、上司は黙って自分の席へ戻りました。翌朝、出社するとデスクの上に缶コーヒーが1本置いてありました。
付箋に上司の字で「昨日は悪かった」とだけ書いてあります。それだけで十分でした。「この程度」と言い切った人が、半日で音を上げたという事実。それはどんな謝罪よりも、私の仕事を認めてくれた言葉でした。
(20代女性・事務)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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