展覧会「アズディン・アライアとクリスチャン・ディオール」に反響 「モードの対話」を描く

フォンダシオン・アズディン・アライアで開催中の展覧会「アズディン・アライアとクリスチャン・ディオール 二人のオートクチュールの巨匠」が、大きな反響を呼んでいる。ラ・ギャラリー・ディオールでも呼応する企画展が同時開催されており、両展を通して、単なる回顧展を超えた「モードの対話」を描き出す。
(パリ=松井孝予通信員)
アライアとディオール。2人の接点は1956年にさかのぼる。チュニスからパリへ渡った若きアライアは、同年6月、ディオールのアトリエに入った。勤務はわずか数日間だったが、ディオールのアーカイブからは当時のアライアの人事カードも発見された。当時はちょうど56~57年秋冬コレクションの準備期間で、クリスチャン・ディオール本人も制作に携わっていた時期だ。
もっとも今回の展覧会は、単純な「影響の関係」を語るものではない。フォンダシオン・アライアのディレクター、オリヴィエ・サイヤール氏は「偉大なクチュリエは同じ探求の道を通る」と強調する。共通するのは、身体への執着、シルエット、構築性、そして服の量感だ。ディオールの絞ったウエストや広がるライン、アライアの身体に密着する彫刻的シルエット。一見異なる両者の服は、身体を中心に深く響き合う。


展覧会構想の原点には、「衣服の建築性」というテーマがあった。若きアライアは、雑誌に掲載されたディオールの写真を模写しながら、その内部構造や裁断を読み解こうとしていたという。「ドレスがひとりでに立っているように見えた」と後に語ったように、彼を魅了したのは装飾ではなく、シルエットを成立させる構築だった。

会場には約70点の作品が並ぶが、その背景にはアライア自身による膨大な収集活動がある。財団には約2万点規模の服飾資料が残され、その中にはディオール本人のデザインによるコレクションも数百点含まれる。ラ・ギャラリー・ディオールのディレクター、オリヴィエ・フラヴィアーノ氏は「突然、未公開の600点が現れたような衝撃だった」と振り返る。保存状態も極めて良好で、両者はドレス名やシーズン、図版、スケッチを照合しながら共同調査を進めた。
サイヤール氏はアライアを「自らの分野の遺産保存を本気で行った唯一のクチュリエ」と評する。しかもアライアは生前、その膨大なコレクションをほとんど公開しなかった。そこにあったのは誇示ではなく、モードの記憶そのものを守ろうとする静かな執念だった。
同氏は近年、モードをいかに展示し、都市空間の中で語り直すかを問い続けてきた。今回の展覧会もまた、クチュールを単なる過去の遺産としてではなく、現在へと連なる生きたクリエイションとして提示している。
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